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【1】はじまり

本作品は、本来存在する史実とは全く別の世界線を歩んでいる世界のお話です。

よって、日本の元々の中心都市が静岡になっていたり、政権交代があらぬタイミングで起きたりしています。よって、本来の史実とは関係ありませんのでご容赦ください。

また、本作品は戦闘描写もあるため、残酷な描写や、人によってはあまりいい気分ではない表現も含まれています。読む際はご注意ください。

2055年7月。

日本は終焉を迎えていた。

20年前に勃発した”センターオブデストロイ”中国とアメリカの全面戦争でアメリカは中国に対して大敗を喫した。それは戦争と呼ぶにはあまりにも滑稽で悲惨に蹂躙したものであったが、当時アメリカ側についていた日本は実質の敗北、現在の日本は終焉を迎え、日本という地域ですらその後を見なかった。そして、日本は中国政府によって蹂躙される結末を迎えた。


「ここもダメか、どこにあるんだ」


2055年、日本旧静岡県南西部

まめ子は荒野の中を歩いていた。

レジストからの一時通達によって、中国政府の”軍事強化装置R9”の手がかりが旧静岡にある中国支部にあることをつかんでいたまめ子だったが、今回も不発だった、とがっかりする。

レジストとは、現日本において中国に対する抵抗組織であり、主にセンターオブデストロイ以降に生き残ったアメリカ人と日本人で構成されている。

現在では中国政府のR9を無力化しようとしているが、十分な成果はこの期間得られていないのが現状だ。


「あと…3つだな」


まめ子はすぐに立ち去り、中国支部を後にした。

レジストの情報で中国支部は残り3つあるという情報だったが、既に7つあったうちの4つにはR9と手がかりとなる情報はなかった。

それどころか、中国支部においては、R9で強化された人間がわんさかおり、適度に戦闘する羽目になったことにいらついていた。


「(はあ、いらいらする…。)」


自分の能力を発揮する都合上、いらいらしなければならないことは仕方無い事だとはわかってはいるが、何度も戦闘を重ねて成果なし、という一時的ないらいらは彼女を余計にイラつかせた。


「ん?」


移動している中、背後に気配を感じる。

こちらはかなりのスピードで走っているのに違和感を感じた。


「(私に追いつける人間?)」


通常の人間なら追いつけるはずはない。

仮にG9の強化を適度に受けている人間でも120%出力に追いつくのは困難なはずだ。


「という事は中国人か」とまめ子はささやいた。


おそらく、先ほどの中国支部の関係者の人間だろう。

私が中国支部を襲撃したのを見て追いかけてきたか。


「しょうがないな」とまめ子はその場で止まった。

そして背後にいた気配もまめ子の目の前で止まった。


「君日本人禍」

「ったく中国語はわからなくてたまらん、いらいらする」

とため息をこぼす。


「殺君間時!!」

と相手の中国政府の人間であろう兵隊はこぶしを振り上げてきた。

「ふんっ」

まめ子はあっさりと避ける。

「遅い…」

避けたと思った時には既にまめ子のこぶしは中国人の胸を貫いていた。

「亜、亜…」

中国人は倒れ込んだ。

「それでもR9で強化された人間か?全く手ごたえがないぞ。はあいらいらする。私だって、暇じゃないんだ。」

不満が溜まる。憎悪が流れ出す。

「しまった。120%を維持」

と深く深呼吸をした。


「よし、行くか。チッ」


中国人を亡骸を残したままその場を後にした。


日本旧東京

ここには、レジストの臨時支部が存在する。

静岡以前は、日本の中心地だったようだが、現在は見る影もなくレジストの臨時支部が設立されている。

レジストの中でも特殊な立場にいるまめ子は旧東京支部を含む各支部での寝泊まりが許可されている。

とは言っても、現在は深夜3時頃。ほとんどのレジスト兵は見張りの者を除いて就寝している時間だ。

と思っていた矢先…。


「お姉ちゃーん!!!」

「ちょ、ちょっと…!しー…!」

「あ、ごめんなさい」

「皆ねているんだから静かにしないとダメだろ」

「ごめんなさい…お姉ちゃん」

太陽のように輝いていた笑顔がすっと消える。


この少年は、旧東京支部で兵として雇われた女性の息子で1か月ほど前からこの支部の住民用施設で暮らしている。

当初突然レジストに訪れ、怯えていた所に一時調査をしていたまめ子が帰還し、女性でありながら、調査に出ていたまめ子が無傷で帰ってきたことに感動し、以降まめ子を慕っている。


「ったく…」

「どうしたのお姉ちゃん」つぶらな瞳が曇ったまめ子の顔を覗き込む。

「っつ、なんでもない」

と、即座に顔をそらす。

「変なお姉ちゃん。あ、それよりもね!!」

「(はあ、子供は苦手だ…)」

と、長々と話す幼子を前にして、まめ子は心底あきれていた。

「ってお母さんが言ってたんだ!」

「…ん?あれ聞いてなかった。なんだ?」

「だから!お母さんが最近暑いから何とかしてってお姉ちゃんから偉い人達に言ってきてよ!って話!」

またそれか...。

「わかった、わかった、今度はちゃんと言ってくるから。はあ...。」

何度も何度も聞かされる現状に心底むかつく。

「絶対だよ!僕がいなくなったらお姉ちゃんも寂しいでしょ!!」

また、顔が太陽のようにキラキラと輝く。

「(…寂しくなんてあるもんか)」

まめ子はまたうつむいた。


翌朝


「はぁ…もう朝か…」

睡眠時間は大幅に短くしたつもりだったが、悪夢を見た。

このところやたらと悪夢を見る。いつも同じ夢。


「感情を殺しても、自分を殺しちゃだめだよ」


自分を殺すな、か。

本来の力を発揮しにくいのもそのためなのだろうか。最近はやたらとこの言葉に縛られている気がする。

だが、自身を殺すくらいでもないとこの世界はやっていけない。そんな世の中なのだ。


”私を殺さないと、私が殺される”

