~プロローグ~
ウィステリア王国――。
そこは、100万㎢を超える国土と、神秘的な湖と豊かな森に囲まれ、美しい自然・フィヨルドは絶景である。王都・グラズヘイム大宮殿、ヴィーンゴルヴの時計台もまた国を代表した圧巻の名所であるが、まだまだこの国の魅力は計り知れない。南の方で国と国が争っていても介入せず、また侵略を好まず、侵略を許さない。まだまだ謎に包まれた国である。諸外国は噂をする。神々に守られた国、魔法がまだ生きている――と。
遥か昔、人間は神々の他、エルフやドワーフに守られながら生きていた。『樹』も人間の成長を見守っていた。しかしその楽園は永くは続かなかった。人々の住む楽園の外で神々の争いがあった。そしてそれは人々の楽園までをも滅ぼしてしまった。それを後世の人間はラグナロクと呼ぶ。再び人間が地上に発展するまでの間、ラグナロクによって国の中心にある『樹』は孤独になった。エルフやドワーフにも応えなかった。待ちに待った人間が誕生して『樹』は人間に知性を与えた。人間は発展するにつれて、邪な感情を持つようになった。エルフやドワーフを利用し、力の弱い彼らを無慈悲に扱うこともあった。そんな人間の前からエルフやドワーフは姿を消した。それでも樹は彼らを見守っている。
その樹の名を、『世界樹』と呼ぶ。世界樹はヴァーヴァラに或る。ヴァーヴァラは森の深くにあって、そこは選ばれた人間しか入ることを許されないという、幻の杜の都――。
ウィステリア王国建国記より一部抜粋。