─恋と花火と学園祭──
学園が一年で最もにぎわう──
【ルミナス学園祭】の日がやってきた。
街は提灯と魔法灯で彩られ、
浴衣姿の生徒たちが行き交う。
ユウは約束どおり、
リリアとエルザと三人で会場に向かっていた。
「えへへ、見てユウ! 浴衣、どうかな?」
リリアは水色の浴衣に小花柄の帯を締めて、くるりと回る。
「すごく似合ってるよ。リリアらしくて明るい感じだね」
「や、やっぱり!? へへ……!」
嬉しさが隠しきれない顔だ。
だが横を見ると——
エルザも真っ白な浴衣で、すっと立っていた。
銀髪と雪のような白が溶け合い、まるで雪精霊のようだ。
「ユウ……どう……?」
「きれいすぎて言葉が出ない……」
「っ……!」
エルザは頬を赤らめ、胸に手を置いた。
その瞬間、リリアの笑顔がぴたりと止まる。
(え……ユウ、表情違いすぎない……?)
可愛いレベルが一気に上がる。
「ユウ! わ、私のほうは!? ちゃんと見てる!?」
「見てるよ。リリアも綺麗だよ」
「むぅぅ……!」
火花が散った。
■ 1 金魚すくい対決(静かな戦争)
「ユウ、見て! 金魚可愛い!」
リリアがしゃがみ込む。
「私もやりたい……ユウと一緒に」
エルザが袖をつまむ。
店の主人が笑った。
「お嬢ちゃんたち、やってくかい? 男の子もどうだ?」
「じゃあ三人でやろうか」
「よし……負けないもん!」
「負けない……ユウに褒めてもらうために……!」
そこでまたバチッと目が合う二人。
「ふ、褒めてもらうのは私でしょ!」
「違う……私!」
「「ユウは黙ってて!!」」
「えぇ……!?」
結果──
リリア:4匹
エルザ:3匹
ユウ:0匹(破れた)
「ほら! 見てユウ! これ、全部私が取ったんだよ!」
リリアはドヤ顔。
「すごいよリリア、器用だもんね」
ユウが嬉しそうに褒める。
そこで、エルザの眉がぴくり。
「ユウ……この金魚……可愛い?」
つぶらな瞳の金魚をそっと見せてくる。
「うん、とても可愛いよ」
エルザ、顔を真っ赤にして固まる。
(な、なにその“距離感”……!)
リリアの胸がざわざわする。
「ユウ! あっちの屋台行こ! 私と!!」
「ユウ……こっちの通りが先……」
「「ユウ、どっち!?」」
(ど、どうしてこうなる……!?)
三角形が綺麗すぎて、ユウの心はパンク寸前だった。
■ 2 花火、そしてぶつかる本音
暗くなり、学園祭の目玉——花火が始まる。
ぱあん、と夜空に光が散り、
三人は並んで座っていた。
だが——
リリアもエルザも、ずっと黙ったままだ。
「ね、ねぇユウ」
「ユウ……」
「ん……?」
二人が同時に話しかけてくる。
「今日は……楽しかった?」
リリアの声は少し震えていた。
「私と……一緒で……嬉しかった……?」
エルザは控えめに袖をつまむ。
ユウは静かに答える。
「もちろん。二人と一緒だったからだよ」
その瞬間、
リリア「ユウ! 私のほうが仲良いんだからね!」
エルザ「私のほうが先にユウを守った……!」
「えっ、ちょっ……!」
ついに二人の言い合いが爆発した。
「ユウはね、昔から私のこと気にかけてくれて——!」
「ユウは私の手を……最初に取ってくれた……!」
「負けない!」
「負けない……!」
火花は最高潮。
しかし次の花火が夜空を照らした瞬間、
二人の表情がふっと和らいだ。
「……なんで争ってるの、私……」
リリアは自分で気づいてしまう。
「……私も……嫌だ……ユウを困らせるの……」
エルザが小さく震えながら言う。
ふたりは顔を見合わせた。
「ごめんね、エルザちゃん……私、意地張ってた」
「ごめん……リリア……私も……」
そして二人は、同時にユウへ向く。
「ユウが困る顔……見たくないんだよ」
「ユウには……笑っててほしい……」
その一言に、ユウの胸が強く打った。
「ありがとう、二人とも……僕も……大事にしたいよ。二人を」
花火がぱぁっと咲くと、
エルザとリリアは顔を見合わせて笑った。
「……エルザちゃん」
「なに……?」
「これからも……ライバルだけど、仲間ね」
「うん……仲間。ずっと……」
そっと手を重ねる二人。
ユウはそれを見て、心から安堵した。
「……良かった……」
最後の花火が夜空に咲いた。
恋の火花はまだ続くけれど、
三人の距離は今までで一番近かった。




