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瑠璃の宮から翡翠の宮に戻って、待合室にてシエナ様とまったりとしていた。頂いたオパールを覗き込むさまは可愛らしい。シエナ様が三角形のオパールをつまんで持った際、つるりと滑らしテーブルの上に落ちだ。
「きゃあ!なに?」
カランとこっちに転がってきたオパールを咄嗟に受け止めた。確認するとひびなど入った様子はない。
「大丈夫ですわ。傷ついていません。…何か小さな袋に入れたほうがいいでしょうね。」
「…ありがとう。モニカ。」
シエナ様が微妙な顔をしてオパールを受け取ると、手の中のものをじっくり眺めていた。確かに目が離せないほど美しいオパールだ。白い雲がキラキラ輝いているかのようだ。形は珍しい三角形だが。
後ろからガチャリ、と音がした。先ほど扉から出て行っていたレオン様が本の入った袋を持ってきた。それに気づいて席を立ちレオン様のほうに寄っていく。
「ありがとうございました。大変面白かったです。」
「ええ、面白いですよね。いい終わり方でよかったですね。」
「はい、またあそこから裏切り者が出るとは…。」
「そうなんですよ。」
「もう、お二人とも本のお話なら座ってなさったら?」
シエナ様に聞こえないように話していたが、そんなことはお見通しだったみたいだ。二人で顔をみ合わせ苦笑いをした。
「私のことは気にしなくていいわよ。本を読むより馬に乗るほうが好きだから、何を言われてもよくわからないもの。それより二人がニコニコ話しているところを見ているのが楽しいわ。」
ふんわり笑ったシエナ様は1年前からしたら大分大人っぽくなったようだ。こうやって美少女から美女になっていくのか。
「シエナ様は本当に天使のようなお方ですわ。」
「ああはいはい。モニカったら出会った頃からずっとそんなんなんだから。」
口をとがらせてあちらを向いてしまったが、私は照れ隠しだと分かっていた。可愛い。
「あなた方は仲がいい姉妹みたいですよね。」
「そんな、シエナ様と!姉妹…。」
レオン様の発言があまりに嬉しい言葉すげて、顔がにやけた。
「あなた今ものすごくみっともない顔していますよ。」
「だって、シエナ様と…!姉妹。うれしいですもの。」
こんなキラキラで可愛い妹がいたら最高ではないか。王都中に自慢して回るに決まっている。いや待て、私なんかがシエナ様の姉、ということになるのはいいのか?こんなに完ぺきなシエナ様の!素晴らしく天使なシエナ様の!
「私もモニカがお姉ちゃんになってくれたらうれしい、けど。」
「わたくしだって、いやしかしわたくしなんかが…!でもでも!」
一人でぶつぶつ言いながら部屋の隅に向かって話しかけていた。視界に本が入った手提げがずいっと入って来た。
「とにかく面白かったですってことです。」
「はい。ようございました。他にも何冊か同筆者の物で、レオン様のお好きそうなものもありますよ。今度持ってきますね。」
目の前の手提げを受け取ってレオン様のお顔を覗くと、普段ポーカーフェイスのレオン様にしては珍しい、ふんわりとした嬉しそうな笑顔でお願いしますと言っていた。やっぱり、攻略対象だけあって顔は良いし、性格だって厳しくも優しいし、素敵なんだよな、としみじみ思った。




