第6話:大魔術師の弟子(1)
「お父様の弟子、ですか?」
夕食の席でヴォルフガングから、「来週から弟子がやってくるよ」と言われたのだ。
「ああ。元々、週に一度、私のところに通っていたのだけれどね。お前の学習に専念しようと、しばらく休止していたんだ。けれど、もう大丈夫だろう。そう判断して、彼らには講義を再開すると通達した」
彼ら、ということは複数いる事になる。
「全部で何人いらっしゃいますの?」
「現在通っているのは三人だよ。全員お前と同じ年頃の男子だ。同門同士、仲良くなれるといいね」
ヒルデガルトが知る同年代の男子はみな、やんちゃで遊びたい盛りだった。
平民の同年代男子など、そんなものだろう。だが貴族令息となると、住む世界が違い過ぎてさっぱり分からない。
「同年代の貴族男子だなんて、どんな方々か想像もできませんわ……」
ヴォルフガングは楽しそうに笑った。
「そうだろうね。まぁなにごとも経験だ。学院に行く前に、少し慣らしておくといい」
そう言って油の滴る肉を口に放り込み、満足そうに頷いていた。
(男性に対するマナーも、改めておさらいしておいた方がよさそうね……こういうことはウルリケに聞いておけば、間違いはないと思うし)
ヒルデガルトは新たな課題を胸に、夕食を済ませていった。
****
「いいですかお嬢様。年頃の男性は全員狼です」
「狼、ですか」
食後、部屋に戻ってから始まったウルリケの講義は、初手から過激だった。
男=欲望のケダモノ扱いである。
そこに平民や貴族の区別はない。
「油断をすれば食われます。特に貴族令息にはその手の輩が多いので、決して気を抜いてはいけません。貴族令嬢にとって、その手の瑕は人生を大きく左右します。心してください」
ヒルデガルトは孤児院育ちである。
つまり、”食われる”という事が何を指すか、正しく理解していた。
だが、そこまで警戒する必要がある程危険なのか、実感はなかった。
「そんなに危険なのですか? 確かに、貴族子女としてみだりに二人きりになるのはしてはいけないことだと教わりましたが」
ヒルデガルトは小首を傾げて尋ねた。
整った顔立ちだという自覚はあっても、その姿の可憐さに自覚はないらしい。
「お嬢様は、一見すると可憐――つまり押せばイケルと思わせる空気を纏っておいでです。そういうタイプは狙われやすいのです」
ずずい、とウルリケの顔面がヒルデガルトに近づく。
(近い。近いって!)
ヒルデガルトの第一印象は男の庇護欲をそそる。か弱そうで、気の弱い印象があるのだ。
実際に接してみれば、決してそうではないと理解できるのだが……
「そう言われても、とても迷惑ですわ……」
ヒルデガルトはウルリケの肩を「よいしょ」と押しのけ、ため息を吐いた。
外見や纏う雰囲気は持って生まれたものが大半だ。”そこが狙われる理由だ”と言われても、対処のしようがなかった。
「お父様のお弟子さんたちも、そういう方々なのかしら……」
ヒルデガルトは憂鬱そうにぼそりと呟いた。だがその言葉に、ウルリケはきっぱりとした否定を返した。
「いえ、現在通ってらっしゃる旦那様のお弟子様たちには、そのような不届き者はおりません。自分を律することができる、立派な方々です」
ヒルデガルトの表情がパッと和らいだ。
「あら、それならそんなに警戒をしなくても――」
「甘い! 砂糖水より甘いですお嬢様!」
再びウルリケの顔面がヒルデガルトに迫った。その目は血走り、ガンギマリである。
「どんなに己を律していようと、年頃の男性が狼である本質は変わりません。ふとしたきっかけで自制心が負けた瞬間、彼らはケダモノとなります。若気の至り、という言葉もございます。相手に悪戯に我慢を強いる、そのような心の負担を背負わせないためにも、お嬢様自身も己を律して適切な距離を心がけてください」
ウルリケの迫力に押されつつも、ヒルデガルトはなんとかもう一度、その肩を押しのけた。
「わかりました! わたくしも精一杯気を付けますので! ですから少し離れてください!」
最近のウルリケは、まるで妹に接する姉のようだった。傍から見てもヒルデガルトに対し、肉親の情に近いものを抱いているのが解った。
ある種微笑ましくすらあった――その情愛が、やや行き過ぎたものだとしても。
(最初は厭うことこそなかったけれど、職務に忠実な侍女、という感じだったのに……いつから変わったのかしら?)
