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ジョルナ学園入学

やっと学園に入学しました。


 とうとうこの日がやって来た。


 クロス王国立ジョルナ学園への入学だ。長かった。婚約も解消してあとはシエナ様が入学されたら、ついにゲームスタート!ゲームで見た舞台!ゲームで見た制服!


 いつものようにきっちり髪を結いあげて、新しくした眼鏡にもすっかり慣れた。ひざ下のスカートは上品だ。しかしところどころファンタジー要素も入っていた。


 ワクワクして馬車で学園に向かい、近場で下してもらった。ものすごい馬車の列だ。入学式ということで一斉にこの時間登校になったのかしら?まあいい。学園周辺の探索もしたかったし、歩いていると、校門前に人だかりができていた。この塊のせいで馬車が渋滞していたのか。なんではた迷惑な。そう思いつつ遠巻きに校門を抜けようとしていたら、その塊から声がかけられた。

「モニカ!」

 人垣が一斉に開いた。この声はもしかしなくとも第三王子殿下だ。もう婚約者でも何でもないため、ぺこりとお辞儀の後、足早に去ることにした。


「ちょっと待ってくれ。」

 いやです。待つけど。見回してもレオン様の姿が見えなかった。久しぶりに会いたかったのに。

「おはようございます、第三王子殿下。」

「おはよう。少し時間が欲しいんだが。」

 これからクラス分けの紙を見に、ホールに行かなくてはならない。そこにこんな目立つ第三王子殿下なんて連れて行ったら、学園生活ボッチ確定では?

「ちょっと急いでおりますので、少しでしたら。」

 前庭を抜け、校舎よりの邪魔にならない場所にはけた。集まっていた人たちはちりじりになり、やっと馬車の通行ができるようになったらしく、次々と校門に馬車が入って来た。こういうところに気が付かないのが、従者をいつもそばに侍らしていた、生粋の王子様を感じる。

「それで何でございましょう。」

「ああ、うん、謝罪したかったんだ。」

 謝罪とは?航空団の件ならこの間婚約解消のことでお伺いした際お聞きした。

「その件はもうお聞きしましたが。」

「それで、よかったら学園でも、仲良くしてほしいと思ったんだ。」

 ふむ。どうやら分かっていなかったらしいな。この際はっきり言おうか。

「第三王子殿下、失礼ながらわたくしあの件に関し、許すのはまだできておりません。心の整理はつけたつもりですが、こればかりはどうにもならず。ですのであまり話しかけたりもしないでいただけたらと思うのですが。」

「…、そうか。わかった。本当にすまなかった。」

「いえ。お判りいただけて幸いです。」

 怒鳴られたりしなくてよかった。荒くなっていた呼吸と、心拍数を抑えるべく胸に手を当ててかばんを握りなおした。では、と言って校舎に入っていった。怖かった。なんでいないのレオン様。そう思いつつ受付に行くと、レオン様の姿があった。


「レオン様!なんでこんなところに?」

「おはようございます。モニカ嬢。入学前に打診がありまして、生徒会に入ることになりました。」

 あら、そんな打診あったのか。いやしかしゲームだと第三王子殿下が生徒会だった気がするが。

「…当初、殿下が生徒会の予定だったんですが、どうも御公務との兼ね合いが悪く、俺が代わりに。」

「なるほど。大変ですね。」

「はあ、ええ。」

 レオン様の顔にはめんどくさいと書かれていたが、それでもまじめに仕事をしているのが彼らしい。

「じゃあこれが校舎の地図と今日の案内です。中の椅子は適当に前から詰めて座ってください。…ところで殿下にお会いしましたか?まだ来ていないのですが。」

「校門でお会いしました。そのうちいらっしゃるのではないかと。そういえば第三王子殿下の護衛はいいんですか?」

 学園内でも帯刀が許されているのはごく一部だ。例えば第三王子殿下の護衛の近衛騎士ロイ様や、生徒でも騎士団試験に合格し、身元のしっかりしていてかつ、国王陛下の許しがあった人のみ。普通の生徒は持てない。それを許されているレオン様は本来、第三王子殿下の護衛が任務である筈なのだ。しかし生徒会になってしまった。このいやいやな感じも仕方ないのだろう。

「ロイ卿が付いてますので大丈夫です。」

「おや、先ほど第三王子殿下はお一人でしたよ。」

「…学園長につかまったのかもしれません。ちょっと様子を見てきます。」

 隣にいた生徒会と思われる先輩に声をかけ、足早に行ってしまったので私は会場に行くことにした。


 会場にはもうすでに多数の生徒がいた。会場の後ろにはクラス分けの紙があり、人だかりができている。どうやらレオン様と第三王子殿下の隣のクラスのようだ。まあそうだろうなと思っていたが。この貴族クラスは二クラスあり、婚約者と同じクラスにならないように配慮されていた。貴族クラスの生徒は大体入学前から分かっているので、クラス分けは前からできているだろうから、当然二人と一緒にはならない。第三王子殿下と同じクラスの女子生徒は軒並み、私のクラスに婚約者がいた。そして第三王子狙いの女子生徒はこちらのクラスに振り分けられた。勉強の邪魔にならないようにとの配慮だろう。魔境に入れられたこちらとしてはいい迷惑だが。


