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ルミナス・アーカイブ 番外編 祭り  作者: 田舎のおっさん


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──エルザ、学園に来る──

氷の女王は、今日から学園の生徒になった。


 ——と言っても、まだ正式なクラスは決まっていない。

 まずは慣れるために、ユウたちのクラスに“仮入学”することになったのだ。


「エルザちゃん、こっちこっちー!」


 リリアが手を振ると、エルザはこわごわと近づいてくる。


 白いドレスは学園服に変わり、髪も軽く結ばれていた。

 氷の女王の威厳より、どこか不安げな少女らしさが勝っている。


「……ここが、学園……?」


「うん! 教室はもっと楽しいよ!」


 リリアが手を引くと、エルザは一瞬びくりと震えた。


「ひ、人に手を引かれるなんて……初めて……」


「ふふ、かわいいな」


 レオンが笑うと、エルザは真っ赤になる。


「か、かわ……っ!? わ、私は氷結の女王……っ、簡単に褒めないで……!」


 その様子がおかしくて、ユウは思わず吹き出した。


「エルザ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」


 ユウが言うと、エルザは振り返る。


 氷のような青い瞳が、ふっと揺れた。


「……ユウが、そう言うなら……」


 小さく、でも確かに微笑んだ。


■ 1 初めての教室


 教室に入ると、ざわざわ……と小さなどよめきが起きる。


「えっ……あの子、新入生?」


「めっちゃ綺麗……!」


「え、誰? 見たことないんだけど?」


 エルザは戸惑ったように、ユウの制服の裾をそっと掴んだ。


「……ユウ、みんなが見てる……」


「大丈夫。怖くないよ」


「……うん」


 彼女が袖を離さないので、ユウは少し照れた。


 その様子を見て、リリアがぷくっと頬を膨らませる。


(なにあれ……仲良さそう……)


 だがすぐに、エルザは教卓の前に立って軽く頭を下げた。


「えっと……今日から……このクラスに……」


 緊張のせいか、声が小さい。


 ユウが気付いてそっと言った。


「大丈夫、ゆっくりでいいよ」


 エルザの頬がほんのり赤く染まる。


「……ユウがいるから、頑張れる……」


 その言葉に、教室中から「おおおぉ……」と妙などよめきが起きた。


 リリアとレオンは目を見開いている。


(え、今……完全にヒロインのセリフ……!?)


(おいユウ、お前いつの間にそんなフラグ立てたんだよ……!)


■ 2 初めての昼休み


「エルザちゃん、今日のお昼はみんなで食べようね!」


「た、食べる……? 何を……?」


「えっ、ご飯だよ!? 普段何食べてたの!?」


「魔力……と、氷……だけ……」


「絶対ダメ!!」


 リリアのツッコミが響く。


 こうして、四人で中庭に座って昼食をとることになった。


「エルザ、これ食べられる?」


「……これは?」


「サンドイッチだよ」


 恐る恐る齧ったエルザの瞳が、ぱぁっと輝く。


「っ……!? おいしい……!

 なにこれ……なにこれ……!!」


 その素直なリアクションに、三人はつい笑ってしまう。


「そんなに……?」


「こんなの……知らなかった……

 世界って……あったかい……」


 エルザは嬉しそうに頬を緩め、ユウの方を見た。


「……ユウのおかげで、知れたんだね……」


 絶妙にドキッとくる距離で言うものだから、ユウは思わず視線をそらした。


「そ、そうかな……?」


「うん。あなたが……私を連れ出してくれた。

 だから……あなたのそばにいたい……」


 ——その瞬間。


 リリアの持っていたパンが握りつぶされ、レオンがむせた。


(告白か!? 告白なのか!?)


(いやちょっと待ってユウ……!)


 エルザ本人は無自覚らしく、きょとんと首をかしげている。


■ 3 午後の珍事件


 授業中。


「次に、魔導式の基礎を——」


 先生が説明している横で、


「ユウ、ノート……これであってる……?」


「あ、うん。上手だよ」


「よかった……」


 エルザはユウの隣で、すごい集中力でノートを取っていた。

 だが、前の席の生徒がそっと囁く。


「ねえ、氷が……椅子の下から……!?」


「あっ……ごめん、緊張すると凍らせちゃうの……」


 床に霜が広がるたび、


「わ、わああ!?」「さむっ!!」


と小騒ぎになる。


「えぇぇ……っ!? ご、ごめんなさい……!!」


 エルザが耳まで真っ赤にして謝る姿は、女王というより完全に迷子の小動物だった。


■ 4 放課後──小さな約束


 帰り道。


 夕陽に照らされながら、エルザはユウの隣に立っていた。


「今日……とても楽しかった……」


「そう言ってもらえると、僕も嬉しいよ」


「ねえ、ユウ」


 彼女はそっと袖をつまむ。


 昼と同じ仕草。だが今度は、もっと近い。


「また……明日も一緒にいてもいい……?」


「もちろんだよ」


 エルザの顔がぱっと明るくなる。


「……ありがとう。

 じゃあ、明日も……ユウの隣で……学びたい」


 氷の女王は、いつしか——

普通の少女のような笑顔で微笑んでいた。

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