~俺は今日も街を守る~
初投稿となります。
まだまだ不慣れで稚拙な文章です。
念のためR-15にしています。
がんばって読みやすい文章を書けるように、勉強していきます。
良かったら読んでみてください。
「スノー!離れて!」
女の声に反応して、俺は目の前のオークを威嚇してから距離をとる。
オークが身構えた次の瞬間、魔法陣がオークの足元に発生し、オークを隠すように火柱が上がる。しばらくして火柱が消えるとそこにはオークの姿はなく、オークが落としたであろうアイテムが燃えることなく地面に落ちているのが確認できたので、戦いが終わった。
「ありがとね、スノー。」
女はほっとした顔をして、俺の頭をなでたあと、落ちているアイテムを拾い、町へと向けて歩き出す。俺は女の歩調に合わせてついて行く。それからは魔物に会うこともなく町へたどり着いた。門番からは「おかえり。」と笑顔で声をかけてもらえる。町の中に入ると「スノーおかえり。」「おっ!スノー元気か?」「スノー!これ余りものの果物だけどやるよ。」と町の人から声をかけてもらえる。俺はその都度、歩きながら頭を下げてお礼をする。そして女と一緒にギルドへと帰るのだ。
ギィィ
ギルドのドアを女が開けると、飲んだくれの男達がこちらをみる。「げっ!」と声をあげていたので、賭けに負けたのだろう。ざまぁみろだ。見下した目でみてやる。女がカウンターへ行き、クエストの報告を行っている。これで今日の任務は終了だ。ギルドのカウンター嬢からも「スノー、お疲れ様」と笑顔で言われる。女は報告を終えたあと、ギルド内にある酒場へ行き、骨付き肉を持って俺の元に戻ってくる。「スノー、今日はありがとう。一人だったから不安だったけど、スノーのおかげで無事に戻ってこれたわ。これはお礼よ。」と言い、お礼を俺に渡してくる。俺は気にするなという思いを込めて
「がる。」
一声かけて、お礼の骨付き肉をくわえて外に行く。仕事終わりの肉は格別なのだ。俺はゆっくりと味わうためにギルドを出て、いつもの場所へと向かう。俺の定位置となっているギルドの裏口へと…。
これが俺が異世界に来てから手に入れた生活だ。今日もこれで一日が終わっていくんだ。
「おはよう。スノーちゃん!」朝から元気な声がギルドの裏口に響く。
「……がぅ。」とチラッと目を向けるだけで、けだるい返事をする。
「水置いとくからねぇ。」と、井戸の近くに置いている桶に水を入れてくれる。
声をかけてくれた女の子は、まだ動き出そうとしない俺の頭をしばらくなでては、ふふふと笑ったあと、2つの手桶に水を入れてギルドの隣にある宿屋の中へと戻っていく。いつもの光景だ。
のどが渇いているので、水の入った桶を覗き込む。そこには、白くつやつやした毛並みの精悍な顔つきの狼が水に映っている。すでに見慣れた顔だ。前世の顔なんかすでに忘れてしまった。
「ふん。」
一息吐くと俺は桶の中に顔を突っ込む。冷たい水で喉を潤し、頭と体を覚ましていく。濡れた頭を思いっきり振り、体を伸ばしていく。狼にストレッチがいるのかは、よく分からないが、体を動かす前の癖みたいなものだ。
「スノーちゃん。ご飯置いとくね~。」
ゴトッと、大量の肉とポテトが載った皿が準備された。仕込みの際に余った肉や大量に作った料理の一部を出してもらっている。ここの宿屋は料理が旨いと評判なのだ。俺も美味しそうな匂いにつられてここに入って来た一匹だ。お皿の料理をたいらげた俺は、手に入れたお金を空になった皿に入れている。美味しい料理へのお礼だ。最初は受け取ってもらえなかったが、何度もしているうちに受け取ってくれるようになった。さて、朝の日課も終わったことだし出かけるとするか。
ギルドの裏口から出て大通りを歩く。街は日の出とともに動き出している。
「スノーちゃん、おはよう。」
「お、スノー、おはよう。」街の住人達が声をかけてくる。
「がぅ。」とあくびを噛み殺しつつ挨拶をして歩く。
しばらくすると俺は東西の大通りが交わる中央の噴水まで来ていた。
噴水のそばには冒険者ギルドがある。俺は噴水の中心を見る。そこには剣を天に向けて掲げている像がある。
今から百年ほど前、魔物を率いた魔王と呼ばれる悪魔がこの世界を我が物にしようと、城を築き各地に勢力を伸ばしていた。
当初はどこの国も相手にしていなかった。しかし、世界の5分の1を魔物が支配し、国の滅亡が危ぶまれる事態となると、各国が協力して魔王と戦うこととなった。