 いやしかし、婚約解消した相手なんて一番ライバルから遠い存在だろう。私はこの学園生活で地味に過ごすのが目標なのだ。いつもの通り、存在感を消して席に着いた。その内入学式が始まった。


学園長の話に、各先生の紹介と、新任の先生のところで黒髪に目がいった。


 黒髪は珍しい。この三百人いる生徒の中で、ぽつぽつとしかいない。新任のあいさつに、黒い服に身を包んだその人に、見覚えがあった。

「それでは最後に新任の保健室の先生を紹介します。クラレンス・オーズ先生です。」

「ご紹介いただきましたクラレンス・H・オーズと申します。」

 って、あれ、クラレンスさんじゃない!?教会の聖職者だった…。

「教会にてお祈りさせていただいておりましたので、お会いしたこともある方がちらほらいらっしゃいますね。どうぞよろしくお願いいたします。お怪我などいたしましたらいつでも保健室へいらっしゃいませ。」

 ばっちり目があって、にこりと笑われた。ああ、なんで、そうか、保健室の先生って、教会から派遣されてたのか、気が付かなかった。あとでご挨拶に行こう。

 入学式も終わり、クラスに向かうと担任のコール先生がさっそく、と私のほうを見た。確実に目が合った。

「学級委員長と、生徒会をクラスから2名出してもらいます。」

 その言葉で一斉にみられているのを感じた。地味に、地味に、過ごしたいんだが。

「先生、それって、わたくしか、モニカ様でしょう?クレアスはどうする?」

「あたしはパスで。」

 声をあげたのは、緑色の髪が美しい、ミラ・グリーン侯爵令嬢だ。パスしたのはクレアス・バーン侯爵令嬢だ。いいなあ、パス。もうあきらめて、ため息をついた。

「ミラ様はどちらがよろしいですか。」

「えー選ばせてくれるの?、第三王子殿下はどっちか聞いている?」

「いえ。でも生徒会はレオン様がやるとおっしゃっていました。」

「じゃあ、学級委員。」

「はい。ではわたくしは生徒会ですね。」

「モニカ様、ありがとおね。」

「いいえ。どちらでも構いませんから。」

 面倒臭いのが回って来た。まあいいか、レオン様が一緒だし。

「すんなり決まりましてよかったですねぇ。では学級委員長はグリーン侯爵家のミラ嬢。生徒会はバージェス公爵家のモニカ嬢で。三年間よろしくお願いいたします。」

 視線を感じ振り向くと青い髪のクレアス様と目が合った。すぐにそらされてしまったが。その後諸々の説明を聞き、やっと放課後だと思ったら生徒会室に集合するようにと言われてしまった。はあ。でもまあ、公爵閣下も生徒会を頑張ったっておっしゃっていたし、頑張ろうか。


「モニカ?どこ行くんだ?」

 後ろから声をかけられた。私に声をかける知り合いなんて一人しか知らない。話しかけないでほしいと釘を刺したのだが、やっぱり聞いてはくれないようだ。振り返ると第三王子殿下と、レオン様、それから手を振って笑っているロイ様がいた。久しぶりに会った。私はぺこりと礼をした。


「はい。生徒会になってしまいまして。」

「…そうか、やっぱり私が生徒会をしておけばよかった。」

「第三王子殿下は学級委員長なんですか?」

「ああ。…夏にレスト王国王女様がまたいらっしゃるそうだ。来なくていいのに。」

 そう言うことは外では言わないでほしい。

「お忙しいんですね。わたくしもこれから生徒会室なので、お暇させていただきます。」


 周りの生徒の視線が痛い。特に女子生徒から射殺さんばかりの視線を感じた。そういう時はさっさと逃げるに限る。


「あ、では俺も行きます。殿下、ロイ卿は先にお帰り下さい。」

 ピシリと敬礼したレオン様に、第三王子殿下はああ、と軽く返して立ち去った。去り際にロイ卿が私の頭をポンポンしてから殿下の背を追った。明らかに子ども扱いされていた。

「ずっとロイ卿はあなたを心配していましたよ。手紙も負担ではないかと控えていていました。」

「なるほど。申し訳ないことをしましたね。そういえばレオン様にもロイ様にも、お世話になったのにお礼もしていませんでした。」

「そんなことは構いません。さっさと行きますよ。」

 レオン様が護衛の立ち位置である右後ろに陣取った。

「ところでレオン様。生徒会ってこちらで合っていますか?」

 なにせ今日初めて来たのだ。3階にあるのは知っているが、それ以外は地図を見ているところだ。しかしきっとレオン様なら入学前から護衛場所の情報は知っているはずだ。若干呆れ顔をしつつも先導するため少し前に行ってくれた。

「ついて来て下さい。」

「ありがとうございます。」


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