18話〜美女&美少女の戦いとラブホテルに向かう男
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全ての職業や仕事を管理する冒険者機関。
そのアズシン王国支部の裏側にある広場はいつも冒険者機関に登録した人や軍人なんかの練習場となっており、日中は常に賑わいを見せていた。
だが今は二人の女性のせいで、自然の音すら聞こえないくらい静まり返っていた。
風も吹かず、鳥も鳴かない。
「ケンヤといったかな?合図を頼めるか」
その静寂の中声を出したのはマリアさんだった。
なんで俺が?と思ったが、それに反論できる雰囲気でもなく、ミリュとマリアさんの間くらいに立った。
「アタシに戦いを挑むなんてどれだけ命知らずなことか教えてあげる」
「なかなかに自身家だな、私も軍を率いる身として負けるわけにはいかないんだよ」
なんやかんやいってもミリュは龍のしかも上位種だ。
自らのことを言わないあたり、龍だということを明かしたくないようだが、神級魔法を使ってしまえばバレるだろうけど…
それでも地力の差で負けるとは思えない。
マリアさんには悪いが決着は一瞬だろう、何せ魔纏も使えるのだからな
「レディ!!…ファイト!!」
言ってから気がついたが、この世界通じるのか不安だったが、問題なく二人の戦闘は始まった。
どちらが先行したということでもなく、同時に駆け出し、もののコンマ2秒で接触した。
互いの拳どうしが衝突し、衝撃波が発生する。
それによって再びサリアさんのタンクトップがめくれ上がりそうになるが、それは当人の手によって防がれてしまった。
だが戦闘中のミリュはそもそも、ドレスっぽい服装だったために、綺麗な足がチラチラと見える。それだけでもタルには刺激が強めで、そんなことには、動揺しないとばかりにまじまじと真剣そうな面持ちで見ているが鼻からは赤い液体がツゥっと流れている。
あ、俺もだ
だがそれ以上に衝撃的なことがあった、ミリュの拳とぶつかったマリアの拳は無傷だったにも関わらず、ミリュの方はすでに修復が始まっているものの皮膚が剥がれ血を流していた。
どういうことだ!!?
鑑定で見てもステータスでは明らかにミリュの方が上。
何かしらの技術で相殺はできても、ミリュが傷つくことはないだろう。
となると、スキルであった”破壊”スキルが原因だろうか…
「ランクAのスキルでアタシの体が破壊されるとはね…」
「鑑定系スキルを持ってるようだな」
喋りつつも攻防を繰り返す二人の戦闘の次元は、普通を遥かに凌駕していた。
やはり攻撃は互いに相殺しているはずなのに、ダメージを負うのは決まってミリュの方だった。
業を煮やしたミリュの方が少し大ぶりの攻撃を仕掛ける、それを隙とみてカウンターをしようとマリアさんが試みるかけるが、瞬時に何かを感じて防御に回る。
先程までのミリュの攻撃が赤子の駄々にも思える、異次元の一撃をマリアさんは両腕をクロスさせ魔力をクッションとすることで、10メートル以上も後退しながらも受け切った。
「だいたいわかったわ、あなたは”破壊”と”直感”スキルを併用することで無意識にアタシが防御を薄くしているところに攻撃を当てていたのね。まぁ、それでもアタシの攻撃を受け切り反撃できる人なんてそうそういないけど」
「ふふっ、賞賛の言葉をありがたく頂戴しよう。ちなみに今の一撃は本気か?」
「そんなわけないじゃない。アタシが本気出すのはきっとケンヤくらいでしょうよ」
「そうか、ならあと一撃だけ付き合ってはくれないか?私の実力を確認しておきたい。」
「アタシは寛大だからね、でも優しさはないわ」
「感謝する」
そのマリアさんの言葉と同時に、空気が凍りついたような錯覚を覚えた。
生物の本能に存在する恐怖、それが強制的に精神に芽生えたのだ。
女性という点で俺はマリアさんからの威圧感や恐怖なんかはレジストできないのだが、それでもスタインと比べるまでもないくらいの強烈な殺気を感じることができた。
対象とされていない俺ですらこれだけ感じているのだから、ミリュの方はもっとすごいのだろう。
表情などは崩していないものの、額からは汗を滲ませているのが全てを物語っていた。
俺やミリュはこの世界にとっては相当な異常要素で、本来ここまでこちらの人間に干渉することはないのだろう。
だが、彼女は違う。
普通のこの世界の人間にも関わらず、龍と対等に戦える、文字通りの怪物なのだ。
称号の破壊の化身に偽りなどなかった。
マリアさんが何もない空中に手を伸ばすと、その掌が触れる位置に黒い歪みが出現した。
すぐに鑑定スキルで確認してみると、それは原魔法で物質を異空間に収納するという代物だった。一体どういう構造で出来ているのか…
収納量は魔力量に依存するようで、マリアさんぐらいであれば、結構な量収納できるように見える。
その中でマリアさんが取り出したのは、自分の身長ほどもあろうかという細剣だった。
そして鞘を抜き、地面へと突き刺す。
数度振り回すと半身になり肩の高さで地面と水平に細剣を構え、切っ先をミリュの方へと向けた。
そして、ズズッとマリアさんの体から魔力があふれたかと思うと、先ほどの俺の戦闘からきっかけを得ていたのか、それともはじめっから使えていたのかわからないが、魔装をやって見せた。
黒くも見えるマリアさんの魔力が、細く弱々しく思える細剣を覆ったかと思えば、その魔力は徐々に重厚感を帯び始め気づけば細剣は作りの荒い両手剣のように変化していた。