ギルドや騎士団、エルフやドワーフ、人狼種など多くの人々が戦いに参戦した。人類対魔物の戦いは10年にも及び、数多くの戦いが繰り広げられ、ついに魔王は討たれることとなった。
当時の戦いは「世界戦争」と呼ばれ、多くの人々によって語り継がれている。
そしてこの噴水の人物は「世界戦争」の時、最前線であったこの街で指揮を執り、勇者達が魔王を倒すその日まで多くの魔物を相手に一歩も引かず、この街を守り抜いた。そして功績を称えられ、初代領主となり、この街は大きく発展することとなった。
その像を俺は見上げる。
あの時の記憶が懐かしく、時には寂しくも感じるが、多くの住民が笑顔を見せているのはこの男のおかげだ。
さて、いつも通り過ごすか。俺はギルドへと向かって歩く。ギルドの開いている入り口には、朝から多くの冒険者と商人が集まり、飯を食べるもの、護衛を依頼するもの、自分を売り込んでいるもの等々。
要するに、人でごった返している有様だ。
毎朝の光景となっており、少しうんざりとするが、仕方がないとギルドの中に入っていこうとすると
「あぁ、なんだこの犬は?邪魔だ、どけどけ!」
近くで大きな声が聞こえる。
うるさいな。朝から大声だすな。
そう思いながら歩いていると、俺の前に立ちはだかる足。どうやら人のようだ。顔を上げると、頬に傷のある冒険者風の男達がいた。どうやら俺にすごんでいるらしい。
顔を上げた途端、その男達からアルコール臭がする。くさい。なんてくさい男達なんだ。
無視をしようと男達を避けてギルド内に入っていく。
「邪魔だよ、この犬っころがぁ!」
先頭の男が俺を蹴ろうとしてくる。が、難なく避ける。余裕で避ける。
なんだこいつは。
取り巻きなのか、周りの冒険者がニタニタと笑っている
「おいおいベルケン。昨日の賭けに負けたからって犬にあたんじゃねぇよ」
「しかも避けられてるし」
取り巻き達がゲラゲラと笑いながら蹴ってきた人物にダメ出しをしている。
真ん中の男が顔をより赤くしている。見た目は若く、まだ冒険者になったばかりか装備も初心者の装備を身につけている。大方、クエストを無事に終えてギルド内の酒場で盛り上がったのだろう。
う~ん、浮かれるのはいいが、他人を巻き込まないで欲しい。
ベンケルという男はもう一度蹴ってくる。
余裕を持って避ける。酔っ払いのキックなど怖くもなんともない。
「避けんじゃねぇ!」
声を上げて蹴ろうとしてくる。
いや、なんで俺がキックをくらわないといけないの?意味分からん。
何度も避けるのが煩わしいので、ギルドの窓口を見ると、朝からの対応に追われてこっちの仲裁に来る気もないようだ。
「賭けにも成んないから早いとこ退いとくれ。そんなとこでやられちゃぁ邪魔なんだよ」
酒場のカウンター越しに女が声をかけてくる。酒場ギルドのマスターだ。
「ぎゃはは。犬と人間なら賭けにもなんねぇな」
取り巻きが笑う。
「早いとこ倒しちまうか」
笑いながら取り巻き達も俺を蹴ろうと近づいてくる。
だがな、マスターはお前らに向かって言ったんじゃないんだよ。
俺に向かって言ってんだよ。
酒場の冒険者も最初はちらりとこちらを見たが、勝ちが決まっている戦いには興味がない様子だ。
賭けにもならないのであれば俺の取り分もない。早々に終わらすか。
俺はベルケンと呼ばれていた男の蹴りを避けると、顔に向かって飛び上がり、猫パンチならぬ狼パンチを繰り出す。
決まった。
リング上なら審判が両手をクロスにしているだろう。
男は膝から崩れるように倒れていった。取り巻き達は唖然としている。こらこら、君達も蹴ってきたよね。次々に狼パンチで伸していく。
「な、なんだよこいっ…」
最後の取り巻きが声を上げるが、何も出来ずにノックアウト。
折り重なるようにできたオブジェを無視し、酒場のカウンターへと歩いていく。
「通路の真ん中に捨てられると面倒なんだけど」
酒場のマスターがオブジェを指差し、不満を言ってくる。
俺は気にせず、いつものように銀貨を出す。
「まぁったく。あぁ、はいはい。またいつものだね。」
そう言って、酒場のマスターは俺の特等席にミルクと骨を置いていった。
仕事の依頼か。ミルクを飲み終わったら今日も、ひと仕事しますか。
人に読んでもらうってのはドキドキしますね。