おそらく、ヒルデガルトの常日頃、限界以上に研鑽を続ける姿勢に心を打たれ、心酔してしまったのだろう。
今のウルリケはヒルデガルトに仕えることに誇りを持っている様子さえ見せた。
そのウルリケがヒルデガルトに与える想いは、慈しみに溢れていた。
人に慈しまれている実感は、心を温かくしてくれる。
孤児のヒルデガルトにそれを与えてくれるのは、院長だけだった。
孤児院は子供たちが多い。いくら慈愛に溢れる院長でも、一人で全ての子供たちに慈しみを振り分ければ、一人頭のそれは目減りして感じてしまうものだ。
子供の”もっと自分を見て欲しい”という思いを否定することは、誰にもできない。それは我儘とも言えるが、孤児である彼女たちにとって、切実な願いでもあった。
だが今、ヒルデガルト一人に対して降り注ぐように周囲から慈しみを与えられているのだ。
彼女は改めて、それを噛み締めていた。
「ありがとう、ウルリケ」
ヒルデガルトが心からの微笑みでお礼を述べると、ウルリケはハッと我に返り、恭しくお辞儀を返して取り繕った。
「これも、私の職務ですので」
慈しみに飢えていたヒルデガルトが、そんなウルリケに思わず抱き着いてしまっても、仕方がないことだろう。
****
午後の魔術実習の時間――ついにその時が来た。
「シュルマン伯爵令息がお見えになられます」
「ああ、わかった。こちらに招いてくれ」
客人の到来を告げた侍従は、ヴォルフガングの返事を受けて辞去していった。
「……どういう方ですの?」
鍛錬の手を止め、ヒルデガルトがヴォルフガングに質問を投げかけた。
「一言で言うなら、魔術の天才、といったところだね。彼も特等級の魔力の持ち主で、魔術を操るセンスも抜群だ。お前が来るまでは、私を抜き去るのは彼だけだろう、と思っていたぐらいだよ」
つまり国内に居る特等級の魔力保持者、残る最後の一人である。
ヴォルフガングの評価はこれ以上ないほど高いものだった。彼が天才と断言するのは、彼、ジュリアス・シュルマン伯爵令息ぐらいだろう。
それが同世代の男子なのだ。ヒルデガルトは、やや気後れした気持ちになっていた。
「そう……凄い方なのね。同い年なのにそんなに評価されているなんて」
ヴォルフガングは意外な顔をして「私はお前を同じくらい評価しているんだよ?」と答えた。
だがヒルデガルトはゆっくりと首を横に振った。
「私の力は、この左目の恩恵に拠るところが大きいと思うのです。でも、シュルマン伯爵令息は精霊眼をお持ちではないのでしょう?」
ヒルデガルトの精霊眼は通常目に見ることができない魔力を見ることができた。そのアドバンテージはとても大きなものだと言える。
ヴォルフガングもそれを認め、ゆっくりと頷いた。
「そうだね。彼は精霊眼を持っていない。持って生まれた魔力と弛まぬ研鑽を積み重ねてきた子だ――ただ、ちょっとプライドが高いところがあってね。そこが直れば、さらに伸びると思うのだが」
ヒルデガルトは小首を傾げた。
己の磨き上げた実力に矜持を持つのは、決して悪いことではないだろう。彼女はそう考えている。
だがそれがもたらす弊害にまで、考えが及ばないようだった。
「まぁ、会ってみればわかるさ」
ははは、と楽しそうにヴォルフガングは笑っていた。
ヒルデガルトは手元に意識を戻し、鍛錬を再開した。
****
「ヴォルフガング先生、お久しぶりです」
侍従に連れられて庭にやってきたのは、ヒルデガルトと同い年くらいの青年だった。
だが背丈は彼女よりやや小さい。青年というより、少年という印象が強かった。
