昼休みの時間です。
「うわぁ〜。」
「綺麗なお弁当ですね〜。」
今は昼休みです。この時間に生徒は、お昼ご飯を食べるのです。
この学校には食堂も、購買もあり、お弁当を持って来る人もいるのです。
「そんなことありませんよ〜。」
そう言いながら私は、お弁当を隠しました。
私は本当は、皆さんのお弁当が羨ましいのです。
食材の彩りやバランスが整えられた綺麗なお弁当より、自分が好きな料理の入ったお弁当が欲しいのです。今まで一度も、そんなお弁当を食べた事が無いのですもの。
ふと横を見ると、二階堂君も一人でお弁当を食べていました。
(あ………。二階堂君のお弁当、サンドウィッチなんですね………。なんだか、羨ましいなぁ………。)
そんな事を考えていましたら、
「………これ、食うか?」
二階堂君が手にしていたサンドウィッチを渡して来ました。
「ま、まだ食って無いやつだし、………い、いらんならいいけど。」
(え!良いのですか!?)
すると、
「ちょっと二階堂君。朝川さん困ってるじゃないの。」
一緒にお弁当を食べていたクラスメイトの女子が、二階堂君に注意しました。
「あっ、すまん。………邪魔したな。」
「えっ、あっ………。」
二階堂君がそのまま、自分の席に戻ってしまいました………。
□ □ □
(そりゃそうだよな………、お嬢様育ちの朝川さんは、こんなもの欲しがってた訳じゃないよな………。)
俺は、朝川さんがサンドウィッチをチラチラと見ていたのに、気付いていた。
俺のサンドウィッチには、「金平ごぼう」を挟んでいた。「和」と「洋」の究極サンドウィッチ。最も気に入っているサンドウィッチが、単に物珍しかっただけなのだろう。
(はぁ、………話掛けるんじゃなかった。)
俺が肩を落とした時、
「あ、あの!」
あの朝川さんが、俺の横に来た。
「な、何?」
「そ………その、………サ、サンドウィッチを、………く、く、く………、」
俺は察した。
(そうか、周りが無理に俺を押し除けた様になったから、朝川さんがフォローしようとしてくれてるんだな………。俺の顔を立てる為に。)
スッと、弁当箱の中に残っている最後の切り札サンドウィッチを、朝川さんに差し出した。
「ど………どうぞ。」
「あっ、あああ、ありがとうございます!!!」
俺のサンドウィッチを、両手で大事そうに持っている。その顔は、
(なっ!?反則だろそれはっ!?)
頬を軽く赤らめて、満面の笑みを浮かべていた。
□ □ □
(やりました!二階堂君のサンドウィッチ、GETです!)
私は、物凄く嬉しかったです。初めての皆さんと同じお弁当を、何より二階堂君のサンドウィッチを、食べる事が出来るのだから!
我慢ならず私は、その場でサンドウィッチに齧り付きました。
ーーー絶品です!
サンドウィッチに金平ごぼうと言う、異色の組み合わせ。それが意外な程マッチしているのです!一緒に挟んである鶏の照り焼きも、肉肉しくって美味しいのです!
悶えるのを何とか我慢してると、いきなりバタンと二階堂君が机に突っ伏してしまいました。
「ちょっ、二階堂!?」
慌てるクラスメイトの男子達。
「だ、大丈夫………。」
「ホントかよ?」
「ああ、………あまりの可愛さに桃源郷見えただけだから。」
「うん、ダメだこりゃ。保健室行くぞ〜。」
二階堂君は男子達に肩を担がれながら、ズルズルと教室を出て行きました。
(?)
二階堂君の呟きがよく分かりませんでした。私はそのまま、モグモグとサンドウィッチを食べました。