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第二次日露戦争  作者: 畠山健一
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普通の国家の自衛戦争2

大遠征艦隊西へ


 CIAが予期した通り、ロシア太平洋艦隊に動きがあった。母港のウラジオストクは偵察衛星で監視されている。ミサイル巡洋艦や駆逐艦が慌ただしく出港していくのが確認された。

 ロシア艦艇は頻繁に日本周辺海域に現れ、露骨な牽制を繰り返した。日米の「分析屋」たちは、それを主目的から目をそらすためのフェイントと結論付けた。

 主目的とは、ウクライナとの戦いの支援であり、黒海の制海権を握るためだった。移動に一か月近くかかるが、戦争の長期化は確実であり、前線のロシア軍は苦戦を強いられている。

 ロシア海軍にはもうひとつ、ヨーロッパを拠点とする有力な「北方艦隊」の存在があるが、この強力な艦隊は対NATO戦力として欠かせない。NATOは勢力を拡大するとともに結束を強め、ロシアを圧迫しつつある。

 ロシアにとって主戦場はあくまでヨーロッパであり、極東の有力な戦力を遊ばせておくのはもはや我慢ならないことだった。

 81年前、ヒトラーは300万の大軍でソ連に攻め入り、モスクワはナポレオン侵攻以来の危機に直面した。その時、モスクワを救ったのは極東のシベリア部隊だった。

 当時の日本はソ連に対抗するため、関東軍と呼ばれる強力な陸軍部隊を満州に配置し、ソ連との国境線でにらみを利かせていた。しかしソ連はスパイの報告で日本が戦う意思のないことを知っていた。実利のないソ連との戦いよりも、南方資源地帯を手中にする為、その行く手を阻むアメリカとの戦いを日本は決意していた。

 こうして極東の有力な戦力をヨーロッパへ転用し、ソ連はヒトラーに勝利した。

 81年後、極東に展開するロシア軍は、どの国から自国を守っているのか?

 基本的には国境を接する日本と、その背後にいるアメリカである。

 アメリカは世界一の強力な軍隊をもっているが、戦争に最も消極的な政権がこのところ続いている。

 日本?そこそこの軍隊らしきものは持っているが、アメリカの支援組織にすぎず、主体的に行動することはない。

 防衛費に相当の金をかけ、特に海上戦力は無視できないが、太平洋戦争以来、実戦経験はなく、国民世論も戦争は論外というほど否定的である。

 従って、ロシアにとって極東防衛の空白は危機になり得ず、少し脅しをかけておけばまず大丈夫だろう、それがロシア側の大方の見方だった。

 こうしてロシア太平洋艦隊は続々と、西方への大遠征に向かった。

 その艦艇数と遠征距離において、奇しくもそれは日露戦争のバルチック艦隊と同規模のものだった。

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