13話〜美人との契約と女に勝てない男
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「魔法というのは大きく分けて2つあるのであーる」
アズシン国軍支部長クラスの、バーコードハゲ…もといゼグサがちょっと得意げに話し出す。
魔法なんてフィクションのものが目の前で起こるこの世界で興味がないと言えば嘘になる。だがメインはあくまでもムロメ村で会った少年、タルだ。
俺は聞き流す程度で意識のほとんどは、馬車を操る女性サリアの揺れる胸へと集中している。
「先ずは1つは自らの魔力と自然に存在する魔力を用いる原魔法ともう1つの精霊と契約し、魔法の補助をしてもらう精霊魔法だ。とりあえず見せてやるのであーる」
「おいおい、この中で魔法って危なくねーの?」
「そんなヘマはしないのであーる」
俺が気になって声をかける、サリアさんも少しだけ心配そうだが、そんなことに気にもとめずゼグサは強行してしまう。
右手の平を上にして胸の高さくらいで固定する。すると魔力が集まっていく感じがしてそこに魔法陣が現れる。
『水よ集え』
それだけが魔法陣に記されており、その魔法陣が赤と白の光を放つと小さな魔力の集まりが水に変わり、重力に逆らう形で球体にとどまっている。
「これは練習用の魔法であーる。ただ水を集めるだけの魔法で大きさは使用する魔力量で決まるのであーる。イメージさえあれば詠唱が不要なのが原魔法の特徴であーる」
「おおー!」
タルが目を輝かせてゼグサが作った水の球体を見つめている。それを見たゼグサは満足気だ。
イメージかぁ…それだけでいいなら色んなことができそうだな。雨降らせたりとか。
そう言えば前の世界じゃ夏真っ盛りって感じだったし、ゲリラ豪雨とかもあったからなぁ。
「では次は精霊魔法の方であーる。これも口に出す必要はないが。心の中で詠唱が必要なのであーる。今は試しに声に出すのであーる『水の精霊よ、水を集め指定の場所で玉とせよ』」
すると魔法陣の出現と同時に青白い発光とともに水の球体が現れ、先ほどのものと並べてみると大きさは2倍くらいになっていた。
鑑定を使っていればはっきりと分かるが、使用している魔力は同じなのにも関わらず、精霊魔法の方が発動までの時間が早く威力も高いというわけだ。
「っということは精霊魔法の方が実践的ということですか?」
気づけばタルは敬語になっており、正座をしてゼグサの話を聞いている。
全く現金な奴め
「確かに精霊魔法は速度も威力も上昇してくれる。だが精霊自身のイメージが魔法の威力や操作に大きく反映されるのであーる。その分原魔法は発動者のイメージを忠実に再現できる。その名の通り、発動者のオリジナル魔法とも言えるのであーる」
「なるほど!つまり、魔力が低いもしくは多対一の時は精霊魔法を、熟練の魔法使いどうしの時は原魔法を用いることが多いってことですね!」
ほんとお前誰?ってくらいタルが真剣に話を聞いて、質問をしている。
しかもなかなかに理解力が高いようで、ゼグサも驚いている。
「ふぅむ、それなら2人に精霊との契約の仕方を教えてあげるのであーる」
「いいんですか!ありがとうございます!」
「えーなんか面倒なんじゃないの?」
俺とタルが対照的な反応を見せる。
確かに魔法に魅力を感じている俺だが、魔力量は相当多いわけだし、魔法の威力の高さから見てそこまで脅威ではないから、原魔法だけで事足りるだろう。
「そうであーるか、まぁいいのであーる。ちなみに精霊というのはしっているのであーるか?」
「少しだけですが、精霊は美しい女性である「契約ってどうやるのか教えてもらおう」と」
「「…」」
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「馬を少し休めたいので、休憩を取ってもよろしいですか?」
精霊との契約の話をゼグサから聞いているとサリアさんが声をかけてきた。
当然拒否することなく、近くにあった湖へと立ち寄った。
湖の広さは、ちょっと大きな水溜りといった感じの印象で、市営プールよりも少し広いかなというくらいだったが、木々に囲まれ、魔物ではない動物が群れをなしている。とてもいい雰囲気と言えた。
そんな場所でサリアさんは湖畔の岩へと腰掛け、水を飲んでいる馬の頭を撫でている。それだけで絵になるのは確定事項なのだが、何せ前かがみになっているものだから山と山の間が果てしなく奈落にさえも思えてしまう。だがその先は地獄ではなく天国が待っているのはいうまでもない。
だがそれよりも早急に行わなければならないことがある。
それは精霊との契約だ!
聞くところによれば、精霊というのは例外なく女性の姿をしており、美人が多いとのことだ!
