25話〜クーデターの過去と無謀で強欲な男
くっ…全然エロ要素入れる隙がねぇ…
パシィ
大丈夫か?と尋ねながら差し出した手は割と強めの力ではねのけられた。
女性からの一応攻撃ということもあって、思った以上のダメージを受けたのだが女性自ら触れてきてくれたのだと解釈すれば心のダメージすらもない、つまり無傷だ。
だがミリュの方はそうもいかなかったようで、俺を払いのけた方の腕をつかみ無理やり立ち上がらせた。
一瞬手に力がこもったので、殴るか叩くかするのだろうかと思い止めようとしたのだが、少しの間も置かずにミリュは上げた手を下げた
「ミリュ?」
「ちょっとむかついたから叩こうと思ったけどやめたわ、そんなの意味ないもの」
どういうことかと思って、今しがた助けたばかりの女性の顔を見てすぐに納得した。
当然俺が間違えるはずもなかったが、服装の乱れや顔に傷はないものの汚れているが間違いなく、あの城の中にいた国王の娘レイーナ=アズシンだった。
しかし、あれほど強気に国王をにらみつけていた表情は幻だったのか表情は表情とも呼べぬものになっており、瞳には光が宿っていなかった。
これっていわゆるレ〇プ目ってやつか?いや、まだことが起こる前だったはずだ。
「どうかしたのか?俺ができることならなんでもしてやれるぞ」
そう言った直後に無表情だった顔に一つの感情が宿る
強い、心の底からの
怒りだった
「グロウ程度に負けた奴がどうにかできるって?ふざけないでよ!!私の人生はあの男のちっぽけな欲望のせいで終わってしまうのよ!!?」
自然と圧が込められた言葉にすこし気圧される。
「やっぱりお前だったであーるか、街中に突然渦ができたと聞いて冗談かとおもったであーるが…」
俺たちが入ってきた勝手に崩れた入り口から顔をのぞかせるのは、さっきの神級魔法を見てやってきたであろうゼグサ軍曹長だった。
「この状況は…ひとまず落ち着いた場所に移動するのであーる」
そういうと、外の方へと顔を向けなおし、一緒に率いてきた恐らく部下たちに後始末を命じていたようだ。
先ほど怒鳴って以降再び沈んだ顔に戻ったレイーナの腕をミリュがまた掴み引きずるような感じで城の近くにある小さな建物に連れていった。
「なんだここ?」
「応接館であーる、この国にくる者の中には公の場で話せぬ内容を持つこともある、その為に作られた建物であーる」
なるほど、鑑定で見ると
あまり強くはないものの魔法妨害と音を遮断する魔法が付与されていた。それに物理的に壁が分厚いようだ。
応接館へと、俺とミリュ、ゼグサとレイーナの4人が入っていく。
重厚そうな扉の中は前の世界であったような応接室と大体同じで、すこし違う点といえばソファが石で作られているのではないかと思うほど硬いくらいだった。
ぼんやりとした光が6畳もない室内の四隅で部屋を照らす。
お互いの顔がはっきりと認識できず、確かに内密な話をするのに向いているな、などと考えている内に、まずゼグサが先陣切って言葉を発した。
「何故あのような場所にレイーナ様がいたのであーるか?」
第一声で名前を呼ばれたレイーナは、すこしだけ肩をピクリとさせるものの、顔を上げようとはしなかった。
「さっきのグロウ程度に負けたってのはどういうことか教えてもらいたい、あいつは国内で一番強いんだろ?」
「ラスト…」
怒りのこもった言葉の後から初めて発した言葉がそれだった。ラスト…最後ということか?いやそれでは話が繋がらなすぎる。
俺の持ち合わせるこの世界の知識では、回答を見出すことができなかったものの、ゼグサはすぐに気づいていて、目を見開き驚きに口を開けていた。
その様子を見て昨日の話を思い出した。
「色欲のラスト」
ポツリと吐き出した言葉で、今度は大きな反応を見せたレイーナ、あげられた顔はとても悔しそうにも悲しそうにも見え、瞳には恐怖と怒りが混じり合っていた。
「そうよ、私とパパからママを奪ったあの魔族よ…なのにあの男は私を差し出そうとしているのよ」
「あの男ってのはフリード=アズシンのことか?」
俺はなぜかつながった思考の結果をレイーナに向かってつぶやく。
「どうしてそれを…」
「ま、待つのであーる、なぜ十年以上も前に死んでしまった国王の弟の名を知っているのであーる?」
「死んでなんていなかったのよ。パパは優しいから、殺せなかったの」
取り乱したように声を上げるゼグサの問いに俺は答えるすきを与えてもらえなかった。
「殺せなかった?病死ではなかったのであーるか?」
別の質問を投げかけるゼグサは見た通りに焦っている、俺は鑑定のおかげで知ることができたのだがそうでない上に国内の人間にとってはとてつもなく重要なことがこの場で話されているのだろう。
「パパの政策に不満があったあの男は殺しもいとわない人たちを集めてクーデターを起こそうとしていたのよ、それでもグロウに全部一蹴されてたけどね」
なるほど、それで本来なら首謀者であるフリードは死罪になるはずだったけど本当の国王クリードはそれができなかったと。
その結果がこれじゃあ救われねぇよな。
「それで、フリードは魔族と何をしようとしてるんだ?」
「定期的に人間の女を差し出すことでフリードに力を与えていたの」
「そんなことしてたらすぐにこの国から女性が居なくなってしまうじゃないか!?」
考えればすぐにわかる事に至らなかったとは思えない、その考えはレイーナによって肯定される。
「気に入った女がいたらそのまま、力を与えてこの国に居座ることが約束に入っているのよ」
「魔族が…居座る…そんな事になれば…」
ゼグサが、小さく呟く
話を聞いた限りでは、ラストはグロウと同等かそれ以上の強さらしい…
他国の状況はわからないが、そんな戦力があるとわかるだけで、立場がまったく違ってくるだろう。
「ところで…連れていかれた…」
と俺が話を切り出したところで、ゾワっとした悪寒が走った。それは禍々しいほどの魔力であり、ミリュもそれを感知したのか俺と同じ方角を見る。
直後防音などが施され生半可な衝撃は全て無に帰するこの応接館の外壁が容易く破壊され、咄嗟に発動した神級魔法による水の壁によって俺たちは無事だった。
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