1話 屈託のない笑顔
ハーバーシティに移住したワイ(シンジ)はアルバイトのインタビューを受け、採用される。
カラオケ2号店勤務となり、先輩の薩摩出身のヒデさんと出会う。
そこで待ち受けるものとは?
ワイ(シンジ)はハーバーシティという街で暮らすこととなり、スクールに行く傍らアルバイトを始めた。
サーティーンアベニューにあるカラオケ店で求人があるのを知り、インタビューを受けにきた。社長が話しかけてきた。
「こんにちは」
「こっ、こんにちは」
「えっと、シンジ君だね。レジュメ持ってきたかな?」
「はい。こちらになります」
社長はワイのレジュメをじっくり読むなり、
「君は元証券マンか。株の知識はカラオケには必要ないが、真面目そうだし、来週からきてくれるかい。まぁ頑張ってくれよ」
「は、はい。ありがとうございます」
「あっ、そうそう。働くのはここじゃなくて2号店だから。13アベニューにあるからね」
こうしてワイはカラオケ店で働くことになった。
サーティーンアベニューは官庁街にも近いので割と通りは落ち着いていた。
店に入ると、ワイよりも一つ上のヒデさんという男がいて、この日は二人でお店を担当することになった。
「今日からよろしく」
「あの、よろしくお願いします」
薩摩出身のヒデさんはこの街に3年くらい住んでいて、何でも知っていた。色が白く背はあまり高くないが筋肉質で、少しおっかいない顔だが、意外と優しく指導してくれた。
「お客がリモコンで曲を選んだら、その曲をこのVCDのリストから見つけて、ここに入れて、ONのスイッチを押すんだよ、わかったね」
「は、はい」
まさかの通信ではなく、手作業、マジっすか⁉
「最後の客が店を出たらこのバキュームをかけるんだよ。コイツはオレがロボ君と名付けたんだ」
「は、はい」
なんでロボ君なんだろ?
こうしてワイは一昔前、いや二昔前のカラオケの仕事を覚えるようになっていった。
この日は割と客が少ないようで、暇だった。なのでいろいろ話ができた。
「ヒデさん、お店のお客はやっぱジャパニーズが多いんですかね?」
「いや、7割チャイニーズで、2割ジャパニーズ、あとは地元やコリアンとかその他かな」
「そうなんですね」
「ここはチャイニーズの移民が多いのと、カラオケはジャパン発祥だけど、イーストアジアの人に知名度が高い、ウェスタンにはあまり知られていなんだよ」
「なるほど〜」
「なもんで、もともとは別の目的で建てられたところだから壁も防音ないから、うるさくてしょうがない」「そ、そうなんですね」
しばらくすると、見知らぬ人が入ってきた。
「お疲れ様でーす。おっ、新入りですか」
「シンジです。よろしくお願いします」
「ヤナギです。よろしく」
「まかないは本店で作られたものを届けに来るんだよ」
ヒデさんが言った。
「そうなんですね。それはありがたいです」
「レシピどおりに作っているはずなんだけど美味しくないから」
「そ、そうなんですね」
「不思議なんだよね」
「ナラさんのシフトの時なんか特にまずいっすよね」
「ホントホント」
なんだか、職場の雰囲気が緩さ全開だなぁ。
そうして深夜になり閉店が近づいてきた。
「さぁシンジ君、ロボ君で掃除してきて!」
「はい」
ワイは必死にロボ君で部屋をきれいにした。
「終わりました」
「おつかれさま。チャイニーズのグループなんか閉店といってもなかなか帰ってくれないから、わざとロボ君を閉店時間になったと同時に廊下で全開にかけると、部屋から”キャー”って悲鳴が聞こえてきて楽しいんだよ」「……」
ヒデさんが少年のような屈託のない笑顔で話した。
こうしてワイのサーティーンアベニューのバイト初日が終わったのだった。
カラオケ店2日目となり、尾張出身のコリアン顔で流浪の同い年の男、イナ君と一緒になる。
社長に敵対心を持っているが、そこで待ち受けるものとは?