出撃要請の勅命状
「何があった?」
報告をした兵士が、小さい紙きれをリチャード殿下に渡した。
「バージェス公爵家からの鳥です。」
紙切れを受け取った殿下は紙切れを睨みつけた。
「なんと?」
ケイト卿はなるべく短く端的に言葉を切った。
「帰省中に、モニカが攫われた。場所はバージェス領詳細安否は不明。」
「了解しました。陛下に報告してきます。」
ケイト卿が走って退出して行った。
モニカ嬢の故郷はバージェス公爵領南端の港町。そこへ行くならまずバージェス公爵領本邸に行って、一泊するはず。なんでこの時期に帰省なんてしたんだろう?あと1か月で社交シーズンも終わりで、領地に帰るのに。その後にゆっくり帰省すればいいではないか?それとも実家で何かあったか…。そう考えると、実家のご両親を人質に取られて、モニカ嬢に帰ってくるように手紙を書かせ、待ち伏せされたということも考えられる。どんなことがあったにせよ、情報が足りない。
リチャード殿下は扉を開け出て行った。レオンは慌ててその後を追った。公爵家へ行くのだろう。こんな全力疾走は久方ぶりだ。何と言おう。何と言ったら止まってくれる?いや、無理か。公爵家へ行って現状把握しないと、きっと止まらない。そしてまっすぐ向かう先は、ペガサス航空団の詰め所だ。ペガサス航空団の風魔法のかかった馬車なら、空をまっすぐ公爵家は行けた。
なんだってこんな時に。今度のお泊りに、リチャード殿下は並々ならぬ力を入れていた。じっくりモニカ嬢と婚約について、話し合うつもりだったのだ。どう見ても乗り気でないモニカ嬢をシエナ嬢と一緒だということでうなずかせ、文句を言わせず約束を取り付けた。もちろん公爵家への許可取りや、国王陛下への話を通し、もろもろ根回しも完ぺきに終わらせ、モニカ嬢の夕飯後の間食までリチャード殿下が指示する徹底ぶりだった。あとは当日を待つだけ。
きっと楽しみにしていたのだ。初めてモニカ嬢が泊まりに来るから。
前を行く背中を見た。もう着いた。息が上がってすぐに声が出せない。
「第三王子殿下。いかがなさいました?」
髭をきっちりとそろえているベイク航空団副団長が、息の上っている殿下に声をかけた。リチャード殿下が黙って紙の切れ端を押し付けた。
「なんとまあ。緊急を要するようですね。しかし今馬車は点検のため、本日ばらして点検中です。あと1時間で終了して戻ってきます。その前に公爵家へ情報を確認しに行かれますか?」
流石軍人。話していないのに殿下の言いたいことが大体伝わった。とそこでベイク航空団副団長が、こちらをギロリと睨んだような気がした。
「私の愛馬をお貸しましょう。おとなしいコです。…従者の方は馬で追いかけてください。」
それはまあ仕方ない。ペガサスは馬を魔力だまりに連れて行き、一定の期間が過ぎたときに起こる、魔物化現象によって姿を変える、魔物の一種だ。この魔物化現象は偶発的に起きることもあるし、人為的に起こすこともあった。魔力だまりに馬を放牧して、魔物化現象によって、ペガサスに変え、それを生業にしているペガサス牧場もあった。馬が自分の変わってしまった姿に驚いて暴れ出したり、そもそも魔力だまりは魔物の発生源であったりと、危険が伴う職業のため、ペガサスは貴重で、割高なのだ。野生個体もいるにはいるが、苦労して捕まえても、警戒心が強くて飼いならすことができない。
「それで構いません。リチャード殿下は公爵家へ。」
殿下を見れば、コクンと頷いたようだった。ここで離れるのは悪手か否か。考えても分からない。ならば進むのみ。天馬の馬舎着き、ベイク航空団副団長が、鞍をつけてくれた。自分は馬を借りに今度は騎士団に行かねば。
「お気をつけて。」
「ああ。先に行ってる。」
