プロローグ
陶器のように白い肌に、柔らかな黄金の髪。深い青色の瞳は夜の海を思わせ、長く濃いまつげが白い肌に影を落とす。
頰にはすこし赤みが差し、血のように真っ赤な唇が蠱惑的な笑みを描き妖艶さを醸し出している。
背中からは片方がすこし歪んでいるが純白の白い大きな翼が…
そうまさに天使と呼ぶにふさわしいものだった。
✖️✖️✖️✖️
「悪魔だ…悪魔が襲撃して来たぞおおおおおおおおおおおおおおおっ」
「いやあああああああふごっ」
「お父さん!お父ぶ」
「ネイト様ネイト様どうか私達に救いの手を…ブツブツ」
突然の事だった。
齢5歳の幼子が体験するにはあまりにも残酷であまりにも無慈悲だった。
この世はなんて不平等なんだろう。
そう思いなにかが変わるわけでもなく、
村のみんなが殺されていく様をぼうっと見続けた。
まさに「地獄」とはこういう状態の事をいうのだろう。
僕は助けを求め死んでいく人たちを見、何もすることができなかった。
唇を噛み、ギリギリと歯ぎしりをする。
かみすぎたのか少し血が出てきた。鉄の味がする血はとても まずかった。
(ゴロゴロ…)
なにかが転がって来た。母が慌てた様子で僕の目を塞ぐ。
僕は指と指の隙間から外を盗みみた。
僕の足元に誰か人が転がって来ていた。
顔は焼けただれていたので誰だかわからなかった。
指をピクリと動かしたそれっきりうごかなくなって死んでしまった。
「ひっ」
(見なければ良かった)
あまりの醜悪な姿に思わず悲鳴を漏らす。
慌てて僕は口を抑えたが鋭い悪魔がそれを見逃さなかった。
長髪の白髪頭の悪魔がこっちを見た。
のろのろとゆっくり歩き不審がりながら近づいてくる。
心臓の鼓動が早くなる。
それは一緒に隠れていた母も同じ事で、僕は母の心臓の鼓動が早く大きくなるのを感じていた。
母の目を見ようとするも、母は目を合わせてくれなくて、悪魔が近づいてくるのをただじっと待っていた。
そしてもう見つかる!!という時に母は覚悟を決めたという顔で木に立て掛けてあった斧を構え悪魔に向かって走って行った。
「うああああああああああああああああああああああああああああっ」
母は木に立て掛けてあった斧を悪魔に振りかざし戦った。
「バカな女だ」
悪魔はそう言い母の首を断ちきった。
必死に口を抑えて今すぐ「お母さん」と叫びたい衝動をなんとか抑えた。
死んだ母の目は僕を見ていて、暖かかった優しい光はもう、とっくに潰えていた。
絶望した
空虚を見、神に助けを求める。
涙すらも乾き集点の合わない虚ろな目で。
助けは来るはずもなく、力のない自分を憎んだ。
よく知っている声がした。
「おぎゃああああおぎゃあああああああああおぎゃああああああああ」
声のする方を見ると弟が殺されていた。
まだ一歳にも満たない弟は心臓を抜き取られて死んだのだ。
「きゃああああああああああっ」
また声のする方えお見るとおばさんが死んでいた。ちょこまかと逃げたので苦しみを長く味わう事になり腕をもがれ足をもがれそれはそれは残酷な死に方をした。母のように首をスパッとやられた方がまだマシな死に方だっただろう。
ドーン!!!!と爆発音がした。
見ると家を爆発させているようだった。
そういえば悪魔は皆殺しだと叫んでいた。
あれは隠れて入る人たちを殺すためのもの…
「!?」
「まずい!逃げなきゃ!? うわっ」
この家もじきに爆破されると僕は慌てて駆け出した。
しかしなにかにつまづいて転んでしまった。幸い悪魔は近くにいなくて見つかることはなかったけれど割れた花瓶の破片が足に深く突き刺さった。
「うっ…!!」
痛む足を引きずって母が守ってくれたこの命を無駄にしないように、夢中で悪魔にみつからないように走った。
そうしてたどり着いた場所にこの世のものとは思えないほどの美貌の天使がそこに居た。
安心してしまったのか、それとも痛みでなのか、僕の意識はそこでぷっつりと途絶えた。
✖️✖️✖️✖️
To be continued