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シエナ様からのプレゼント

 本日の婚約者のお茶会は、とうとう屋敷を飛び出した。城下町に、普段よりかなり庶民よりな格好をして、降り立った。私とシエナ様は町娘、第三王子殿下は商人の息子、レオン様とロイ様は剣を携えた護衛任務の冒険者兄弟だ。


 そういえば春先からレオン様は騎士団の試験に合格し、帯刀を許されていた。見習い試験後3年の実務を経て晴れて騎士団入りとなる。貴族の子息は大体学園に入る前にこの試験を受け、合格をもらっておく。平民の騎士団希望者は学園の3年間で騎士道とマナーなどを学び、3年間かけて合格を目指す。貴族、平民とも学園を卒業してから実務となるが、レオン様は1年早く取って、もうすでに騎士団に入って実務を学んでいるらしい。学園の中は安全だ、とされているが、万が一もあるためレオン様は第三王子殿下の護衛として入学する。入学も任務のうちだったとは。腰には私があげたサンストーンのお守りがくくられていた。母に習った編み方で編んだ紐に、なんとなく照れ臭くなったので視線をそらし窓の外を見た。

 ところでなぜこんな格好で街に出ているかというと、第三王子殿下がちょっと気になることがある、と言い出したためだ。

「もうすぐ着くぞ、新緑商会に。モニカとシエナ嬢は打ち合わせ通り、普通に買い物していてくれ。出来れば品揃えも見てきてくれ。」

「はい分かりました。」

「なんだかスパイみたいね、ワクワクしちゃうわ。」

 やる気満々のシエナ様には悪いが私のほうは胃が痛い。新緑商会は確かグリーン侯爵家のものだった気がするが、何を調べるのか。

「ああ、あと、グリーン侯爵領の今年の収穫高はどうだったか聞いておいてくれ。商人のほうが詳しいだろうから。」

「かしこまりました。わたくしがバージェス公爵家のものだということは、ばらしても大丈夫でしょうか?」

「…さぐりに来たと思われなければ大丈夫だ。」

 あまりばらさない方針にしよう。

 商会から少し離れたところに馬車が止まり、降りた。シエナ様は楽しいのか私の腕にくっついていた。第三王子殿下がこくりと頷くと、レオン様が護衛でついて来てくれた。どの程度の成果なら第三王子殿下は納得するのか。ああ、やっぱり断ればよかった。カランカランと商会の中に入って行った。


