出られない
遊び友達の克政の親父さんが所有する別荘で休日を過ごそうと、金曜日の夜の今、俺の愛車のアルフィードで別荘に向かってる。
乗車してるのは俺と克政と純也に、それぞれの恋人のカナとミキとソラ。
因みにカナが俺の大事な恋人ね。
梅雨時なんで朝から雨が降り続いている。
車の中は快適だけど、外はムシムシジメジメだから降りたくなくなるんだろうな。
それに朝からの雨の所為で、霧が発生していて車の周りは一面真っ白。
フォグランプのお陰でなんとか見えてる状態。
だからスピードを抑えて走ってる。
ハンドルを握る俺を除け者にして、2列目と3列目のシートに座っている皆んなは、ゲームをしたりお喋りに興じたりしていた。
話しが映画の事になって、純也の恋人のソラが「最近見た映画ある?」って質問したのに対し、克政の恋人のミキが答える。
「この前、高校の時の友達の家に遊びに行った時に、トンネルから出られないってキャッチコピーの映画を見たよ」
「へーどんな映画?」
「中国のB級映画なんだけど、トンネルの中がループしていて、入ったバスが出られなくなる映画」
「面白かった?」
「まぁそれなりに」
って話し声が後ろから聞こえて来てるんだけど、霧の中から出られない今の状況を話したらどうなるんだろ?
高速を出てからは別荘まで一本道で、どんなにゆっくり走っても1時間弱で着くはずなのに……。
皆んなは霧の所為でスピードを落としているからだと思ってるようだけど、高速を出てから3時間近く経つのに、未だに別荘が見えてこないんだよ。