さらに、魔力が集中させていくと、ただの金属の塊のようにさえ見えたマリアさんの剣は、徐々に精巧さが見え始め遂には金色に輝く一振りの両刃剣が小さな手に握られていた。
相当な重さに見えるのだが、構えからはそんな重さを感じさせてはいない。
幻影や幻術の類を疑いたくなるが、圧倒的な存在感がそこにはある。
誰も口を開こうとはしない。
ミリュがマリアさんの”異常さ”を見て、先ほどとは逆に何かを感じたのか一部ではなく全身に魔纏を行い防御に専念する。
「いくぞ!!」
掛け声とともに、マリアさんの体が消えたように思える急加速を始めた。
俺のダッシュとは違い、地面への衝撃はない。それにもかかわらず速度は俺と同等以上
しかしそんな音速にも迫ろうかという速度も、構えていたミリュの前では無意味かのように、確実に動きを捉えていた。
かに思えた
凄まじい速度から繰り出された金色の剣による突き
先端はその空気摩擦のせいか、より強い黄金に輝き形が不鮮明になるほど歪んだ。
その直線上は、これが模擬戦ということだからか、首や心臓ではなく構えられた右腕を狙っていた。
先程までと違い、防御を薄くしている場所でなく、逆に最も魔纏を行っている最硬の場所。
ギイイィィィィィィンンンっっ…
重々しい金属音が周囲に響き渡った。
本気で攻撃に徹したマリアさんの剣は、ミリュの腕を3センチくらい切っただけにとどまった上、剣は真ん中で折れてしまった
本気で防御に徹したミリュの腕は、マリアの攻撃を無傷で防ぐことはできなかった
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「それじゃあケンヤ、これがお前の狩人証明書だ、前の身分証と交換だ」
冒険者機関の建物内に戻った俺たちは受付前に設けられた酒場のような場所にある円卓に座ると、それを見計らっていたかのようなタイミングでスタインが近づいてきて、新しく作られた身分証を俺に渡してきた。
それを受け取ると、俺も持っていた身分証を渡した。
新しくなった身分証を見ると職業欄のところに旅人とその下に小さく
”狩人 A”
と記されていた。
「前に言った通り、俺が与えられるランクはAまでだからな、もしこれ以上のランクが必要になった時は、冒険者機関の本部がある、中央王都に行ってくれ」
「わかった」
「…ところで、どうして二人はそんなに落ち込んでいるんだ?」
スタインが、少し困った表情をしながら、暗い表情をしているミリュとマリアさんを見てそういった。
「二人とも負けたからですよ」
「二人とも負けた?」
徐々に増える客の声に混ざりながら、俺はさっきあったことを話した。
話し始めると、ミリュはそのまま落ち込んでいたが、マリアさんの方は逆ギレするようにテンションが上がってしまい、2時間くらい経つ頃には、マリアさんの前にはいくつもの空いたグラスが積み重ねられていた。
「ほら、そろそろ準備しないと」
スタインが声をかけるが、マリアさんは先程まで発していた殺気が嘘のように駄々っ子と化している
当然だが、酒は飲んでいない
いや、飲める歳ではあるのだが、飲んでいる描写はなんとなくダメな気がする
っというよりこの後は王城で報告会に参加しなければならないのだ。
飲んでたら立場的にも危ういだろう
「俺たちもいくか」
自ら回復魔法をかけて、巻き込まれたダメージはすでに回復していたゼグサがそう声を発すると、同意の意を込めて俺とタルとミリュは立ち上がった。
ちなみにサリアさんはマリアさんがめんどくさく絡みはじめた段階で、一言別れを告げて出て行ってしまった。
たくさんのお色気をありがとう
「大丈夫か?」
流石にずっと落ち込みっぱなしのミリュに声をかける、だが返答はしないで小さく首を振るだけだった。
多分、ショックなのだろう、いままで最強の代名詞とされていた龍であったプライドが今日だけで二度も傷つけられたのだから。
「だけど、何か会った時は頼んだぞ、頼りにしてるからな」
そう、いくら本人が負けたと行ってもこの国の中でもトップクラスの人間と対等であったのだから、相当な強さと言えるだろう。
万が一襲撃された時、敵が男なら問題は無いが、女だった場合はミリュを頼る他は無いからな。
「そうか!私に任せなさい」
なぜかミリュは少しだけ明るくなって、口調がいつも通りに戻っていた。
どういうことだろう。
「リノさん!」
俺たちが色々と喋っている間もずっと受付カウンターから動かない、メガネ美人ショートカットのリノさんのところへと向かう。
「ケンヤさん、狩人の登録試験合格おめでとうございます。ご用件はなんでしょうか?」
機械的に言葉に連ねるリノさんの姿はそれはそれで魅力的だ
「ありがとうございます、その狩人になれたので、狩人にしか受けられないクエストを受けつつ中央王都に行きたいので、明日までにいくつか準備しておいて欲しいんですけど」
「かしこまりました。Aランク相当で0ポイントの狩人が受注できるクエストをいくつか準備しておきます。」
「よろしくお願いします」
そう言って受付から離れ、出口へと向かう。
外は太陽が沈みかけて街に深い影を落としている。当然電気などないこの国で明かりといえばガスを燃やしているような火の光だけで、それが点々と灯り始める。
その中でも王城はひときわ目立つように煌々と光っていた。
でも対照的に、夜の闇に溶け込むように冒険者機関の建物は暗かった。
あぁあのきらびやかな王城にはどんな女性がいるのだろうか…
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