「いらっしゃいませ。本日はどのような御用でしょう?」

 その場にいた若い女性店員が、にこにこと話しかけてきた。こうなったらやるしかない。

「こんにちは。あの、故郷の母にプレゼントを用意しようと思いまして。」

「私は誕生日プレゼントを見に来たの。どんなのが流行ってる?」

「なるほど、お母様へのプレゼントと誕生日プレゼントですね。何がいいとかあるでしょうか?」

「ねえモニカ、私から良い?」

「もちろんですわ。」

「ありがとう!じゃあね、店員さん、女の子へのプレゼントなんだけど。」

「はい、どのようなものが好きそうだとかはありますか?」

「うーん、最近色々物騒だから、護身用の何かが欲しいわ。女の子へのプレゼントだから軽くて、あまり物騒だともってくれないから、きれいなデザインのやつ。」

「ご、護身用ですか…。女性用の…。」

 若い店員さんは困っていた。すかさず慌てたようにシエナ様が頭を下げた。

「あ、そうよね、変な商品ね?店長さん呼んでくれる?ごめんなさい変なこと言って…貴女を困らせちゃったわ。」

「店長ですね、少々お待ちくださいませ。」

 おお、シエナ様ナイス。ニコリとほほ笑むと、シエナ様はウィンクした。店長が女性店員に連れられてやってきた。中年ので小太りの男性だ。

「どうもわたくしミカエルと申します。女性の、護身用の武器ですか…。ご要望に答えられるか分かりませんが、こちらへどうぞ。」

 ニコニコと笑いながら奥の部屋に入っていった。それに3人でついて行く。その間ショーケースを眺めながら何気なく店長に話しかけた。

「レスト王国からの輸入品が多いですね。あれは珍しい砂漠の花ではありませんか?凄い、初めて見ました。」

「ええ、そうです。よくご存じですね。」

「砂漠に花が咲くの?」

 シエナ様と足を止め、ショーケースに一つだけ鎮座していたそれの前に来た。砂で出来たバラの花があった。

「砂漠の花は砂漠から取れる石ですわ。願いを叶える石とも言われています。素敵ですわ。」

「そうなんですよ。これを見た時、私はあまりにびっくりして、即買い付けしてしまいました。レスト王国では砂漠がありますのでそこそこ出回っておりましたが、こちらではめったに見られませんね。壊れやすいので陸路は無理なので、海路で輸送いたしました。」

「そうですわね、馬車で運ぶのはとても大変でしょうね、さらりと溶けてなくなりそうですわ。砂と石灰と塩で出来ていると本に書いてありました。水にも弱くて…まさか本物が見れるなんて。新緑商会はすごいですわね!」

「お褒めいただけて嬉しい限りです。」

 初めて見た砂漠の花に興奮状態で張り付いていると、レオン様がトントンと肩をたたいた。

「店長さんがお困りですよ。帰りにまた見せてもらいましょう。」

「あ!すみません。わたくしったら、つい珍しくて希少なものを見つけてしまいまして…。」

「いえいえ、存分にお楽しみください。この希少さを解って頂けるなんて、苦労して仕入れた甲斐があります。審美眼に優れたお方ですね。」

「いえ、少しだけ。ご案内の途中ですみません。」

「では参りましょうか。」

 はい、と店長について行った。その道すがらにも興味深いものがあり、目移りしてしまう。しかし足は止めていては日が暮れてしまう。奥の応接室に通された。なかなかいい感じだ。身分は言っていないが、そこそこいいところの貴族ということは察してくれたみたいだ。期待通りお忍びで来てあまり大事にしたくないお嬢様とその侍女、そしてその護衛に見えたようだ。もちろんお嬢様はシエナ様で、その侍女は私だ。さりげなくシエナ様を上座に座らせ、レオン様を見た。護衛の定位置はシエナ様の後ろだ。


「さて、お嬢様のご要望は女性の護身用の何か、ということでしたね。」

「ええ、できるだけ繊細なデザインの、女性が持っていても違和感のないやつがいいわ。」

 店長が合図をすると、メイドたちが目の前のテーブルに商品を並べだした。

「こういうのは普段、店頭に並べたりしないのですが、やはり一定の需要はありますからね。まずは特殊警棒から!こうやってシュッとするだけで長くなります。コンパクトで持ち運びに便利です。」

 いきなり襲ってきた人を撃退する系の奴からなんだ。

「いいわね、でもこれは女性の力ではちょっと致命傷は与えられないわ。」

「そうなのですよね、棒術の心得があればこれでもいいのですが、か弱い女性だった場合…この猿玉はどうでしょう!モンキーボール、モンキーフィストとも言いますが、キーホルダーのようになっています、こちらの布がまかれた丸い部分に、鉄球が仕込まれています!これを思いきり遠心力をつけた状態で頭に振り下ろすと、頭蓋骨もボッコリでございます!」

 えげつない武器だ。しかも鉄球部分に巻かれた布がお猿さんで無駄に可愛い…。

「なるほどそういうのもあるのね。こっちの指輪は何かしら?」

「こちらは一番人気の仕込み針の指輪です。ここを捻ると針が出てきてこのまま暴漢を殴ると麻酔毒によって動けなくなります。」

「すごい!かっこいいわね、仕込み針!」

 その一番物騒だと思ったやつが一番人気なんだ…。前から日本と比べて治安が終わっているとは思っていたが、そこまでとは…。

「しかしそれは一人しか倒せないのでは?」

 レオン様が私より興味津々な目で指摘してきた。

「あそうね、手軽だけどダメね。もっと何人も相手にしてもいいような武器がいるわね。」

 シエナ様は誰と戦うつもりなのか。後ろを振り向いてやっぱり警棒がいいかしら、とレオン様と相談し始めた。あれは一回限りだし、これは馬車の時は間合いが難しい…そんなことを真剣に話し合っていたため、私は目の前のお猿さんを手に取ってみた。結構重い。確かにこれは思いっきりいいところに当たればボッコリかもしれない。しかもキラキラおめめのお猿さんが可愛い。