モスグリーンの髪の毛を丸くカットした頭部も、少年らしいシルエットだ。
手に持った長杖と身にまとったグラスグリーンの長衣は、まさに魔術師然といったところだ。
「一か月ぶりだねジュリアス。私の都合で講義を休止してしまって済まなかった」
「いえ、自習に努めていましたから、このぐらい大した問題ではありません」
目を瞑り、静かに頭を振るその落ち着いた振る舞いは、見た目と反してとても大人っぽく見えた。
ちらり、とヒルデガルトに彼の視線が投げかけられた。
それにヴォルフガングが気づき、言葉をかけた。
「ああ、挨拶がまだだったね。ヒルダ、ご挨拶を」
ヒルデガルトは立ちあがり、淑女の礼を取った。
「ヒルデガルト・フォン・ファルケンシュタインと申します。同門の徒として、これからよろしくお願いいたします」
だが彼女を見る彼の表情は、仏頂面とも言えるものだ。
その目は、彼女が鍛錬を行っていた道具――砂時計を見ているようだった。
「……話には聞いています。噂通りの精霊眼、それも片目、ですか。見たところ、初歩の魔力鍛錬の最中のようですね。精霊眼とやらも大したことはなさそうだ」
(……うーむ、なるほど。これはプライドが高いというより、尊大というべきじゃないかな)
彼が見下ろした先にある砂時計は、魔力に乏しいものが魔力鍛錬に用いる道具だ。それを見て、彼女の魔力量を推定したのだろう。
己が認める価値など持たぬ者。ヒルデガルトを、そう断定した様だった。
その様子を見て、予想通りとばかりにヴォルフガングが笑った。
「はっはっは! 君は相変わらずだな! ……先月出した課題は、できるようになったんだね?」
ヴォルフガングが、”できて当然”というようにジュリアスに確認を取った。
それにジュリアスも自信満々に頷いて返す。
「もちろんです。早速お見せしましょう」
それを受けてヴォルフガングは頷き、パチリと指を鳴らした――同時に、庭先に二体の土人形が生まれる。
大きさは成人男性くらいだろう。
一体がもう一体を庇う様に立ち塞がっていた。
ジュリアスがそれに対峙する。両者の間は五メートルといったところだ。
ジュリアスが長杖を振るうと、杖の先に炎が生まれ、くるくると杖を回すたびに螺旋を描いていく――頭上まで持ち上げた長杖が振り下ろされた時、長杖から大量の炎が迸り、土人形二体を飲み込んだ。
――炎が収まると、背後にいた土人形だけが破壊され、手前に居た土人形は無傷で立っていた。
ジュリアスがニヤリと笑い、確認を取る。
「……どうでしょうか」
おそらく、「人質を盾にしたターゲットのみを攻撃する」という状況設定なのだろう。
人質役の土人形を破壊することなく、ターゲットを破壊する。そういう課題だ。
ヒルデガルトは感心したように拍手をしていた。
だが、ヴォルフガングは渋い顔をしている。
「だめだね。失格だ」
ヒルデガルトの拍手で「当然だろう?」と得意気だったジュリアスの顔は、ヴォルフガングの声で驚愕に彩られた。
「そんな! 課題通り、背後の土人形だけを破壊しました! 何がいけなかったのですか!」
納得のできなかったジュリアスは叫んだ。
ヴォルフガングは無言で残った土人形に近づいていき、こつんと拳で土人形を叩いた――土人形は、ボロボロと崩れ落ちていった。どうやら泥人形だったらしい。
さっきの炎は手前の泥人形も炙ってしまい、すっかり干上がってしまったのだろう。
「これが人間なら、大火傷で死んでいるね」
その指摘に、ジュリアスは悔しそうに唇を噛み締めていた。