リチャード殿下は小さいころからペガサスに乗りなれていた。だから心配はしていない。むしろ自分のほうが乗り慣れていないくらいだ。殿下の離陸を見送って、ベイク航空団副団長に向き直った。この方には自分は好かれていないようで、それは今に始まったことではない。
「この度は突然押しかけ大変申し訳ありません。そちらの紙を殿下にお返しいたします。」
彼はじっとこちらを見た後、黙って手の中の紙切れを返してくれた。
「相変わらず第三王子殿下の腰巾着なのだな。お前の父も嘆いておろうに。」
「父からは殿下によく仕えるようにと、言われております。突然の訪問、申し訳ございません。第三王子殿下を追いかけますのでこれにて。」
ぺこりと頭を下げて、退出した。その後すぐに走り出す。父なんてここ数年まともに話していなかった。毎年帰省はしているが、家にいないことのほうが多かった。それでも言われたことが、『殿下に忠誠を誓い、最後まで仕えるように。騎士の誇りにかけて。』それだけだった。それだけでよかった。だってその言葉は、俺にリチャード殿下を一生支えるという幼い日の誓いを、夢を、後押ししてくれる言葉だったからだ。
馬を借りて駆け出した。リチャード殿下と見つけた公爵家への近道が役に立った。この道は幼い日に、偶然見つけた道だった。思ったよりも早くついて、門番に事情を話した。近衛の制服を着ていてよかった。リチャード殿下の姿を上空に見ていたらしい。確認が取れ次第開けてくれた。広い前庭を抜け、母屋の扉の前にペガサスが植木を食んでいた。公爵家の使用人は魔物の端くれに近づけず、困っているようだった。今乗ってきた自分の馬と、ペガサスをとりあえず馬繋場につなぎ、水をやった。そして母屋に行くと、使用人が走り回っていたので、とりあえずリチャード殿下のいる執務室に案内してもらった。
「あ、レオン君。」
目が合ったのは公爵夫人だ。
「閣下はどうなさったのです?」
「知らせを聞いて、領地に行っちゃった。」
それはそうか。公爵閣下はモニカ嬢のことを可愛がっていた。あの、無表情がスタンダードの公爵閣下が、唯一分かりやすく表情が崩れるのが、家族の話をする時だ。リチャード殿下とシエナ嬢がソファに座って恐ろしく静かだった。公爵夫人が椅子をすすめてくださったので、おとなしく座った。
「何があったのです?」
「…そうね、モニカが、バージェス城から、故郷に行くまでの道すがらにさらわれたらしいの。」
「南端の港町ですよね。」
「ええ、毎年この時期に帰省しているの。…私とケイオスから、モニカへの誕生日プレゼントの一つよ。当日は家族で過ごしてほしかったから…。」
「当日…?」
リチャード殿下が顔をあげた。
「ええ、モニカの誕生日は7月8日。明日よ。」
「7月8日…初耳だ。」
てっきり15日だと思っていた。ひとつ気になっていたことがある。
「公爵夫人、モニカ嬢は毎年、帰省していると言っていましたが、どのような護衛を連れて帰っていたのですか?」
「そうね、あまり目立たない馬車を使っていたから、護衛がいるとかえって目立ってしまうから、モニカは知らないかもしれないけど、遠くから5人ほどつけていたわ。彼らがモニカの乗っていた馬車がおかしな動きをしていると城に報告があって、それから御者が振り落とされて…。そのまま森のほうに連れ去られてしまったらしくて。彼らはそのまま追跡しているはず。」
よく見れば夫人の顔は真っ青だった。今にも倒れそうな顔色に、夫人のほうこそ座るべきだと、席に座っていただいた。使用人に温かい飲み物と、ひざ掛けを頼んだ。
「レオ、ペガサス航空団なら、現地まで何時間でつく?確か一時間で、馬車の整備が終わると言っていたよな。」
「天馬の足は馬の大体3分の1の時間でつくと聞きましたが…。王都から公爵城まで6時間ほど。そこから港町は、どのくらいですか?」
ゆっくりと飲み物を飲んでいた公爵夫人は、大体8時間から9時間くらい。と答えてくれた。
「公爵城までは2時間ほどでつくかと。」
