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朝。昼。夕方。夜。

          *


 朝。

 部屋は薄暗い。この寮の部屋に移った当初は年代物のオークの香りにわずかにカビの臭いが混じると感じたが、時々それを思い出す。

 近くの部屋から騒ぎの音がする。何かがぶつかる鈍い音。隣室ではない。僕は知っている。

 よくよく耳をすませばその騒音と、断片的な怒鳴り声だけでも深刻な状態になっている事は推察できる。しかし僕はいつも通りノロノロと身支度を整える。

 ドアノブに手をかける前後で悲痛な叫び声があがるので、前もって身構えておく。


 食堂ではまた別の諍いが起きているはず。その為関わり合いにならないよう、手前側の席は速足で駆け抜ける。

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 夕方。

 図書館への渡り廊下。そこから飛び出してまっすぐに脇の林に入り、小動物がいたぶられている現場に向かう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 助けはする。傷ついた姿は見たくないし想像もしたくないのは当然の事。

 けれど保護をするだけでけがの治療まではしなくなった。

 無駄だから


 夜。

 慣れない課題の絵を描き、一段落すると資料の本を読む。最早ただの習慣でしかない。意味はあるのだろうか、と。

 頭に入らず、同じページを何度も見ているのはこの異変と関係あるのか。集中できない時は以前からも同じような状態だったが。


 ベッドに入る。

 また『今日』が来る――来てしまう。

 確信しかなかった。


          *


 朝。

 少し頭がすっきりと冴えている。

 ああ――、多分久しぶりだ。

 完全ではないが、少なくとも頭が麻痺したように惰性で動いてはいない。万全ではないが自分がおかしくなっていたと、『自覚』のある状態にはなっている。


 ドアノブに手をかけ廊下に出る。

 助けを呼ぶ叫び声。

 どこの部屋からなのか考える必要もない。

 二つ隣の部屋。でもその扉は開けない。何が起きているか知っているからだ


 最後に見たのはいつだろうか。

 そこには暴行を受けて血を流している女性がいるはずだった。


        *

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