表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

6話 ビッグシスター

カラオケ店でのアルバイトでヒデさんと同じシフトだが、謎の女が登場し、店を荒らして帰ってしまう。強烈な個性をもつ彼女は誰なのか。その後のヒデさんの様子もおかしい。

雲ひとつないよく晴れた日の夕方、ワイはシフトでカラオケ店に向かった。

この日はヒデさんと一緒だった。


「シンジ君、俺はボクシングジムに通ってるんだよ」

「すごいっすね。どちらにあるんですか?」

「このビルの2軒隣の地下だよ」

「へぇ、そこにあるなんて知りませんでした」

「体を鍛えるのが生きがいなんでね」

「なるほど、こないだ謎のドリンクを飲んでいたのもその為なんですね」」

「ああ、そうだ」


話をしていると見知らぬ女性が店に入ってきた。

「こんばんは」

「おお、きたか」

「ヒデさん、この方は?」

「妹のトモミだよ」

「よろしくでーす」

「え、ああ、シンジです。よろしくお願いします」


肌は色白く、白いTシャツでへそを出していて、短パンで健康的な感じでヒデときょうだいと言われると顔は似ていないが、そんな気がした。


「シンジさん、ハーバーシティは長いんですか」

「まだ来て1ヶ月です。トモミさんは?」

「ん〜2年くらいかな」

「すごいですね」

「せやね」

「え?」


「シンジ君、トモミはここに来る前は浪速で暮らしてたんだよ」

「そうなんですね」

「兄ちゃんからここのまかないマズいって聞いてな、シチューを作ってきたんや、シンジさんも食べてな」「え、いいんですか」

「もちろん」


トモミが袋から取り出した箱に鶏肉の入ったシチューをこしらえて、レンジで温めだした。


「チンすると温かくなって、美味しいから。あっ、そっちのチンとは違うで」

「え?」


「トモミ、せっかくだからシンジ君に抱いてもらえ」

「ん〜、ノーサンクスです!」

「……」


()()()()()()()()()()()()()()()()

チン(温め)が終わった。


「さ、どうぞ」

「ありがとうございます」

ヒデは勢いよくほおばって食べた。

「うまっ」

「うん、美味しいですね」

「せやろ」


「トモミは頭はおかしいが、料理は一品なんだよ」

「あんたに言われたくないわ!」

「なんだと!兄ちゃんに向かって」


差し入れを食べ終わると、トモミは嵐のように帰っていった。


「面白い方ですね」

「シンジくん、妹は、こっちに来てからインディアンの彼氏がいたんだけどね」

「へぇ」

「どうも宗教的な理由から、結婚を決めた人と初体験をするというのがあるらしかったのだが、ある日妹と関係を持ってしまった」

「マジすか?」

「それで当然結婚するものだとその彼氏は思っていたが、ほどなくして妹は彼氏をふってしまった」

「ええっ?」


「その後数ヶ月たって、たまたま共通の知人の老人が亡くなり、葬式に参列した時に彼氏をみかけたら、げっそり痩せて、頬もこけていて、まるで廃人のようになっていたらしい」

「ええ? そうなんですか?」

「ああ。変わり者だんだよ」



()()()()()()()()()()()()()()()


この日は平日だったが、21時くらいになり客が増えてきた。


「シンジくん、これ頼む」

「はっ、はい」

「それから部屋の片付けも」

「はい」


しばらくして部屋の片付けが終わると、波が穏やかになり、落ち着きを取り戻した。


「ヒデさん同じ曲が同時にリクエストされてビビりました」

「そう、たまにあるんだけど、前は3部屋からきた時あったよ」

「ええ? VCDって2枚で、そういう時はどうするんですか?」

「テキトーに違うの入れたことがあって、客はローカルの人なのに、チャイニーズの曲が流れてるぞ!って怒りの電話がかかってきたり」

「マジっすか?」


「ああ。あとチャイニーズの女どもはやかましいから、カップラーメンのオーダーが入った時は、沸騰したての一番熱いお湯を入れて、あわよくばやけどみたいになればいいのにといつも心がけてるよ」

「ええっ?」


「じゃあ、そろそろ片付けて、店を閉めようか」

「は、はい」


この日も愉快な1日が終わろうとしていた。

ワイは類は友を呼ぶという言葉を肌で実感することができる奇妙なエピソード。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