「一回王城に戻って航空団の出撃許可をもらってくる。」
今まで考え込んでいたリチャード殿下が立ち上がった。シエナ嬢は相変わらず下を向いていたが、何かをブツブツつぶやいていた。殿下を追いかけ後ろを通った時、それが聞こえた。
「大丈夫、モニカは大丈夫。いっぱい防犯グッツも持たせたもの、今度は大丈夫なはず。どうかどうかモニカをお守りください。どうか…」
『今度は』?祈るように手を合わせている彼女は、三角形の石をもって必死に祈っていた。
今はそのまま、リチャード殿下の背を追ってまた王城に戻った。そう言ってもペガサスのほうが早いので、航空団の入り口に馬を進めた。中からリチャード殿下の怒鳴り声が聞こえた。
「モニカを私の前に連れて来てくれ!」
ベイク航空団副団長が、具体的にどのあたりか詳細を確認して、部下に指示を出していた。せっかくの非番だったのにと、愚痴を言っている彼らに任せて平気だろうか?中から見えないのをいいことにダラダラと支度をしている彼らに一抹の不安を覚えた。
「だって、婚約解消する予定の、養子の子だろ?ご令嬢でもないんだし、亡くなってても、なあ。」
だめかもしれない。腹が立って目の前が真っ赤になった。
「バージェス公爵が、溺愛なさっている彼女を、亡くなっててもいいと言った方は、行かなくて結構です。所属とお名前を言えますか?国王陛下と公爵閣下にご報告いたします。」
聞かれていると思わなかったのか、青い髪の男はそのままばつが悪そうにいいえ行きます、と言った。しかしこのまま彼に仕事を任せられない。
「いえ、行かなくていいです。さっさと所属とお名前を!」
「どうした、レオ?」
「はい、今この方が、モニカ嬢は養子の方なので亡くなっててもよいと言っていましたので、今回の捜索から外していただこうと思いまして。ベイク副団長、この方の代わりはいますよね?人材豊富な航空団なのですから。」
「…ジェド魔力補充員、今のは誠か否か。」
「違います!」
「ここの押し問答はどうでもいいので補充員を先にお願いします。」
じろりと視線を感じたが、そんなもの無視だ。彼と一緒に歩いていた赤毛の男はバツの悪そうに視線を下に向けた。ベイク航空団副団長はそれで真実だと見抜いたらしい。
「キャル魔力補充員を連れて行け。」
「そんな、私はそんな発言していません。」
「黙れ。」
今度はリチャード殿下ににらまれて、おとなしくなった。
「後でゆっくりお話ししますので、今は捜索隊の編成をして、一刻も早く離陸していただきましょう。」
「ああそうだな、モニカの捜索のほうが大事だ。」
二頭編成の馬車は離陸のために滑走路に出てきた。御者に二人、中に二人の4人編成だ。この馬車は風魔法で浮くようになっており、それをペガサスで引く形になっていた。ただ魔力の消費が激しいので、中の二人が魔力を馬車に供給して浮かせていた。なかなか燃費の悪い移動手段だ。
「では行ってまいります。」
「頼んだ。」
あとから来た女性がキャル魔力補充員だろうか。御者台に乗って、やっと離陸してくれた。あとの処理はベイク航空団副団長が何とかしてくれるだろう。
「それで、ベイク航空団副団長。青髪のジェドと言ったか?かの者の処遇は任せていいのか?」
「…そうですねお任せください。ジェド魔力補充員。発言許可する。何か言いたいことはあるか?」
「私はご令嬢のことを死んでもいいなんて断じて言っておりません。信じてください。」
レオンは黙って青髪の若い男のことを見つめていた。この男があの馬車に乗らなかったのなら、レオンとしてはどうでもよかった。処分なんて望んでいない。しかし今はまだ第三王子殿下の婚約者であるモニカ嬢の認識については、改めてほしかった。言い訳を述べている男を放っておいて、ベイク航空団副団長に視線を持って行った。どう収める気なのだろう。
