いつまでも大人になれない
ユメのなかで
わたしはたいがい
高校生か
大学生くらいで
いつまでも
それくらいだから
永遠の若さを
手にできたようで
うれしくもあるわけだけど
そのじつ
いつまでたっても
未熟で
なめられてしまう
ユメのなかのわたしは
精神年齢そのものと言って
いいのだろう
ユメのなかで
父は
堂々としていて
大きな背中をしていて
腰だって
曲がっていなくて
笑顔だったり
ときには
怒っていたり
けど
いつでも
下は
向いていない
現実の父は
車いすでの生活
元気が
ないみたいに見える
口数も
少なくなった
何年か前
まだそのころは
父も
ちゃんと自分の足で
歩いていた
そのとき
わたしは
街で
父の背中を見た
あまりに小さな
父の背中を前に
悲しくなってしまい
声をかけられなかった
声をかけてしまったら
きっと
泣いてしまうと思ったから
そのあとあたりから
あんまり
実家に行かなくなった
家族仲は
たしかに
よくないわけだけど
とにかく
父の姿を見るのが
嫌になった
父の姿を見るのが
嫌というか
老いた父の姿を見るのが
嫌なのだ
雑草をとったら
庭が少し
すっきりした
頭のなかの
雑草も
心のなかの
雑草も
簡単に
とりはらえたら
いいのに