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夕方。ジン。

 今回のアルマは残念ながら自分や時間の異常に『自覚』のない状態だった。むしろ『自覚』のある時の方がまれかもしれない。

 何度も見ているアルマの姿。ローブもスカートも濃紺の地味な服装。伸ばし気味になっている赤毛。課題をいかに手抜きして仕上げられるかと、丸写しのしやすいシンプルにまとまった文献をダラダラと探している。

 相談をした所で「何を言っているのか分からない」と怪訝な表情をされるだけだ。

 仕方ない。また次の『今日』を待とう。


 他に方法はある。

 ただし――。


         *


 夕方、暗くなり始めた頃。

 鼻を刺激するジンの臭い。それが分かるのは僕自身が未成年の健全な発達に対して、自らの体をもって抗議した経験があるという訳ではない。それほど熱心には活動した訳ではなく、繰り返し嗅がされただけの事だ。

 階段の裏、身を隠しているのかへたり込んでしまっているのか分からないが、カーティスがキッチンからくすねたジンで慣れない深酒をして前後不覚になっている。

 会話の成立は容易ではないが繰り返し話しかける。

 カーティスはもう一人の『自覚』のある一人だからだ。

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