ある芸能事務所の謝罪会見
その事務所所属の少年たちはスターになることを夢見ていた。
養成所に入ると素晴らしい先輩、素晴らしい講師たち、
力のある事務所のキャスティング力などを目の当たりにして
みんな自分こそが将来のトップスターになるんだと目を輝かせた。
『正面体』、『光原始』、『音子組』、『須磨夫』、『禁忌傷』、『部位sicks』、
いろんなアイドルグループがその事務所からデビューして輝いていった。
しかし、その強い光には昏い影が存在した
その事務所でデビューするには事務所のオーナーの
性的なお気に入りにならねばならなかったのだ。
そのオーナーは基本的にノンケの未成年の少年しか好まず
ある程度の年齢に達するとお役御免になることは
代々先輩方から口伝えにきいていた。
暗闇の中で行われてきたおぞましい行為を少年たちは
目をつぶり、歯を食いしばって耐えた。
なぜなら、その先に輝く未来が見えていたから。
そうしてオーナーの玩具の役を終えてデビューにこぎつけた少年たちは
記憶を封をして墓場までもっていくことを決め、
ショービジネスの世界に羽ばたいていった。
もちろん、オーナーの玩具になることをよしとせずに辞めたり、
週刊誌などに訴えたりした少年たちもいたが、
それらの声は事務所の力によってもみ消された。
マスコミも広告主の要望でその事務所のタレントが使用できなくなることを恐れ
報道することはなかった。
一方で地獄を乗り越えてショービジネスの世界で生きることができた少年たちも、
トラウマ、PTSDなどに悩まされながらも互いに支え合い、
やがては恋人を作ったり、妻や子など家族を持ち、自身の人生を生きようと努力をしていった。
中には性的なことに嫌悪感を持ち、パートナーや家族を持つことができない者もいたが。
みな、自分の後輩が同じ地獄にいることを見てみぬふりをするしかなかったことに
罪悪感を持ちながら。
時は過ぎ、やがてそのオーナーが死去すると、オーナーによって被害を受けた
デビューすることなく退所した元少年たちが一斉にその事務所を訴えた。
今なら加害者は亡くなっていて事実関係の確認もできないこと、
そこから莫大な慰謝料を求めることができると、社会活動家にたきつけられたことで、
被害を受けたものも受けてないものも、皆何百回も性被害を受けたと訴えた。
その流れはオーナーの死によって事務所の影響力が低下したこと、
その訴えを利用しようとした政治家や活動家によって、
またたくまに全世界的なニュースになった。
事務所はまたたく間に謝罪会見を開くことになった。
しかし、実際の加害者であったオーナーはすでに死亡。代表のオーナーの実子は
精神的な不調を訴え謝罪会見などから姿をくらませた。
そして会見には被害を受けた元少年たちが経営陣として謝罪をする羽目になった。
記者によって「性被害をうけましたか?」「性加害を知っていたのですか?」
などの質問が飛んだ。
謝罪会見で元少年は「私は被害をうけていません」「私は加害をしていません」としか答えられず被害を受けた方へ補償などを話すしかなかった。
なぜなら、「性被害を受けた」と答えることは過去の苦しみを追体験することになったり
「性被害をうけたからデビューできた」と言われることで、それ以外の歌やダンス、
演技などもろもろのそれまでの努力も無に帰されかねないこと、
自分が被害を受けなくなった時に、下の後輩たちに被害がうつっているのを
知っていながら見てみぬふりをした無力感と自身が対象とならなくなった安堵感の入り混じった罪悪感があること。
見てみぬふりをしたことで、自身も被害者でありながら共犯者のような心情になっていること、
そして、自分の妻や子に「私は性的な被害を受けた」とカミングアウトすることが出来ないことなどがあったから。
そんな元少年たちの葛藤を無視するかのようにかつては自身らマスコミも
性的虐待を事務所と広告主たちの意向にそって見てみぬふりをしたを棚に上げて
元被害者の少年たちを性加害を行った会社の代表として
セカンドレイプしながら叩き続けている。