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第二次日露戦争  作者: 畠山健一
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普通の国家の自衛戦争3

護衛艦「しらぬい」被弾


 大遠征艦隊がマレー半島沖を通過し、インド洋へ達した頃、北方四島のひとつ、択捉島北西海域で事件は起こった。

「貴艦は我が国の領海を侵犯している。直ちに停船しなければ発砲する」

 ロシアのフリゲート艦2隻は無線で警告し、海自護衛艦「しらぬい」の行く手を阻んだ。単独航行の「しらぬい」は無線で応じた。

「ここは貴国の領海ではない。従って停船要求には応じられない」

 数分とたたないうちに、ロシア側の警告射撃が始まった。57ミリ砲弾が「しらぬい」前方に着弾し、水しぶきを上げた。

「しらぬい」は変針し、回避行動をとった。「しらぬい」艦橋では、艦長が双眼鏡越しにロシア艦艇の動きを観察している。

「1,200トンの旧式の奴だ。対艦ミサイルは積んでないが、魚雷発射管をもっている」

「しらぬい」は5,000トンあり、装備もロシア側を上回っている。しかしこの小型フリゲート艦2隻は猛然と射撃のペースを上げ、威嚇射撃から直接船体に照準を合わせ始めた。

「被弾したら我々は必要な防衛措置をとる。最も警戒すべきは択捉島からの対艦ミサイル攻撃だが、ヨーロッパへ運び出されたらしい。米軍の情報が正しければだが」

 その時、艦首で爆発が起こった。57ミリ砲が命中し、小規模ながら火災が発生した。

「被弾しました!艦長、反撃しますか?」

「まだだ。豆鉄砲一発では話にならん。記録は取っているな?」

 さらに二発が命中した。火災は広がり、黒煙が激しく立ち込めた。

「派手な映像が撮れるまで我慢だ」

「もう十分です!このままでは損害が・・・」

 部下の心配をよそに、艦長は余裕の笑みを浮かべている。

「私は正気を失った訳じゃない。これは特別作戦の一部だ。いずれ説明する」

 しかし双眼鏡を覗く艦長の顔から余裕は消えた。

「くそ!奴ら魚雷を使うつもりだ。対魚雷デコイ用意!SSM(対艦ミサイル)用意!」

 艦長は一瞬間をおいて、艦橋の部下たちを見渡した。

「諸君、これから我々は重要な一歩を踏み出すことになる。正に歴史的な一歩だ」

 その言葉通り、艦長は自衛隊創設以来の重大な決断をした。やられる前にやる、明快な正当防衛の下地が整ったのだ。

「SSM発射!」

 二基の発射管から、二隻のロシア艦艇に向けて対艦ミサイルが発射された。

 うなりを上げ、二発のミサイルはそれぞれの艦艇に吸い込まれるように命中した。一隻は船首の側面に大穴を開け、大量の浸水で大きく傾き、沈んでいった。

 残る一隻に命中したミサイルは、船体中央の構造物を破壊し、戦闘不能に陥れた。動力は半減し、なんとか自力航行するのが精一杯だった。

 その一隻は、沈没した船の生存者を拾い集め、やがてのろのろと退却していった。

 とりあえず、「しらぬい」の危機は去った。

 しかし、この大事件はこれで終わりではなかった。「しらぬい」は所属する護衛艦隊に向けて発信した。

「本艦は機関に重大な損傷あり、自力航行不可能。救助求む」

 この通信はロシア側へも傍受されていた。


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