入学式で会いました。
今日は、待ちに待った高校の入学式!
そして私・朝川妃奈子は、中学時代では出来なかった事をしたいのです!それは………、
「私、恋愛します!!」
私の実家の朝川家は、様々な事業を連発成功させた事業家です。今や誰もがその名を知っている程で、私はそこの長女です。
その為か、私は名門私立校しか通ったことがなく、生徒の皆さんは私を前にすると、途端によそよそしくなります。
私はそれが嫌でした!
だから私は、お父様に無理を言って地元の公立高校・海代高等学校に通うことにしたのです!私はこの日を、どれ程待ち遠しく感じたことか………。
私も、一高校生の生活を送ります!
桜舞い落ちる校舎へ続く道。
私は髪を靡かせて、鼻唄を歌いながら校舎に向かった。すると賑やかだった周りの声が、何故か急に静かになった。気になって振り替えると、
―――一人の男子生徒がいた。
一八〇センチ程の背をし、髪をぼさぼさにしていた。その髪を掻き、眠そうな目をしながら歩いていた。そんな彼を見た私の第一印象は、
(ワイルド!!)
ぼさぼさの髪が何故か、格好良く見えたのです………。
□ □ □
俺は二階堂徹。一般家庭の一般生徒だ。地元の小・中学校に通い、近いと言う理由が主にこの高校に通うことにした。
そして俺は高校に入学して、恋人を作ると言う目標を持っているのだ。
俺がこの道を歩いた途端、皆が俺を見て黙り込んだ。理由は分かっている。俺の髪型だ。大方、こんな髪をした俺を見て、不良学生だとでも思っているのだろう。
しかし、それは違う。俺は不良なんかじゃない。この髪は………、
―――単に時間が無く、髪をセット出来なかっただけだ。
第一印象は最悪だろう。入学早々にやっちまった………。
………俺、恋人出来るかな?
□ □ □
翌日、彼は髪を整えて学校に登校しました。
(一日で髪を戻すなんて………、校則を意識した真面目な生徒なんだ!)
またしても、彼の評価が私の中で上がったのです。
彼と同じクラスになれました!よしっ、これで彼と話が出来ます!!
そして何と言う偶然か………、隣の席になったのです!
「あの、朝川妃奈子です。よろしくお願いしますね。」
彼は一瞬目を見開いた後、ふいっとそっぽを向いて、
「二階堂徹………よろしく。」
ぶっきらぼうに返事をしたのです。周りは、その態度が気に入らなかったのか、私の周りに集まって来ました。
「大丈夫ですよ。徹は無愛想だけど、悪い奴じゃ無いんです。」
周りの方達には申し訳無いのですが、この時の私はこの弁明を聞いていませんでした。何故なら、
(何てクールなの!?格好良い!!)
………彼にまた、惚れていました。
□ □ □
俺の隣、まさかの朝川グループの長女じゃねぇか!しかも座って早々、こんな俺に挨拶するとは!?
この時の俺の精神状態は、かつて無い程不安定だった。だから俺は、思わずぶっきらぼうに返事しちまった。
(やっべー!折角俺に挨拶してくれたのに、こんな返し方は無いだろうが!?)
横目で朝川さんを見ると………、
(えっ!?)
頬を赤くして、惚けていた。………何で!?
(えっ!?まさか、………こんな俺に惚れたのか!?)
そう考えると、俺は頭を振った。
(いやいやいや、相手は朝川グループの長女だぞ!こんな凡人の俺とは天と地の差があるんだ!そんな人が、俺なんかに惚れる筈がある訳無いんだ!何を自惚れてんだ、俺は!?)
絶対あり得ない。だけど、あの赤くした頬はどんな意味があるんだ?
俺の頭の中は、入学式早々にフル回転していた。