「それがいいの?」

 お二人の視線が来てイエと、とっさにテーブルに置いた。二人の視線が痛い。

「じゃあこの猿の可愛いのと、特殊警棒、指輪を3つと、防犯ブザー…メリケンサックはどうしようかしら?私の分だけでいいか。メリケンサック以外を包んで頂戴。」

「ではこちら4点は同じプレゼントボックスに入れさせていただきます。リボンと掛け紙はいかかいたしましょう?」

「青い包装紙に、金のリボン。青は空色がいいわね。」

 おや、私の好きな組み合わせだ。

「かしこまりました。お帰りの際にお渡しします。」

 店長はテーブルの上を片付けさせると、私のほうを向いた。

「わたくしのほうは、わたくしの母に、何かいいものはないかと思って来たんですわ。」

「なるほど、どのようなものがお好みでしょうか?」

「母は南部の港町にいるのです。海の見える街ですわ。」

「ほう、南部ですとバージェス領でしょうか。灯台の町ですね。」

「はい!そうなんです。いい街なのですわ。でも最近母の手紙にあまり雨が降らなくて、渇水がひどく、作付けが良くなかったと聞いたんです。去年もよくなくて、こっちは大丈夫か?って聞かれたんですが、普段料理は作らないのでわからなくて…。王都の小麦は高いんですか?」

「なるほど。王都は平年通りですね。私は南部は行きませんので詳しくないのですが、そうなのですか。」

「はい、じゃあ西部の作付けは大丈夫でしょうか?渇水が起きているというのはないですか?あちらで穫れれば南部がよくなくても大丈夫でしょう?」

 西部グリーン侯爵領は南部バージェス公爵領と並んで二大穀倉地帯だ。片方が良くないと小麦高騰の原因になってしまう。去年一昨年は備蓄分を放出して平年並みの出荷量にした。今年もそれで平年並みに出来る予定だが、作付けはよくなかったのは事実だ。ダンジョン問題が解決すればまた、徐々に回復するだろうが、何年かは備蓄の放出が続くだろう。南部が良くないという話を聞いて、きっと今店長は、私に小麦を売るか、他のものを売るかで儲けを計算している。

「…西部のほうは作付けは問題ないと聞きました。去年も平年通り穫れていますね。心配しなくても大丈夫だと思いますよ。」

 なるほど。流通量が平年通りではなく、収穫量が平年通り、ということか。

「そうですか、では小麦の値段はあまり気にしなくていいのですね。よかった。高騰したらどうしようかと思っておりました。では違うものにしましょう。布地とか、後珍しい色の糸とかありませんか?母は仕立てが上手なのです。」

「はい、おすすめの織物をご用意いたします。こちらは綿で出来ておりまして…。」

 結局私は母様に独特な風合いの綿の布を2枚ほど買った。お支払いはレオン様がしてくれたので、第三王子殿下のおごりだ。席を立ち廊下を行くと、その第三王子殿下が何やら紙袋を持って、店の柱に寄りかかって待っていた。近くにはロイ様もいた。

「おや、お待たせいたしました。」

「いや。いいのは買えたか?普段とラインナップが違うだろ?」



 ###


 確かにバージェス家の出入りの商人は、レスト王国より霧の海を東に抜けた向こうの国、ライト王国のほうとの交易が盛んだ。見たことない商品が多く、楽しかった。

「はい。ご配慮痛み入ります。珍しいものがたくさんありましたね、シエナ様。」

「うん、いいのが手に入ったわ。」

 レオン様がシエナ様とともに荷物を馬車に運んでくれていた。第三王子殿下が新しい手袋をはめて、紙袋をあさっていた。私は小首をかしげ、その様子を見ていると、中から何かを取り出した。

