怪しい場所
お読みいただきありがとうございます。
テイマーじゃない人が魔物を集めているか…。
何のために…。商売か?でも買う人はいるのか?
賢い魔物はそれぞれの価値観で行動するだろうし、
そうじゃない魔物を育てるのはテイマーじゃないと難しいからな。
あまり需要がないはずなんだがな…
…うん、考えても分からん。
実際に動いて探すか…街か、森か…
このまま森を探すか。
泉から街に向かって帰るが、いつもの道ではなく、少し森の中を散歩して帰る。
散歩と言っても駆け足に近い速度であるが、俺の身体能力を持ってすれば、簡単だ。森の中を颯爽と駆け抜ける。
だからといって、森の異変には気づかないが。
なにもないなぁ。仕方ないか。
街まで帰ってきてしまった。
この依頼は時間がかかりそうだ。
外も暗くなり始めてきた。レオンの捜索報告はまた後日だな。
今日は疲れたし休むか。
ギルドの裏口に帰っていった。
翌朝、いつもの通りに宿屋の女の子に起こされ、ご飯を食べてギルドに報告がてら情報を得ようとしたが、怪しい噂も魔物を捕まえる依頼もない。
仕方ない。情報も何もないから、あそこに行ってみるか…
街から2日ほど離れたところに、朽ちた砦がある。
昔はここから魔物の氾濫が起きないか動向を監視していたのだが、
今では使われなくなり、砦も壊された。
しかし、元々砦が築かれた場所だ。
地盤も安定しており、少し手を加えれば隠れ家に出来ないこともない。
以前にも盗賊が根城にしていたことがある。潰してやったがな。
…こいつらか?
いた。小高い丘にある朽ちた砦に怪しい集団が集まっている。
近くの森等から偵察を行うと、10人程度いるようだ。
盗賊と違うところは装備が整っていて、食べ物が充足しているところか。
…どうやら当たりっぽいな。
魔物を捕らえる檻が馬車の荷台にあるのが見える。何匹か捕まっているようだ。
魔物のうめき声がかすかに聞こえている。いつでも逃亡出来るようにしているな。
さて、どのように料理しますかね。
考えていると、さらに小さな檻が馬車に載せられている。
おいおい…それはダメだろう…
子供だ。立ち上がれないように無理やり押し込まれた小さな檻の中で、
色の白い子供が1人、檻の中で震えている。
あ~ぁ。ギルティ。これはギルティだわ。
隠れていたが、もう隠れるのもアホらしい。
堂々と出ていってやろう。
「ん?…犬か?いや、オオカミか?オオカミが1匹こっちに向かってるぞ。
弓あるか?」
「お前、弓当てられるのかよ?」
「あれだけゆっくり歩いてたら俺にでも当てられるよ。」
ギリ…ギリギリ……ギリ…
ビュン。
サッ
「ハハ。避けられてるじゃねぇか!ヘタクソ。」
「うるせぇ!オオカミヤロー避けやがって。」
避けるに決まってるだろ。まぁ、嘗められてるなら好都合。
いっちょ、やるか。
すぅ……
「ガァァァァ!!」
感情と共に吠えた。
空気が大きく震動して、先程までの弛緩した空気が一気に引き締まるような
圧を感じると同時に俺は走り出す。
見張りは声に動揺して焦っている。馬もパニックを起こしてる。
その隙に俺は見張りに近づき、一閃。二人目の見張りにも一閃。
鍛えられた爪は見張りの命を刈り取る。
そのまま足を止めずに、馬車に向かう。馬と荷台を止めている部分を破壊。
俺から逃げるように馬が走り去っていく。
これで荷台の檻を簡単には動かせなくなったな。
その間に砦跡にいた集団は弓を構えたり、こちらを包囲しようとゆっくりと広がりながら近づいてくる。
「見張りの二人は!?」
「やられました!」「クソッ!」
「気を抜くなよ!しっかり狙え!」
ヒュン!…ビュン!
タタッ、サッ。タタッ!サッ!
時間差で打ってくる弓矢を避ける。避ける。避けまくる。
「チィッ!化け物かこいつは!」
焦れたのか、弓矢に合わせるように2人が槍で攻撃を仕掛けてきた。
やっとか。待ってたよ。
ブゥン。
槍を紙一重で避けると、そのまま近づき、喉元に一閃。
2つ目の槍は掻い潜って足元に一閃。これで1人は亡くなり、
もう1人は戦線離脱だ。
「何だこいつは…」
「ええい!包囲して叩いてしまえ!」
前から、横から、後ろから。
包囲して攻撃を仕掛けてくる。避けれねえかも。
でも残念。俺は全身にチカラを入れる。
ガキン!
「何だと!?刃物が通らないだと!!」
「あ、こ、コイツ…鎧姿のオオカミ…城壁だ!」
どうも。城壁です。
鍛えられた俺の毛並みは、魔力を込めると日本の甲冑のようなデザインに変身する。なんちゃってヨーロッパで日本風の鎧兜。違和感はあるが、仕方ない。鎧って言えばこれしか思い浮かばなかったんだよ。
変身すると、城壁って呼ばれるほどの硬さになり、刃物や弓矢を防いでくれる。
驚いてるところすみませんよ。
クルリ。
その場で1回転。
ついでにもう1回転。
身体に付いた血を振り払うのに、さらに1回転。
回りは静かになった。
さてと。理由は後から誰かが調べるだろうし、とりあえずは捕まった魔物達を見に行くか。
荷台に近づいていく。
檻の中には、ゴブリン2頭とホブゴブリンか?が1頭。ウルフの毛皮が10枚。干し肉も置いてある。後は小さい檻の子供だ。
大きい檻を壊してゴブリン達を逃がす。さっきの威嚇が聞いているのか、街とは反対方向へと逃げ出していく。
問題はコイツだよな…
人間の子供だと思っていたが、よくよく見ると、角が生えている。
角が生える種族は限られているが…
檻に入ったままだとよく分からない。
檻を壊し、子供の状態を確かめる。アザや打撲の後はあるものの、
骨折等の重大なケガはなさそうだ。
「うぅ…ここは…」
子供は目が覚めたようだ。
「がぅがぅ(おい、気がついたか?)。」
『…』
俺と目が合う。子供の瞳に写った顔はオオカミだ。
…こりゃ泣き出したりして、大変かもな…。
街までどうやって連れて帰るかだな。
子供はゆっくりと俺に近づき、俺を掴んでこう言った。
『…パパ?』
「…がぅぅう(はい~?)。」
後いくつか話を進めた後、回想編を書いていきたいと思います。
お読みいただきありがとうございます。