3話 小さな巨人
異国の都市ハーバーシティのカラオケ店でのアルバイトに、コミュ障?の女子と同じシフトに。リーダーのヒデさんが雑な反応をし、忙しい週末の夜には、外国人セキュリティが治安維持に現れるが、ヒデさんはある方法で意気投合してしまう。この日も驚きの連続が。
この日は金曜日だった。
ワイはお店に着くと、ヒデさんの他にもう一人色白く痩せた女性スタッフがいた。
「はじめまして、シンジです。よろしくお願いします」
「あっ、チエミです。よろしくです」
するとヒデさんが声をかけてきた。
「チエミさんは印旛の出身だからシンジくんと近いね」
「いえいえ、昭島からはそんなに近くないです」
「へぇ、そうそうチエミさんはコミュ障なんだよ」
「はぁ?ヒデさん!バッカじゃないですか!」
しばらくするとヒデさんがまたチエミに話しかけた。
「そういえば、チエミさんはどんな漫画がスキなんだっけ?」
「少年モノですかね。珍探偵ヨコタとか」
「へ〜」
「興味がないなら聞かないでください!」
「なんだか今日は殺気立ってるねぇ。大丈夫?」
「生理中なだけですっ!」
「ふ〜ん」
「もう、ムカっつく!!」
次第に客が増えてきた。
「シンジ君、急いで部屋片付けて」
「はいっ」
「チエミさんは電話でてくれる?」
「あっ、はい!」
するとスーツを着たガタイの大きな白人男性が店に入ってきた。
「ハロー」
「ハローッ!」
ヒデさんとがっちり握手した。
大男はヒデさんより20センチくらい高かった。
「ヒデさん、どなたですか?」
「彼はポートランド出身のセキュリティだよ。金曜の夜と土曜の夜は酔っ払いとかいて治安が悪くなるから店が雇っているんだ」
そういいながらヒデさんは謎のパウダーを容器に入れて、そこに水をいれて蓋をして、上下にシェークし、おもむろに飲み始めた。
「ふう」
「ヒデさん、なんですかそれ?」
「プロテインだよ」
「そうなんですね」
さらに本を開き、何やらセキュリテイの大男と話始めた。
本はプロレスの雑誌とわかった。
「……..イノキ、イエス」
「……..コバシ、オーマイガッ!」
何を話しているのかはよくわからないが、意気投合したのか二人共ニコニコしている。
雑誌の写真に指差したりしている。
「ヒデさんすごいですね」
「何がだい?」
「イングリッシュを話すのが速くてウェスタンと楽しく話せるなんて」
「ああ、そんなことか、シンジ君もじきにそうなるさ」
「なれますかね?」
「ああ、たぶんね」
本当かなぁ テキトーな気がしてならないな。
いろいろ盛りだくさんな1日が終了した。
ワイはヒデさんの奔放さに唖然とし、店をあとにするしかなかった。