──揺れる想い、リリア──
――放課後の教室。
誰もいない教室に、リリアがひとり残っていた。
窓から差し込む夕陽に照らされながら、机に頬をのせて、ため息をつく。
「はぁぁぁぁ……」
最近、胸の奥がざわざわする。
原因は……わかっている。
「ユウと、エルザちゃん……仲良すぎじゃない……?」
今日も二人は、楽しそうに魔導式の研究をしていた。
エルザはユウの袖を引く癖がついてしまい、
ユウもそれを自然に受け止める。
目の前でそんな光景を見せられたら——
リリアの胸がきゅっと痛んだ。
「……私、どうしたいんだろ……」
自分の気持ちがわからなくて、机に額を押し付ける。
■ 1 胸の痛みの正体
リリアはゆっくり顔を上げ、ペンを取り出す。
ノートの隅に、気付けばこんな文字が並んでいた。
『ユウ(困っている顔)』
『ユウ(嬉しそうな顔)』
『ユウ(照れている顔)』
「なにこの落書き……!?」
自分で書いたことに、自分が一番驚いた。
そのとき、ふと今日の会話を思い出す。
『ユウ……これって“好き”って気持ち……?』
エルザが、あの無邪気な笑顔で言った言葉。
ユウの顔が真っ赤になったのも見た。
(あれは……反則だよ……エルザちゃん……)
胸の奥がきゅっと締まる。
これが、嫉妬だってことくらいわかってた。
「……私も……誰かの隣にいたかったんだ」
ずっと三人で並んでいたと思っていた。
でも、気づけば——
ユウとエルザは、半歩前に進んでいる。
「置いていかれちゃうの……やだ……」
自分でも驚くほど、弱い声が出た。
■ 2 レオンにバレる
「何やってんだよ、こんな時間に」
「わっ!? れ、レオン……!」
帰ろうとしたレオンが、教室に戻ってきた。
リリアの顔を見るなり、眉をひそめる。
「お前……泣いてた?」
「な、泣いてないもん! ……ちょっとだけだよ……!」
しっかり声が震えている。
レオンは頭をかきながら、隣の席に座った。
「どうしたんだよ。何でも言ってみろよ」
「レオンには……言いたくない……」
「ユウのことか?」
「っ!!」
図星すぎて、声も出ない。
レオンはため息をつき、優しく笑った。
「……リリア、ずっとわかりやすかったぞ?」
「わ、わかりやすいって……?」
「ユウが褒めると嬉しそうにして、他の女が近づくと不機嫌になって……
気付きたくなくても気づくわ」
「……うぅ……そんなに……?」
リリアは顔を覆って真っ赤になった。
レオンは立ち上がり、リリアの頭をぽんと撫でる。
「お前はちゃんとヒロインしてるよ。
ただちょっと……その気持ちに気づくの、遅かっただけだ」
「っ……!」
その言葉が、胸にストンと落ちた。
■ 3 リリアの決意
レオンが帰った後。
リリアは、窓の外の星空を見上げた。
「……そうだよね。
私……気づかなきゃいけなかったんだ」
手を胸に当てる。
ここが、こんなに痛む理由。
「ユウのこと……好きなんだ、私」
はっきり口に出すと、涙が勝手にこぼれてきた。
悲しいわけじゃない。
ただ、ずっと隠していた気持ちが溢れただけ。
「でも……泣いてばかりじゃいられない」
リリアは涙を拭き、きゅっと拳を握る。
「負けないから。
エルザちゃんにも……私自身にも!」
その決意に満ちた瞳は、
今まででいちばん“ヒロイン”だった。




