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プロローグ

初投稿です。

モブ令嬢 第三王子ルートエンドのスタートです!


モブ令嬢であるモニカはヒロインシエナに出会って乙女ゲームについて思い出した。やんちゃで生意気な攻略対象の第三王子殿下を見事ヒロインに押し付けられるのか?

そんなお話です。


【あらすじ】 サイドストーリーが人気になるケースは多いと思う。主人公より人気のある主人公の仲間など上げたらきりがない。私もどちらかといえばそういうサブポジたちが好きになる傾向にあった。

 自分の身に降りかかるとは思わなかったが、最近の流行通り乙女ゲームのキャラに…いや、キャラになったというのも違和感があるほど影の薄いモブ中のモブに転生したらしい。どんなゲームかといえば、悪役令嬢なんて出てこない、主人公の女の子の都合のいいようにできている世界だった。つまりは婚約していても婚姻前なら簡単に破棄できる。だから基本的に婚約者とはいえ近づきすぎたりしてはいけない。


 学園卒業までに王太子妃候補を王太子が決め、20くらいまでに婚姻をする。この国には王妃と側妃が一人ずつおり、王室には今三人の王子と一人の王女がいる。王太子殿下は王妃の第一王子、第二皇子は側妃のお子で、その次が王妃のお子で私の三つ上の王女様。そして王妃の三人目の子が第三王子だった。そう、この第三王子がリチャード様が問題だった。


 私が記憶を思い出したのはヒロイン、シエナと出会ったからだ。


 あの出会いは衝撃だった。今まで引き取られた公爵邸で頑張って努力してきたが、その頑張りがすべてぶっ飛ぶほどの衝撃だった。いま彼女は11歳だったか、公爵閣下とそっくりの金色の瞳に、銀の髪。つぼみのような唇が、ゆくゆくは美少女になることを確約された美しい子だった。あまりの美しさに気を失った私はその時悟ってしまった。


 この世界はこの子が幸せになるための物語だと。

 いやむしろこの子が幸せにならなかったらそんな世界って意味あるの?物語のくせに!

 

シエナは公爵閣下の姉が駆け落ち同然で結婚した王国の勇者との間にできた愛娘だ。15年前に起こった魔物のスタンピードで活躍した彼女の父は凱旋パレードで当時の公爵令嬢に一目ぼれされ、男爵地位を授かった後辺境伯領地で国境警備につくため王都を出て行った。それに無理やりついて行ってなし崩しに結婚し、それでも娘が生まれ温かい家庭を作っていたが、そんなアグレッシブな母が病気で亡くなったのだ。炎のような最後だったそうだ。一人辺境で娘を育てることはできないと王都の公爵邸に連絡が来て、公爵閣下が預かることになった。公爵閣下は姉にそっくりの姪を一目で気に入ったようだった。それは公爵家に跡取りのために引き取られた私にもよくわかった。

 

 公爵夫婦はおしどり夫婦で有名だった。姉が突然出奔し呆然としていた公爵を支え続けたのは当時婚約者だった現公爵夫人だ。二人の愛は深かった。子供ができなかった二人だが、公爵閣下のいとこの子供である私を、引き取って育ててくださった。何より病気がちな母の治療費に幼い弟の生活費もすべて出してくださった。私はそれで満足で、公爵夫婦のためならなんだってやるつもりだった。公爵閣下と公爵夫人、そしてシエナ様のいるお茶会に入っていく勇気は、私にはなかった。どう見ても親子のお茶会に入っていく異物だった。しかし公爵閣下と公爵夫人は優しかった。私のことも受け入れてお茶会に招いてくれた。私は改めてこの二人のためなんだってやってやると誓いを新たにした。

 

 そう、シエナ様は乙女ゲームの主人公。15歳になったら学園に行って攻略対象と恋に落ちるのだ。そしてその中には私の婚約者も入っていた。

 

 ああ、頭が痛い。私が引き取られてすぐ、私は王宮に連れて行かれた。そして突然の顔合わせに、婚約の発表と一瞬で決まってしまった。相手は第三王子のリチャード殿下だった。やんちゃで生意気な彼とは正直うまくいく気がしない。出会って2年。月に数度の彼とのお茶会は正直苦行だった。肩に毛虫を乗せられたり、池に押されて片足を突っ込んだり、カエルを見せびらかされたり、蛇をけしかけられたり。そういう遊びは男の子同士で、そう、そこにいつも一緒にいる伯爵令息のレオン様とやってくださいと、何度もお願いしたのだが、私が驚くのが楽しいらしい彼は私をいじめ倒していた。しかし、だ。ヒロインに少し早く出会ったら。もうちょっと落ち着いてくれるのではないか?もしかしたらヒロインに少し早く恋をして、原作の天才肌の殿下になってくれるのではないか?もしもシエナ様と恋に落ちたら、私はお役御免で父母と弟のところに帰れるのではないか?私はそう思ってしまった。


 そこでふと、私は前世の推しカプのことが気になった。

 私には推しカプが、あったのだ。あの悲恋の推しカプが。それは攻略対象でも何でもないロイ・メイファーとアリアドネ王女殿下のカプだ。幼少の頃よりお互い惹かれていたのに、アリアドネ王女殿下は学園卒業と同時に他国の王子に嫁ぐことになるのだ。しかも嫁いだ先で流行り病に罹り、翌年あっけなく死んでしまう。自分がとっとと気持ちを伝えていたら。王女殿下に気持ちを伝えていたら。もしかしたら他国に嫁ぐのを阻止できたかもしれないと後からロイ様は死ぬほど後悔をし、ヒロインがその心を少しずつ癒していくのだ。しかしヒロインとくっつくことはない。一生独身を貫く純愛カプだ。このストーリーはリチャード殿下の攻略時に少しだけ語られるサブストーリーで、ロイ様は後悔しない選択をするようにと、リチャード殿下の背中を押すシーンに出てくる。

 現在の時間軸は私、モニカが12歳。今年からアリアドネ王女殿下が学園に入学をした。あと3年。思い出したからには二人には幸せになっていただなくては。手始めに今度の王宮上がりの日に、第三王子殿下とのお茶会にアリアドネ様を呼んでもらうのはどうだろう。ロイ様は王宮近衛騎士として第三王子の護衛をしているから調度いい。私がアリアドネ様に第三王子殿下の奇行を堂々と報告して…一緒にシエナ様をお二人に紹介するのはどうだろう。アリアドネ様は以前から私に親切にしてくださっていたから相談があるといえば来てくださるはず。

 私はベッドの上で気合を入れた。これからも、公爵家のため、アリアドネ様のため、父のため、母のため、弟のため…頑張るぞ。たとえモブであろうとも。


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