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終わらぬ物語シリーズ

ラプラスの悪魔

作者: Bi₂O₃

 今日、俺は死ぬ。俺が見たものが正しければの話だが。




 ──所謂未来予知ってやつだ。小さい頃からよく見てた。俺達がガキの頃、俺の母ちゃんが車に轢かれたのを覚えてるか?最初に見た時はただの夢か、あるいはデジャブかなんかだと思ってたんだがな、あの日あの時、これは夢でもなんでもなく、これから起こる出来事を見てたんだって確信した。

 それからというもの、何度も何度も未来を見た。未来っつっても、数日後とか、早けりゃ1時間後に起こるようなことばっかりだったがな。人が死ぬようなもんまで見た。まあ正直、気分は良くなかったよ。なんせ、未来を予知したとして、一度としてその未来を変えることはできなかったんだからな。

 未来ってのは決まってんのかもしれねえな。たとえ俺みたいに未来を予知できるようなやつがいたとして、それすらも決まった未来なのかもしれねえ。


 ──んで、ああそうか、今日死ぬってやつな。まあ簡単に言っちまえば、俺が死ぬ姿が見えたんだよ。さっき言った未来予知ってやつで。そう確か、トラックかなんかに撥ね飛ばされて、身体中ぐっちゃぐちゃになって死んだ。

 なんで今日かって?そりゃおめえ、俺がいつも日付けもわかる腕時計付けてんの知ってんだろ?予知で見た腕時計は、今日の9時くらいを差してたな。空は暗かったし、今夜だ。

 外に出なけりゃいいって?そりゃそうなんだが、さっきも言った通り、俺は未来を変えたことなんざ一度もねえ。どうせ今度も変えられねえよ。


 それでだな、お前に頼みたいことがあんだよ。俺には娘がいる。あんたも知っての通りの一般常識だ。だから、あんたにあいつを頼みたい。言っとくが変な気は起こすなよ?そんときは呪い殺すからな。

 …冗談だよ。そんな顔すんなって。

 ま、あんたに頼んでんのも、それなりに信用してるからだ。それに、娘には会ったことあるだろ?娘もあんたの事覚えてるはずだ。見ず知らずの奴に保護されるなんて、それこそあいつが可哀想だろ?

 今日の夜、あんたのところに娘を届けに行く。俺が死ぬ前にな。家で1人、帰ってこない親を待ち続けるなんて、まだ小さいあいつには辛すぎる。今夜、いつもの場所で待ち合わせだ。約束だぜ?







































 ───××月××日、あいつはあいつの予知通り、トラックに撥ねられて死んだ。俺との待ち合わせ場所に行く時のことだった。あいつの娘も死んだ。手を繋いで信号を渡っていた最中に、一緒に轢かれたらしい。

 あいつの言うことが正しいのであれば、未来は決まっているのかもしれない。俺がこの記録を書いているのも、きっと決まった未来なのだろう。たとえ俺達がどんなに足掻いても、たとえどれだけ力を合わせようと、どんな未来が来ることも決まっているのかもしれない。


 ──()()()()()()()という概念がある。あらゆる物理現象を理解しており、それによって未来は決まっているため、これから起こる出来事を全て予知できるというものだ。あいつは、ラプラスの悪魔だったのかもしれない。

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