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彼女は勘違いの度が過ぎる  作者: 平菊鈴士
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生徒会です!


「それじゃあ、生徒会役員は朝川だな。よろしく頼むよ。」

 月野先生からそう言われた後、クラスメイトが一斉に歓声を上げました。

 この高校は一学年三クラスで、学校の仕組みをより早く理解させる為に、各クラス最大二名が選出されるのです。基本は一人だけですが、二人も可能なのです。だから私は、

「私、一人では不安なんです。もう一人、生徒会役員になって欲しいのです!」

 そう言いました。途端、


「僕がやります!!」

「何言ってるのよ!私が一緒にやります!!」

「いや、あたしが相応しいよ!!」

「お前等に任せられるかよ!俺がやるべきだ!!」


 クラス中が一斉に湧き上がりました。

「こ、こら!静かにしなさい!!」

 月野先生が注意しても、全く止みません。この状況を止めるには、私が何とかしなければなりません。


「………私、是非生徒会役員になって貰いたい人がいるのです!」


 そう告げた途端、凪の様に静まり返り、逆に怖かったです………。


  □ □ □


「私、一人では不安なんです。もう一人、生徒会役員になって欲しいのです!」

 朝川さんがそう言うや否や、クラス中が花鳥園になった。

 最初から俺は、生徒会役員なんて興味が無かった。業務内容を月野先生が話している内に、ますますやりたくなくなった。だから、朝川さんが自らやりたいと言ってくれた時は、はっきり言って安堵した。

 恐らく、他の人もそう思っていたのだろう。朝川さん以外は誰一人として、立候補しなかった。


 その後、朝川さんがもう一人役員が欲しいと言った途端、人気最下位の生徒会役員になりたがる人が急増した。理由は明らか。容姿端麗にして才色兼備の朝川さんとお近づきになりたいからだろう。


 しかし俺は、その気になれなかった。何故なら、結局なるのは生徒会役員。面倒臭い事この上無い仕事なんて、例え朝川さんと一緒にやれるとしても、俺は立候補したくない。

 そんな事を考えながら机に頬杖をついていると、


「………私、是非生徒会役員になって貰いたい人がいるのです!」


 (ああ、知らない人と仕事なんて、朝川さんと言えど不安は不安か。そりゃそうだろうな。)


 まるで他人事の様に朝川さんを眺めていると、黒板の前に立つ朝川さんと目が合った。

 凪の様になった教室の中、朝川さんは俺を見たまま歩み寄って来た。


  □ □ □


 (ああ………、二階堂君と目が合った!!)

 教室の最後列に座る二階堂君。

 静かになった教室の中、私は二階堂君と目を合わせ続けながら、彼の方へ向かいました。

 (気怠そうに頬杖………!格好良過ぎですぅ〜!)

 内心を顔に表さない様にしながら、彼の机の前に立ちました。そして、


「に、二階堂君!………お願いです。」

 (こうすれば、いつでも二階堂君とお話出来る!)

「わ、私と………一緒に………、」

 (上手くいけば、それ以上に………、)


「生徒会役員、やって下さい!!」

 (仲が進展するかも!!)


 ………顔が熱いです。告白じゃ無いのに、恥ずかしいです。

 それでも私は、彼と仕事も、お話も、色んな事をしたいのです!


  □ □ □


 (………は?)

 脳の働きが、一時停止した。

 (()()()()が、こんな()と、()()()()()に。………待て待て待て!なんで()なんだ!?他の二階堂じゃ………いやいねぇし!別の奴と間違えた………いやいや、朝川さんに限ってそれはあり得ん!ならなんで!?)

 未だかつて無い程に脳をフル回転させた。ただでさえ脳を回転させる事なんて殆ど無い俺が、無理矢理酷使した結果………、


「………うん。」


 (………あれ?)

 考えていなかった言葉が口から溢れ出た。脳はオーバーヒートを起こし、フリーズしていたから、たった今言ってしまった言葉の意味が分からなかった。

「やったぁ、ありがとうございます。これからよろしくお願いしますね、二階堂君!」

 その言葉の直後、教室が嵐の様になった。


 次第に冷えてきた脳。その脳で、言葉と状況を分析する。

 (………し、しまったあああぁぁぁっ!!!)

 途轍も無い後悔が津波になって、隕石になって、ビックバンになって、俺を飲み込んだ。

 頬杖した手から、俺の頭が落ちた。ゴンッと鈍い音は、クラスメイトの誰の耳にも届かない。

 突っ伏してから頭を上げると、満面の笑みの朝川さんが見えた。その笑顔は、何でも許してしまいそうな、一種の神々しさを纏っていた。


 (………まぁ、いっか。)


 この日、平均並みの俺は生徒会役員となってしまった。

 敗因は、………笑顔に負けたからとしておくか。

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