「ベビーカステラだ。食べたことあるか?」

「いいえはむ。」

 答えている途中に口に押し込まれた。

「これおいしいよな。たまに食べたくなるんだ。」

 確かにおいしい。中にカスタードクリームが入っていて、しかも焼き立てなのでまだ温かい。いや、しかし口の中の水分を全部持っていかれて、まともに話すことすらできなかった。

「もう一ついるか?」

 思わず顔をあげて第三王子殿下の顔を見た。いたずらっぽく笑う彼に、首をぶんぶん振って主張した。そうかと思いのほか、あっさり引き下がってくれた。それより水だ。馬車にあるトランクの中に水が入っていた。いったん馬車まで戻ろうか。

「やや、第三王子殿下ではありませんか!」

 奥から出てきた店長は驚いて、頭を下げていた。店長の声で、先ほど第三王子殿下の接待をしたであろう若い女性店員が、慌てて頭を下げでいた。王族の姿なんて、貴族でも無かったら見る機会はない。ただ商会の会長レベルなら献上品をもって会うこともあるだろう。

「ああ、この間城に来たな。新緑商会の会長によろしく伝えてくれ。今日は私の婚約者が世話になったな。」

 そう言って手を出してきたので、おとなしくエスコートされるべく手を取った。

「本日はありがとうございました。」

 何とか飲み込んで、ぺこりと挨拶をした。第三王子殿下とともに外に出ると、馬車の前でお二人が待っていた。

「リチャード様の用は終わったの? 」

「ああ。大体な。あとはどこかに寄るか?」

「さっきレオン様と話していたのだけれど、やっぱり念のため、短剣も欲しいわ。武器屋に行きましょう。」

『ダンジョンがあるところに冒険者もいる。冒険者のいるところには武器屋がある。』これは一種の格言だった。原因があるから結果がある、そういう意味だ。王都はその昔ダンジョン攻略の要所だった過去があった。その名残で武器屋は多い。今は騎士団に卸しているところが大半だ。

「じゃあ武器屋に行こうか。」

 馬車に乗り込んだ。

「これ、モニカに。ちょっと早いけど、誕生日プレゼントよ。」

 シエナ様が先ほど買った防犯グッツを私にくれた。空色の箱に金色のリボンは、確かに私の好きな色だ。

「え、わたくしに、だったんですか?」

「うん。本当は違うのにしようと思っていたんだけど、この間の占いで不安になっちゃって、モニカには自分で身を守れる道具にしたの。指輪はいつもつけてほしいわ。」

 何という…何ということだろう。うれし過ぎて声にならない。こんなにシエナ様が私のことを考えてくれるとは…さっきだって、この防犯グッツを選ぶ時だって、ずっと真剣だった。本気で選んでくれたのだ。レオン様と話し合って、頭を悩ませ、一生懸命考えてくれた。

