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第二次日露戦争  作者: 畠山健一
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普通の国家の自衛戦争1

 81年ぶりの機会


「極東海域において、最も神経を尖らせているのは他ならぬロシアです」

 海上自衛隊呉地方総監部の一室でひとりのアメリカ人が力説している。彼はアメリカ海軍の軍人として招かれていたが、CIAの要員であることは公然の秘密だった。

「ロシア太平洋艦隊の弱体化を悟られることを恐れているのです。中国海軍とまで手を組んで日本近海で演習をし、圧力をかけているように見えますが、その恐れの裏返しなのです」

「そうはいっても我々にとっては依然として脅威です。水上艦艇はもちろん、潜水艦や航空戦力に我々は太刀打ちできない」

 海自幕僚長は困惑の表情を浮かべて笑ったが、アメリカ人は真剣そのものだった。

「まもなくロシア太平洋艦隊の主力は、ヨーロッパへ向かいます。黒海艦隊と合流しウクライナを締め上げる為です」

 幕僚長はその意味を悟ったかのように表情を変えた。

「主力といいますと、航空機も含みますか?」

「我々はそう見ています。つまり・・・北方四島から樺太へ至るまで、あなた方を妨げるものが何も無くなるという意味です」

「我々に戦争を仕掛けろと?先に手を出すことは我々には出来ないんです。それに主力がいなくなったとしても、いくらかの戦力は残すでしょう。それに北方四島には有力なミサイル基地があります」

「先にロシアが手を出したとしたら?ロシアのミサイルは命中しないが、あなた方のミサイルは命中するとしたら?我々の協力でそれが可能になります」

「・・・うまくいったとしても、国際社会が納得するでしょうか?特に中国が黙っているとは思えません」

「中国には手出しさせません。それは我々の役目です」

「ではロシアが核攻撃に踏み切ったら?」

「日本へ核攻撃すれば、我々が核で反撃すると警告します。彼らも馬鹿ではない」

 そして幕僚長が反論する前に、遮るようにアメリカ人は立ち上がった。

「いいですか?ロシアは粉砕しなくてはならない巨悪の国家です。世界中がロシアの敗北を望んでいます。公然と他国を侵略し、民間人の命を奪い、世界の食糧危機やエネルギー危機を誘発させても全く平気でいる・・・粉砕しなくてはなりません。もし、あなた方が立ち上がるのであれば、世界中から強力な支持を得られるでしょう。たとえサハリンを力ずくで奪っても、エネルギー危機を救った英雄と見なされるでしょう」

 幕僚長は反論を諦めたように大きくため息をついた。

「我々が期待されるほどの力をもっていればよいのですが・・・」

「機会を利用すれば、強力な力を得られます。今がその時なのです。実に81年前の1941年に、その機会がありました。ドイツとソ連の戦争が始まり、極東のソ連軍がヨーロッパへ引き抜かれたときです。日本はその機会を放棄し、ソ連を攻めることなく、アメリカに戦いを挑んでしまった・・・悲劇の結末は周知の通りです。この81年ぶりの機会を逃してはなりません。これは世界の運命がかかっているのです」


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