51話〜バカ王と地蔵となりし男
1ヶ月近く更新を開けてしまってごめんなさい!
続きの構成考えてたら迷宮入りしてしまったのです!しかし、よく考えたらそんな考えるような話ではないと思い至り更新再開します!
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「魔王軍幹部…ってことはスロウやラストの敵討ちって事か?」
俺がそうアリアに聞くと、きょとんとした後に、大きく笑い声を上げた
「あっはっはっはは!!敵討なんてそんなことしないよ、寧ろ旧世代の残骸を倒してくれて有難うと言いに来たんだよ。異世界人、一全健也君。」
仲間を倒されてお礼を言いに来たというアリアの言葉を疑いたかったが、その表情を見る限りではウソをついているようには全然見えなかった。
それに旧世代という言い方が引っかかっていた。
「その言い方だと新世代がいるみたいじゃないか」
「お、察しがいいね。君にはそれを伝えに来たんだよ。この世界はいずれ滅びる、君も君の愛する者たちもあっけなくあっさりと、押しつぶされるようにぐしゃっと。もしそうされたくないなら命がけで私たちを倒しなさい!!」
目の前の女子高生は金属バットを俺に向けながら叫んだ。しかしなぜだろう、彼女に言葉にウソはないが何か隠している事があるのはすぐに分かった。
まるでアリア自身が俺に止めろと言っているようだったから。
「じゃ、また会おう。そのときはもっと強くなっていることを願ってるよ」
音もなく…ではなく跳んで気配が消えてから遅れて音がなる。それは地響きのようであり暴風のようであったが、2キロ離れた宴の場には何ら影響は無かった。
俺が戻れば、遅いと言われどんちゃん騒ぎの輪の中に放り込まれた。
みんなが笑顔で笑いあう中、俺もつられて笑顔を浮かべる。
それでも俺の頭の中にはアリアの言葉が残っていた。
命がけで私たちを倒しなさい
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目が覚めると俺はテーブルの上で眠っていた。どうやら酔いつぶれてしまったらしい。
そして周囲を見渡そうと首をひねるとどうにも頭が痛い二日酔いか?だが我慢できないほどではない。
「やっと起きたのね」
ミリュが真剣そうなまなざしで俺を見つめる。隠そうとはしていないが、やはりミリュにはばれているらしい。
「当然よ、あんなにも強くつながってしまったのだから、もう私には隠し事なんて絶対に不可能だと思った方がいいわ」
再契約の時にはあんなにも弱弱しかった瞳は今では強い光を含んでいる。その現状に満足しながらも、俺は昨日アリアに言われた事をそのまま伝えた。
「旧世代に、新世代そしてその新世代と思われる暴食のアリアが私たちを倒せって、なかなかに可笑しな話ね。なんだか矛盾していて不可解だけど、それでもケンヤを悩ませるだけの何かがあるってことでしょ?」
どうやらミリュも俺と同じ見解に至ったみたいだ。
そうアリアの言っていた言葉にウソは無い、しかしそれでも止めてほしいという言葉にもウソは無く必ず世界は滅びるという言葉にもウソはない。
すなわち新世代の七つの大罪の他にこの世界を滅ぼそうとしている者がいるという結論に至る。
「まぁ考えていても答えは出ないんだから切り捨てた方が懸命なのは確かだな」
そう言って立ち上がると、それに合わせたようにみんなが起き上がる。
とりあえず、
「片づけよっか」
まるで嵐が通り過ぎた後のような惨状に昨日の笑顔はどこへやら、皆がそろってため息をつくなか、一人がクスリと笑ってみればそれはたちまち伝染し、笑い声の絶えぬままに宴は完全に幕を閉じた。
「あれ?っていうか俺の寝室にエルフの女性を送る件は一体…」
「そんなのアタシが許すと思ってる?」
小さなつぶやきは、ミリュの殺気によって消し飛ぶ
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片づけが終わってエルフの国は普段通りに戻っていく、その光景を神樹から眺めなているとエルフ王が声をかけてきた。
全く何が悲しくておっさんと同じ部屋に居なければいけないのだ
「明日にはアズシン国へと戻ると聞いたのだが本当か?」
俺は不遜だと分かっていてもエルフ王の方を見ずにそうだと肯定した。
「そうか、なら手土産に」
エルフの国の特産品でもくれるのだろうか…まぁベジタリアンなだけあって野菜へのこだわりは相当高い。お土産にいくつか買って帰ろうとしていたのだがその手間が省けるならそれでいいか
「クルフとリティをもらっていってくれないか?」
「あぁ、ありがた…んん!?」
さすがに振り返った、言葉の意味は理解できたがエルフ王の真意が意味不明。
「いやなに、君ほどの強者の傍にいれば娘達も安全だろうし、何よりいざとなればエルフの国を君に譲り渡してもいい」
「本当何言ってんのバカ王」
真剣な表情で言ってくるエルフの王に対して俺も真剣な顔で言い放つ。
「はっはっは、バカ王とは失礼だな君じゃなかったら即刻処刑ものだ」
「それなら大丈夫だ、俺以外には言わないだろうからな。それでどういう腹づもりだ?自分の娘を2人も、それも人族の男に渡すなんて正気じゃ無いだろ?」
「至って冷静で至極まともな発想だと思うがな、私はこれでも私の娘を確りと愛している、ゆえに幸せなってほしいと願ってもいる。その娘が好きになった男が信頼に値するとなれば、とっととそこに行ってしまった方が娘たちのためになるだろう。」
「父様!そういう話は当事者をちゃんと交えて話さないといけないことではないでしょうか!」
盗み聞きをしていたのかクルフが部屋に飛び込んでくる。
それに続くようにして、リティやミリュ、リノやリエリフ、クエリア、そしてなぜかクリスとマリア、タルも入ってきた。
「お姉ちゃんも素直じゃないな、私はお兄ちゃんのところに行きたいから賛成だよ?」
相変わらず天使のよう笑顔を見せるリティが俺に飛びついてくる。
「わ、私だって反対ではないが、私の知らぬ間に決めてくれるなという意味だ。私は私の意思でケンヤの傍にいたいのだ!」
「わかったよ、バカ王の言うことは拒否するつもりだったが、女性から頼まれれば話は別だ。ところで他のみんなは?ついてくるのか?」
クエリアとリエリフは少し名残惜しそうに首を横に振ったが、クリスは当然とばかりにうなずいた。
リノやタル、マリアはただ戻るだけだが他のみんなは当然住む場所なんてない、このエルフの国だからこそ、その能力を遺憾なく発揮できるのであって、人族の国に行けばその力は半減してしまうだろう。そうなれば軍に入ることも難しいだろうし…
「住む場所はどうするつもりなんだ?」
その問いに対して答えたのは、リノだった。
「その心配はありませんよ、きっともう出来上がっている頃合いでしょうから」
出来上がってる?
一体何が…
神樹から出ると俺たちはエルフ族やドワーフ族に見送られながらエルフの国を後にした。
帰るルートは来た時と同じで御者のおじさんも同じだ…そしてきっと泊まる場所も。
来た時よりも人数の増えてしまった馬車は窮屈で少し動けば色んな物に触れてしまうが、色んな意味で一触即発のこの状況で俺は身の安全のために地蔵となることを心に誓った。
今後ともよろしくお願いします!
感想をくださった方、更新が止まっているのに閲覧してくださった方本当にありがとうございます!