そのような内容は課題に含まれていなかった。それに納得がいかない様子だった。だが確かに、人間であれば手前の人間も死んでいたのは事実だ。
ヒルデガルトも、手前の土人形を大きく迂回して炎を操るジュリアスの手腕は見事なものだと感心していた。
ヴォルフガングの指摘の厳しさに、不満を抱いていた。
「ヒルダ」
「はい! ……なんでしょうか?」
ヴォルフガングに急に呼ばれ、ヒルデガルトは我に返った。
何故呼ばれたのか理由が解らず、小首を傾げている。
「お前もやってみなさい。彼と同じように火炎を使ってね」
ヒルデガルトは渋々、ヴォルフガングの指示に従おうと確認を取る。
「背後の泥人形だけを破壊すればよいのですよね?」
ヴォルフガングはそれに頷き、再び指を鳴らし泥人形を二体呼び出してその場を離れた。
ヒルデガルトと泥人形の距離は五メートル以上ある。
これは彼女でもなかなか難しい魔力制御だった。
しばらくの間、彼女は頭の中で魔力制御をシミュレートして繰り返していく。
「ヒルダ?」
「あ、はい。――ではいきます!」
意を決したヒルデガルトが手の中に火を生み出し、その火にフッと息を吹きかけた。
火は巨大な炎の奔流へと変わり、二体の泥人形へまっすぐ向かい、瞬く間に飲み込んだ。
「馬鹿かお前は。二体とも破壊してどうするんだ」
ジュリアスが呆れて背後からヒルデガルトを罵倒した。
明らかに失敗――ジュリアスの目にはそう見えたのだ。
だが炎が収まると、そこには泥人形が一体だけ、立っていた。
ジュリアスは「なっ?!」と驚きの声を上げた――あり得ない。そう思ったのだろう。
ヴォルフガングが泥人形に近寄っていき、その胸を叩く。
トス、と鈍い音はしたが、崩れ落ちる様子はなかった。
ヴォルフガングは満足そうに頷いた。
「――うん、水分はまったく蒸発していないね。合格」
「ありがとうございます」
ヒルデガルトはヴォルフガングにお辞儀をした。
「……どうやった?」
ジュリアスの振り絞るような声に、ヒルデガルトが振り向いた。
その目はヒルデガルトを厳しく睨み付けていた。
「お前の炎は、間違いなく二体とも巻き込んでいた。何故、手前の泥人形が無事なんだ! 何をした!」
そのジュリアスの剣幕に、ヒルデガルトは困惑して応える。
「えっと、見ていた通りなんですけど……ってそうか、見えないのか」
ジュリアスは精霊眼ではない。魔力の流れを見ることなどできないのだ――そのことに、ヒルデガルトはようやく思い至った。
(じゃあ口で説明しなきゃ伝わらないよね)
「えっとね。手前の泥人形を避けるように炎を操っただけ、ですよ?」
――ヒルデガルトは致命的に説明下手だった。いや、まだ説明することに慣れていないだけだろう。だがそれがジュリアスの神経を逆なでた。
「ふざけるな! それだけならば手前の泥人形は火に炙られるはずだ! 何故結果が違う!」
激高するジュリアスをどうやって納得させるか、ヒルデガルトは必死に考え、一つの結論を出した。
(うーん、これは論より証拠だな)
言ってわからぬなら体験するのが手っ取り早い。
「ごめんなさい!」
そういってヒルデガルトは再び火を生み出すと、ジュリアスに向かって火を吹きかけた。
不意を打たれたジュリアスは、まともに炎の奔流を浴びていた。
炎はジュリアスを完全に飲み込んだ後、しばらくして消えた。残されていたのは、呆然と佇む無傷のジュリアスだった。
おどおどとジュリアスに近づきつつ、ヒルデガルトは問うた。
「今ので分かったかな? どうかな?」
ジュリアスは応えなかった。拳を固く握り、肩を震わせていた。