「証拠はあるのか!?」
との質問に対してゼグサは自分の精霊を見せられればいいのだが、精霊契約した者、本人でないと精霊の姿を捉えることができないのだそうだ。
それなら、是が非でも契約をしなければ!
「しかし精霊と契約するには相応の魔力が集まる場所が必要なのであーる」
とかなんとか言い出すので
「これぐらいで足りる?」
俺たちがいる、ところから半径30メートル程度に俺の魔力の半分くらいの空間を魔力で維持するようなイメージを持って放出する。
一瞬んサリアさんが赤い目をさらに赤くして俺たちの方をみるが、すぐに元の表情へと戻る。周辺を見てみれば、先ほどまで戯れていた動物たちも脱兎のごとく逃げ出し、周辺は静まり返っている。
タルの方はそこまで変化はなかったが、ゼグサの方はあからさまに目が泳ぎ、手足をプルプルとさせている。
「これほど……十分に足りるのであーる」
などといっているが、今はそれどころじゃない。正直この空間に魔力を留めるイメージは結構大変みたいで、それだけで魔力がどんどん減っている。
それに集中もかなり必要だ、正直俺が先に契約して満足してしまったらタルの時までこの集中を保てる自信はない。
「タル、お前から契約しちまえ」
「わかった」
「契約の仕方は簡単であーる。ここは水が近くにあるから水の精霊がたくさんいるのであーる。その水の精霊が、周辺の魔力を吸って少しの間だけ実体化するのであーる。そして気に入ってくれた精霊が、魔力と同化して契約完了であーる。」
「その話だと契約するのは俺になっちゃうんじゃないの?」
「こんなことができるのは、お前だけだからわからないが、特定の人間と契約を結ばせたい場合は、その者の魔力の玉を作り出して取り込んでもらうのであーる。イメージは力を手のひらに集中させて力だけを浮かせる感じであーる」
「やってみます!」
タルはその発言と同時に、体から魔力を手のひらに集中させる。普通に見るのではわからないが、鑑定を発動させると、手に魔力が集まっているのが分かる。それが体から離れると、俺の魔力とは区別されてタルの魔力が浮いた状態でそこにあるというのがなんとなくわかった。
そしてその魔力が唐突にに消えた…いや取り込まれたのか
「…これが精霊?」
「成功であーる」
俺は全然わからないが、タルにだけ見えている何かがいるのだから、成功なのだろう。
「あんたには見えてるのか?」
「さっきも言ったが、本人にしか見えないのだが精霊魔法が使える者同士は、感覚でわかるのであーる」
なるほどね、まぁ俺の場合は鑑定の詳細を見よとすれば大体わかるのだが…しかし重要なのは精霊の姿だ。本人にしか見えないというのは非常に腑に落ちない!
精霊の可視化について今度考えてみよう。
「んじゃ、俺の番だな。えっと魔力を手のひらに集めて…と」
残った半分の魔力を手に集中させて空間に玉としておいていくイメージをする。すると急激にその魔力がこの空間にあった魔力ごと消失したのを感じた。
あれ?
おかしいな…
精霊って美人って聞いてたんだけど…あれれ?これって
龍
じゃね?
「これは…伝説でしか聞いたことがないが、文献の絵通りの独特な渦巻き状の鱗に一つの牙が二股に分かれている…水龍であーる…」
どうやら俺の目の前にいる、体長20メートルは超えそうな龍は俺以外にも見えているようで、精霊とはまた少し違うようだが問題はそこじゃない!
『我を呼んだ貴様か?小さき人族よ』
「約束と違うじゃねぇか!!」
『え!?』
大層な威厳を醸し出しながら、魔力を用いた脳内会話をしてきた水龍に対して俺は文句を並べる
「俺は、美人な精霊と契約できるっていうから、やったんだぞ!チェンジだチェンジ!!!」
「お、落ち着くのであーる!水龍は神、怒らせでもしたら世界が崩壊してしまうのであーる!」
「落ち着いていられるか!!俺が望んだのは美人な精霊だ!それに俺の知ってる神様はもっと美人だったぞ!美人になってから出直してこい!!」
俺の叫び声に怒りを覚えたのか、水龍は静かに俯いた。
さきほどまで纏っていた雰囲気というか強者特有のオーラは影を潜め
大きな目から水を…っていうか涙を流した
『ひどいじゃないですかぁぁ!せっかくアタシのデビューなのにぃぃぃ!!』
駄々っ子のような叫び声をあげながら声に衝撃波を乗せる。
あれ、なんか全然防御できてない…それに…
アタシ?
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種族:水龍 ♀(17)
名前:未
魔力量:500000
契約者:ケンヤ
スキル:水魔法を極めし者(S)不死(S)破壊(S)龍の力(B)神眼(A)感覚共有(S)
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あ、こいつメスだ…勝てねぇわ
ブクマしてくれると嬉しいです!