「ありがとうございます、シエナ様!一生、一生大事にします…。」

「だめよモニカ。ちゃんと使ってよね。そのために買ったんだから。箪笥の奥に仕舞ったらただじゃ置かないわ。…自分の身を守るのは最後は自分なのよ!」

 シエナ様に両手をがっちりと握られ、真剣に言われてしまっては、トランクに入れて持ち歩くしかない。

「はいわかりました。」

「家に帰ったら、使い方とか教えてあげるからね。」

「はい、お願いします。」

 私がシエナ様と二人の世界に浸っているとき、第三王子殿下はレオン様に何があったんだ?と詳細を聞いていた。

「なるほど、防犯グッツは実用的でいいな。」

 感心しながらベビーカステラをかじっていた。全員に配って馬車の中で食べていたのだが、やはり水が欲しい。トランクを開け、3人にコップを持ってもらい、水を注いだ。

 もぐもぐ

「中にカスタードが入っていておいしいわ。」

「なんだか懐かしささえ感じますね。癖になります。」

「あ、チョコ味ですね。これ、俺は初めて食べました。」

「新作だそうだ。おまけしれくれた。」

 本当においしい。

「この通り沿いにあるんですか?」

「ここから一本入ったところだ。あたりが甘い匂いがするから、すぐわかると思う。」

 なんで第三王子殿下がこんな、庶民のお菓子のお店を知っているかはさておいて、確かにこの通りはどこからか甘い匂いが漂っている時があった。なるほどベビーカステラ屋さんだったのか。そういえば食事に関しては、ゲームでは日本と同じような感じだった。日本で作られたゲームだったため、全く気にしたとこはなかったが、いろいろとおかしいような気がする。この違和感は大切にしなければならないような、もっと突き詰めて考えなければならないような…。


「着きましたよ、武器屋です。…ここならシエナ嬢のお眼鏡にかなう品があるはずです。」

 レオン様の声に我に返った。

 馬車を下り、扉を開けるとそこはさすが武器屋だ。所狭しとさまざまな種類の武器があった。しかしよく見ると少し小ぶりのような気がした。シエナ様が駆け出して一心不乱に物色していた。第三王子殿下もそれについて行った。この店は初めてらしい。レオン様が私に隣で解説してくれた。

「ここは女性騎士ご用達の店です。男性のものより軽量化に重きを置き、しかも強度にも優れています。子供の練習用としても用いられるため、種類も豊富です。」

「あの、一ついいですか?レオン様。男性はなぜ重い武器をお使いに?」

「そうですね。それは一打が重くなるからです。重い一撃というのはそれだけ威力があります。重いほうが一撃で仕留められるんです。そういう武器がいいと重いものを持っている女性もいらっしゃいます。しかし大半の女性騎士は手数と正確性が高い方が多いです。」

「正確性、ですか。」

「はい。急所に、より正確に攻撃を放つことで、手数の多い軽い武器でも威力が上がります。」

 なるほど、クリティカルヒットのことか。確かに手数が多いほうが試行回数が多くなる。

「理解しました。またわからないことがあったらお教えください。」

「はい。…個人的にはこのダガーなどがいいのではないかと思いますが。」

 なんで私に聞くのか。いや、私の防犯グッツを買いに来たのか。しかし短剣の良し悪しなんてさっぱりわからない。前世も今世も持ったことのある刃物は包丁ぐらいだ。港町の出身なので研ぐことはできるが、そのくらいだ。レオン様にそれを手渡されて驚いた。

「軽い。すごいですねこれ、すごい軽いです。こんなに軽いと思いませんでした。」

「そうでしょう、ここは特に軽量化に力が入れてあるんです。騎士団でもメインの剣以外のサブナイフとして、こちらのダガーを持っている方も多いです。あくまでもサブなので、軽いほうがいいのです。」

 なるほど。ナイフ豆知識を聞いていると、シエナ様がこちらに寄ってきた。

「あ、それいいわね。シンプルだし邪魔にならない。鞘の柄も繊細で素敵ね。これはどう?モニカ?」

「はい、とても軽くていいと思います。」

 シエナ様が私の手からさっとダガーを取ると早速、お店の人にお会計!と声をかけていた。

「なんだ、もう決まったのか?」

 じゃらりと鎖の付いた鎌を持って、第三王子殿下がこちらに来た。

「それは…鎖鎌ですか…?」

「お、よく知っているなモニカ。結構マイナーな武器なんだが。」

 完全に前世の知識だ。しかも詳しくない。なんでそんなものがここにあるんだよ。本物なんて初めて見た。

「名前は…かろうじて。どうやって使うかは知りません。」

「これは反対の鉄球を回しながら使うんだ。腕に絡ませたり、この先で頭を狙ったり。それから止めで鎌を使う。一回デモンストレーションを見たことがあるが、すごかったぞ。」

「そういう風に使うんですか、初めて知りました。」

「買って来たわよ、モニカ!これ使ってちょうだいね。」

「はい。…後で使い方をお教えくださいまし。」


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