そしてようやく絞り出すように声を出した。
「……火の発する熱すら迂回させた、というのか」
ジュリアスは、正解を言い当てていた。
ヒルデガルトは「我が意を得たり!」とばかりに喜び、ジュリアスの背中を叩いた。
「そのとーり! いやーようやく伝わってよかったわ!――お父様、もういいかしら?」
ヴォルフガングが頷いたので、ヒルデガルトは砂時計の元へ戻ろうと歩き出した――その背後からぼそりと呟いたジュリアスの声が彼女の耳に届いた。
「あれだけの火炎の奔流の、すべての熱を制御して見せた、というのか」
ジュリアスに問われたと思ったヒルデガルトは、顔だけ振り返り、笑って返す。
「そうだよ? でも、ジュリアス様も、あれくらいできるでしょう?」
”あの程度、できて当たり前でしょう?”。そう彼女は断言した。
その無邪気な笑顔に、ジュリアスは悔しそうに言葉に詰まった。
それを見たヴォルフガングは大きく笑いだしてしまった。
その二人の様子が意外だったヒルデガルトは、思わず声をかけてしまう。
「えーと、お父様?」
「はははは! いやなに、我が娘ながら、随分と鋭角に抉っていくと思ってね――ジュリアスはね。そこまで細かい魔力制御を得意としないんだ。いや、ジュリアスだけじゃない。魔力が強い者ほど、細かい制御がないがしろにされがちだ。今回の課題はそれを克服するためのものだったんだが、そこまで理解していなかったようだね?」
ヴォルフガングのジュリアスを試すような問いかけは、彼のプライドをかなり傷つけたらしい。
指が白くなるほどきつく拳を握ってしまっている。
ここにきて、ようやく課題の本質を知らされたのだ。それを理解していなかったことを思い知らされていた。
その克服するべき課題を、”己が認める価値無し”と断定したヒルデガルトが、さも当然のようにこなして見せたのだ。
天才のプライドなど、粉々に砕け散っていた。
その様子が哀れで、ヒルデガルトが思わずジュリアスを庇う。
「もうお父様! ジュリアス様の、炎の奔流を迂回させる技も見事だったじゃありませんか。少しはお褒めになってもよろしいのではなくって?」
(私、同じことをしろ、と言われてもできないし)
「お前があれをできないのは、する必要がなく練習していないからだよ。そこがジュリアスと違うところだ」
(……お父様、心を読むのはやめてくれないかな?)
ヴォルフガングは相手の心理を読むことを得意とする。特にヒルデガルトのように表情に現れやすい人間の心理は読みやすく、よく心を読まれて遊ばれていた。
ヴォルフガングがジュリアスを見据え、やや厳しい顔をして問う。
「ジュリアス、もう一つ厳しいことを言えば、娘の魔力は君よりずっと強い。その上で、魔力制御の質は娘の方が圧倒的に上だ。この違いは、何故だと思う?」
「……わかりません」
血が出るほど唇をかみしめながら、ジュリアスが絞り出すように答えた。
ヴォルフガングが静かに応える。
「魔術において、もっとも大事なことは魔力を意のままに操ることだ。基本中の基本だが、これは深淵に通ずる奥義ともいえる。それを直観で理解しているのが娘で、疎かにしていたのが君だ」
何も言えなくなったジュリアスは、ただ地面を睨みつけていた。
魔術の本質でヒルデガルトに遠く及んでいない、と宣告されたのだ。
魔術師としてのプライドまでもが、跡形もなく砕け散っていた。
(うーん、これ以上かけられる言葉もないし、かけたところで余計惨めになるだけよね……)
ヒルデガルトは静かに、砂時計の元へ戻って魔力鍛錬を再開した。