「お前の言い分はわかった。こちらは国王陛下のペガサス航空団の出撃要請の勅命状だ。お前はその軽率な発言で、出撃命令を遅らせた自覚はあるか?」
「それは…。」
「殿下の見解はいかがでしょうか?」
副団長はリチャード殿下に視線を向けた。
「一刻も早く、出撃要請に従ってもらいたかった。それが本音ではあるが、レオンが聞き、解釈したようなことを、言っていたとなると、レオンの判断は間違っていなかったと、私は思う。モニカには無事でいてほしい。生きていてほしい。」
下を向いてしまったリチャード殿下の肩をポンとたたいて、副団長は青髪の男を見た。蒼白の顔をしてうつむいていた。奥歯をかみしめているのがよくわかった。視線を感じたので、顔をあげると副団長と目が合った。
「モニカ嬢はいまだ、殿下の婚約者であらせられます。その彼女が攫われたというのは由々しき事態です。殿下に一部の非はなくても、王家は婚約者も守れないと言われてしまいますから。ですから国王陛下の出撃要請は当然だったと考えます。…王勅妨害まで罪に問うのですか?」
王勅妨害はかなり重い罪で、死刑も視野に入ってくる。男の肩が揺れたのが見えた。事の重大さにやっと気が付いたようだ。
「いや、お二人がよければ適正不適合で、謹慎にいたします。」
「それでいい。すぐに人選してくれたからな。」
射殺すような苛烈な目線で見つめられていたのに、下を向いていて男は気が付いていないのか、ほっとしたようだった。
「お前は確か、バーン侯爵家の嫡男だったな?」
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どうしてこうなった。
馬に乗るのはただでさえ得意でないのに、腕を縛られた状態で乗ることになるとは。
数時間前。
バージェス家本城を出て、お昼を食べ、新刊の小説を熟読していた時だった。外からコンコンとノックが聞こえた。去年は父が迎えに来てくれたので、それかと思い軽率に窓を開けてしまった。御者なら前からノックをするだろうに、本当に軽率だった。顔をフードとマスクで隠した男?が腕を伸ばし、ドアのカギを簡単に開けてしまった。その時御者台の小窓に鮮血が付いた。あまりのことに息をのみ、彼らのなすがまま侵入を許してしまった。
「なんですの、あなたたち…。」
ガタン、と道を外れたのが分かった。隣に無遠慮に座った男は小刀を私の首に突き付けて、黙ってろと低くうなった。
「御者さんは置いていくワケにはいきませんか?お怪我なさっているんでしょう?」
考えろ。何が起きているのか。
「うるさい。お前は自分の心配したらどうだ。」
「いえ、わたくしを殺すのはまだなのかなと判断いたしました。」
「ハン、ずいぶん肝の座ったお嬢ちゃんだな。」
ひときわ大きく馬車がきしみ、森の中の見通しの悪い道に入ったことが分かった。馬車の中は薄暗い。
「あの本当に御者さんは大丈夫ですの?一回止めてお怪我を確認させてくださいまし。」
「黙ってろと言っている。どうせ死んださ。」
たったあれだけの出血で死ぬわけないが、全体が見えていないので何とも言えない。グイっと首筋のナイフの刃が肌に触れた。恐ろしい。しかも全然切れそうに見えない。あ、そういえばトランクは開けっ放しで、シエナ様の防災グッツが出しっぱなしになっていた。指輪をこっそり手の中に2つ隠した。一つは予備で手の中に隠し、一つは右手の中指につけてみた。どこが一番ダメージが大きいかしら?こっそり襲撃者を見ると、ガタイのいい男であることが分かった。ガタンとひときわ大きく馬車が揺れ、どさりと何かの落ちる音がした。
「来たぞ!」
馬車が止まった。左腕を掴まれ、乱暴に引きずり降ろされた。馬に乗った3人と合流し、私はこっちに来いと腕を掴まれ馬の近くに連れてこられた。男たちは合流して少しだけ情報交換しているようだった。今私のほうに彼らの目はない。ごめんねお馬さん!
