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第二次日露戦争  作者: 畠山健一
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普通の国家の自衛戦争5

「普通の国家」への到達ステージ


 戦後ロシアは50回近く日本の領空を侵犯している。そのうちわずか1回だけ警告射撃を受けた。

 トルコは2015年、領空を侵犯したロシア軍機を撃墜した。しかし地域紛争や戦争に拡大することはなかった。

 このことをひとつとっても普通の国家と、そうでない国家との差を如実に物語っている。

 世界の中の日本として、初めて国家の設計図を描いたのは、明治初期の富国強兵を中心とした政策であり、列強に肩を並べる程に強力に推し進められた。

 その成果は日清・日露戦争の勝利で確認される。こうして普通の国家として認められた日本の中心には軍部があった。

 ところがその軍部は第二次世界大戦で全てを失わせた。「一億玉砕」を叫び、民間人を含む膨大な犠牲を払わせた上、戦犯国の汚名とともに惨めな敗北に終わらせた。

 ひどい目にあった国民は、自分たちは軍部の横暴による被害者だと思った。戦後「軍隊」はタブー視され、普通の国家を語る物は軍国主義者として非難された。

 アメリカの要請で発足した警察予備隊、後の自衛隊は、長きにわたり、肩身の狭い思いをすることになる。

 やがて世代交代と国際情勢の変化により、国民の意識も大きく変わった。

 北朝鮮のミサイルの脅威、拡大を続ける中国の軍事力と覇権主義、そしてロシアのウクライナ侵攻という現実は、普通の国家を目指す勢力を勢いづかせていた。

 この度の偶発的な事故を通じて、その変化を確認することができたが、完全なものにする為には、本当の「力」を備えなくてはならない。

 日本は四方を海に囲まれており、海と空の守りは絶対条件になる。

 日露戦争の主役は戦艦だった。太平洋戦争の主役は航空機及び空母に譲られた。

 最近の情勢はどうかというと、航空機の優位性は失われつつある。圧倒的な航空兵力をもつロシアが、ウクライナで制空権を全く確保できていない。最新のステルス戦闘機も地対空ミサイルの射程圏に近づくことはできなかった。

 ロシアのミサイル巡洋艦が対艦ミサイルで簡単に撃沈されたことは記憶に新しい。

 従って、日本が持つべき優位な戦力は、システム化された対空・対艦ミサイルを装備し、対潜能力を備えるイージス艦を中心とした駆逐艦クラスの艦隊で、大型艦は必要としない。駆逐艦でも多数あれば十分な打撃力を持ち、空母や巡洋艦より費用対効果が高く、より広範囲の海域を支配できる。

 実は海自はこの点において相当な域に達しており、アメリカの助けがなくとも、ロシアに十分対抗できる実力を持っている。

 CIAが日本にロシアとの開戦をそそのかしたのも、根拠あってのことだった。しかしアメリカはロシアとの戦いで日米安保条約の適用は考えていなかった。中国の介入を阻止するためと、ロシアが核の切り札を行使させないため、表向きはあくまで日露で片を付けることを望んでいた。

 それは1905年の日露戦争における英国の立場に似ていた。英国は表には出なかったものの裏では日本を支援し、ロシアの足を引っ張り、露仏同盟に基づくフランスの介入を阻止した。

 日英同盟は20年に渡って続き、日本は列強五大国の一員としての地位を確立している。

 日露戦争から117年後、再び日露間で緊張が高まっているが、択捉島沖に発生した事件からの一連の出来事は、周到に準備された計画に基づき、計算されたものだった。

「しらぬい」救助に5隻の護衛艦が向かい、ロシア太平洋艦隊の残りも同海域に向かっている。

 ほぼ軍事的にがら空きになったウラジオストクに向け、さらに海自の護衛艦5隻が港を塞ぐように展開し始める。

 慌てたロシアはヨーロッパに向かう太平洋艦隊の主力を呼び戻すだろう。海自は自分たちで選んだ海域でこの艦隊を待ち受ける。

 まさに1905年にバルチック艦隊を撃滅した日本海海戦の再現だった。


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