そんな…世の中なのだ。


「よし、行くか。」怠い体を起こして、司令部へと向かう。


司令部は中国人同様文字通り冷ややかな空気だった。

名前も知らない真っ黒な機械。常に稼働し続ける空調。前面には日本に点在する中国人の支部の情報がモニターを通して英語や日本語が入り混じり目まぐるしく回っている。

そして、7月の関東地方、戦争で見た目は変わり果てても、ここが元々日本だという事を思い知らされるくらいには外は暑かった。よって、司令部内は空調が効いている。というわけだ。


「(住民にはこの電力すら満足に分け与えない癖にな)」


レジストの臨時支部を含め、各支部には中国人の奴隷化を免れた住民たちが住む「生活ブロック」。

そして、まめ子のような前線を張る兵士やG9訓練を受けた兵隊が生活をする「戦闘ブロック」が存在する。

センターオブデストロイ以降、日本人の約半数は中国人への帰化という名目で奴隷化しており、酷い処遇を受けているため、これを聞きつけたレジストは戦闘ブロックと隣接した形で生活ブロックという奴隷化を免れた日本人が安全に生活するための区画を設けた。そこらへんで野宿するよりかは安全だ。

そして、生活ブロックにいる人間は基本的に戦闘能力を持たない者、または戦闘能力を持たない家族がいる者が生活をしているが…。


「(これなら中国人奴隷になるくらいがちょうどいいんじゃないか?)」


現状、支部内の電力というものは供給が難しいため、そのほとんどを兵力が集中する戦闘ブロックに回されており、生活ブロックには「電力削減」という目的で暑かろうと、寒かろうと必要十分な電力は与えず、代わりに「電気を使わない器具で何とかしろ」という命令が司令部により下され、対処している支部の生活ブロックも多くここ旧東京の支部でもやはりそれが行われている。


「チッ、むかっ腹が立つな」

「おっと、まめ子ちゃん何をそんなにイライラしているのかな?」

と、ひげ面かつ狩りあげられた大柄な男が近づいてくる。

支部長のお出ましか。


「ふん、私はこの現状が気に食わないだけだ」

「それは俺もそうだよ、本当はこんな状況すぐ終わらせたいんだがね」

「どうだか」


レジストの支部にはそれぞれ支部長が存在する。

支部長はそれぞれの支部の管理、指揮、軍事強化、中国人の施設侵入を警戒する役割を任じられており、臨時支部である旧東京においては40歳半ばの男性が支部長に任命された。この男は身長は約180センチほどで非常に大柄な男であり、ひげ面で刈り上げた頭と、険しい顔が特徴的でG9適性は低いが、武器の扱いに長けており、指導力もあったため、支部長へと任命されたらしい。


「(名前は…覚えてないな…)」


支部長が顔を覗き込む。

「おっと、まだSランク階級様はお怒りのようだ」

「うるさい、私は階級なんかに興味はない」覗き込んだひげ面のを振り払った。

「階級っていうのは中国をつぶすための大切な指標だと思うけどなあ。そうか、というかそれも訓練の一環ってか、精が出るね」

「ふん、だから私はレジストが嫌いなんだ」

「俺たちは日本の現状を救ってやってるんだぜ?俺はG9の適正は低いが、レジストに買われてここに来たわけだが、正義も持ってる。みんな思いは一緒なんだ。まめ子さんも一緒に頑張ろうぜ?」

「チッ…」

話が通じない。

「(私はそんなヒーロー気取りなレジストが大嫌いなんだよ…!)」

内心そう思ったつかの間支部長が続ける。

「俺たちは階級によって、作戦も全て決まっている。俺みたいなやつはBランク止まりだが、それでもレジストの中核を担っているんだ。支部長クラスになるレベルだしな。でもSランクのまめ子ちゃんは規格外だから俺みたいなやつも眼中にないってか?」

「いい加減…に…」

「でもなあ、G9の適性がないからってBランク止まりっていうのも嫌な話だよなあ、G9っていうのは負の感情を媒体にして俺たち日本人に力を与えてるんだろ?そんなの俺みたいなポジティブ人間が適性が高くないのなんて当たり前だし不公平じゃないか。移動も自由にできないし。俺はAランク以上がうらやましいよ。」

陽気な人間の言葉が鼻につく。

拳を握りしめる。

「こんな階級渡されたって、あいつは戻ってこない…」

「ん?なんか言った?」

「なんでもない…」

「それよりなんだ、臨時通達って」

「ああ、その事ね」

支部長はおもむろに書類を取り出した。

「最近旧東京周辺をR9で強化された中国兵が見張っているらしくてね。まめ子ちゃんにはその中国兵を殲滅してほしいんだ」

「なんで私なんだ。支部への突入じゃないなら、他の兵士がやればいいだろ」

支部長の顔が少し暗くなる。

「それが厳しくてね。旧東京支部の兵士たちは大阪にある中国本部に手回しされて今空いているのはまめ子ちゃんみたいな編隊されていない子たちくらいしかいないんだ」

「なんでこうSランクっていうのはめんどくさい事を回されるんだ…」

「まあ、使命だと思って頑張ってきてよ」

「チッ、戻ってきたら私の要求を聞いてもらうからな」

「え?何要求って…」

支部長の言葉を待たずにまめ子は司令部を後にした。

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