ひひぃぃぃいいん!
馬は悲鳴を上げて手綱を持っていた男を蹴り飛ばし、脱兎のごとく駆け出して行った。男たちは肌の見えている部分が少なかったので、馬の鞍の隙間に、手に持っていた指輪の針を思いっきり何度か 刺した。麻酔針だと聞いたが、馬に効くかはわからない。
「お前何をした?!」
近くにいた男に指輪が見つからないように草むらに投げ、手の中を見せた。
「何も!ちょっとお馬さんを突っついてみただけです!こんなことになるなんて…。」
男は舌打ちをして余計なことをするなと手に縄をかけ始めた。しかし後ろ手でもないので問題ない。男に抱えられ馬に乗った。この男はさっきの人より細身だ。つややかな黒髪のようだ。フードの端から長い髪がはみ出していた。
「追手が来やがった!おい、馬車の馬を使え!携帯用の鞍はあるだろう。さっさと行くぞ。」
追手とは?馬が走り出し、振動がかなり内臓に来る。
「あの、一ついいですか?」
「うるさい黙ってろ!」
「しかし人違いかもしれませんし!わたくしは攫われるいわれはございません!」
「うるさい!間違ってねーよ!」
間違っていない?いったいどういうことだろう?ただの人さらいではないということは、バージェス家に身代金の要求でもするのだろうか?
「あの、侍女ですよ?!わたくしただの侍女ですのよ!」
「うるさいと言っている!だまれ!」
そう言って後ろから押さえつけられた。いったい何が目的なのか。口に布をかませられ、何も言えなくなってしまった。四頭の馬で、囮役が二頭、ばらばらに逃げていた。どうしよう、追手、と言っているということはこっちの味方か?わからない。しかしこのままではいけない。まだ武器はばれていない。この森をずっと北西に行くと、この度閉じたあのダンジョンのほうに行く。そのまた西はグリーン侯爵領…。いったいどこまで連れて行く気なのか…。いや、それまでに殺す気か?逃げるならまだバージェス公爵領の中にいるうちがいいだろう。目の前には人さらいの腕。指輪は今中指についているので最後だ。また馬に刺したほうがいいか?いや、効くか分からないのなら人に刺して確実に一人持っていく!
「なん…いた!」
私は右腕を掴み、右腕の袖から少し出た素肌を狙って針を思いっきり刺そうとした。しかし肌をかすっただけだった。傷が浅い。
「あ。」
「いってえな!」
腕を捻り上げられ指輪を取られ捨てられた。
「それ、もごもご、毒…もごもご毒…」
「はあ!?毒?」
私はうなずいた。麻酔毒だけどね。この近くの川は、高レベルダンジョン近くに水源のあるあの川だ。今バージェス家の騎士たちが巡回している最中だ。うまくそっちに誘導できれば…。
「わめくなよ、麻酔毒だって言っていただろ?指輪の他は持ってねえみたいだから気にすんな。」
後ろをついて来ていた長身の男が落ち着いた声色で、焦っていた男をなだめてしまった。麻酔毒だと言っていた…?じゃあつまり私があの指輪を持っていると知っている人物の依頼ということになる。もちろん一緒に出掛けた4人以外だ。あと知っているのは、バージェス公爵家のメイドたちと、あ、買ったお店ならわかるか。新緑商会のグリーン家…。しかしなぜ私が攫われているのか?グリーン家には確かに年ごろの娘さんがいて私は目の上のたんこぶだが、来年学園に入学予定だど聞いた。第三王子殿下にお近づきになる機会はあった。だから今、第三王子殿下の婿入り先を貴族は争う意味がないのだ。おとなしくして印象をよくしておけば、学園で話すきっかけになるだろう。今、この時期、私をさらう意味がない。
ますます分からない。