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暗くなり始めた頃。妄執。夜の始まり。不合理で不整合な世の中。
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暗くなり始めた頃。
うずくまり、うなだれたまま小刻みに揺れているカーティスにかける言葉は、特に見当たらなかった。発せられる酒臭に顔をしかめるしかない。
今回も駄目だった。
『自覚』が無いようなら何もできない。話をせずにただ見下ろす。 彼が絶望に満ちている事は嫌でも分かる。カーティスにとって『今日』を繰り返すのは地獄だろう。
せめてもっと前が『今日』であったならば。『自覚』がある時にはカーティスもそう願っているだろう。
強く、妄執のように。
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夜の始まり。
廊下の先にいる、何度も漏れ聞こえてきた二人の密談にため息をつく。
自分やアルマやカーティスの『自覚』のない時の様に、漫然と習慣を繰り返すのとは違うのか。皆おかしくなっているとしか思えない。人に対して攻撃的であり、当たり前のように事故や死の危険が隣にある。
ただそれが異常とは断定できるのだろうか。
普段意識をしていないだけでこれが当たり前だとしたら、なんて不合理で不整合な世の中だ。




