外へ
肩甲骨に重さを感じながら羽を思いきり広げて、はばたいてみる。最初の頃に比べ、自然に羽ばたきができるようになっていた。外に出たい衝動が沸き起こる。
ガッ、ガツン
(うっ、ううーん)
ガッ、ガッ、カッン
何かがぶつかる音?!がして目が覚めた。
(また、あの夢だ)と思ったと同時に、まだ音がしている所を探し出す。
その音は窓からだった。
何かが、窓にぶつかっている?
外から誰かが、窓をめがけてものを投げている?!
(何とかしなきゃ。どうしたら、いいの? )咄嗟にカバンの中を引っ掻きまわす。それはあった。
それから高さがある窓の下方に、少し重さがあるパイプベッドを、ズルズルと少しずつ引きずるようにして動かした。
◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇
三階建ての洒落た造りの家の周りに、同期の斎藤 良一と、先輩の中原 里美がいた。
玄関先に近づきチャイムを鳴らし待つが、出てくる様子もない。
たまたま電話に出た愛莉の様子を不審に思った里美が、良一を誘い健人の家まで訪ねて来ていた。
「絶対、変よ。相変わらず携帯にも出ないし。あのシュレッダー事件で辞めてから、すぐに松田 健人からの結婚発表があったものね。だけど、あの内気な娘に迫られてまいったよって言っていたけど‥どう考えてもおかしい」
「絶対ありえないだろう。追いかけまわしてたのはあいつの方じゃないか?」
3年間見ているだけの片思いをずっーと二人は愛莉から嫌になるほど聞かされていた。
二人はひっそりと建った大きな家の周りを、ゆっくりと歩き周り始める。
「あそこの窓、立て付けじゃない?」里美の声で2階にある窓を見上げた二人は、立て付けの窓に違和感を覚えた。
良一がおもむろに石を投げはじめた。
しかし、何の応答もない。
「 やっぱり、先輩の考えすぎじゃない?泣いてたのは、結婚後のマリッジブルーかもしれないし。実家に帰っているかも」と喋りながら帰りかけた時。
「良一。ま、窓」と興奮気味の里美が指さした方向を見ると、先程までなかった文字がみえていた。
《HELP》小さな窓いっぱいに書かれた赤い文字。
二人は顔を見合わせた。
◆◇◇◇
そこからは急展開にことが進んでいった。駆けつけた警察官によって、林野 愛莉は保護された。
鍵がかけられた部屋に監禁されていたのだ。
頑丈な扉を開けたものが見たものは、羽を広げた一羽の大きな鳥だったと数人の警察官は口を揃えて言う。
一瞬の出来事だった。
その後保護された時は憔悴が激しかったが、両肩を支えてもらいかろうじて頼りなく階段を降りてきた。
玄関先で良一と里美の顔をみた瞬間、愛莉は安心したのか死んだように二人の方へと倒れ込んできた。
その同時刻 、通報を受けた近くの警察官によって松田 健人は直ちに監禁罪で捕まった。今までの仮面は脆くも崩れ去っていった。