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雪の降らない冬の街中で  作者: 鯣 肴


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第十六話 見守った訳 後編

「まっ、いいじゃねぇか。俺らはあいつらを手助けしたかった。これまでよくしてくれたあいつらの為に」


 そうやって、話はまた最初に戻る。


「馬引。貴方はどうしてそこまでしたの?」

「聞いて欲しいんでしょ? 馬引。言っちゃっていいのよ。言いたいんでしょう?」

「あの子たちの後を追いかけず、からかいに出るでもなく、こうやって、離れて、私たちだけ連れてきてこうやって話をしてるっていうのはそういうことよね?」

「馬引。聞きたいのよ、私たちは。きっと、貴方の理由は、素敵できれいなものだと思うから」


 その通り。馬引は言葉にして言いたかったから。誰でもいい訳じゃない。雹と同じように、ばかにしない、からかわずに、真摯に聞いてくれる者でなければ、そうやって吐き出すことに意味はなくなるのだから。


「そんなたいそうなもんねぇよ。へへっ。ずっと昔のことが。たぶん、あいつにとっては些細なことさ。きっと、言ったってピンとも来ないだろうさ。覚えているのはただ俺だけ」


「勿体ぶるわね」

「それだけ大切な思い出、なのねぇ」


「そうさ。とっても単純なことだ。あいつは、あいつだけは、俺を笑いものにしなかった。俺の夢を聞いても。俺がそのためにやる色々を、そんなの無理だとか、やめろとか邪魔してこなかった。無理に賛同したりもしなかったし、けれど、見ていてくれた。大人たちから庇ってくれたしな。あんま効果は無かったが。それでも嬉しかったよ」


「うんうん」

「うんうん」


「俺の夢は、企画屋だ。色々な思いつき。ちょっと等身大の大きなこと。思いついたらやってみる。今回の、道路にスケートリング作ったのもその一環だな。どうだ? ばかげているだろう? わざわざそんな、ガキの思いつきのようなこと、思いついても、頭の中だけで終わる話だ。実際にやるとなったら、機材の準備から、周りとの示し合わせ、折衝。長い準備期間を経て、当日。気温と日差しが弱くなければ台無しになる。お前らは手伝ってくれた。否定もなしに。あいつ以外には初めてさ。雪ちゃんもやるって言いだしてくれてたが、それよりもあいつと絡ませたかったからなぁ」


「バカにされるようなことかしら、ねぇ?」

「素敵なことじゃないの?」


「お前らはそう言ってくれる。一切の虚飾なく。そういう奴はほんと、稀だ。そりゃ、言いたくなる。抱えてきたものを打ち明けてもいいんだって。肯定してほしい訳じゃない。それでも、否定せず聞いた欲しかったんだ。俺も自信が無いのさ。今も昔も。夢へ向かって歩けてはいるけどよ」


「聞かせてくれてありがとう、馬引」

「やっぱりとっても素敵だったわ。馬引」


「よせやい。照れるじゃねぇか」


「いいのよ照れて」

「そうよ。それを笑うものはここにはいないのだからね」


「ちょっと、落ち着いてくるわ。飲み物取ってくる。何がいい?」


「おまかせで~。面白いのお願いね~」

「じゃ、私は何か変わっててるけどおいしそうなやつで~」


「はいよぉ」






「俺もそうだが、お前らもそうで。俺はあいつに。お前らは雪ちゃんに。自信を持たせてくれた礼をしたかった。で、できることは丁度、優しくても自分に自信がないあいつらに、自身を持たせてくれる相手を用意すること。俺はあいつにそうできなかったから。お前らはどうなんだ?」


 並ぶ三つのグラス。


 色々混ぜたと申告しているが、何故か透明な液体のグラスが一つ。とっても赤色で、濁りが目立つものが一つ。どろりと黄色のものが一つ。


 どろりとした黄色のものと、とっても赤色のものを、二人は交互に口にちょびちょびしていた。おいしい、というような顔をした後、後味に不思議な顔をして、互いの顔を見合わせるというのを時折。


 馬引の前には透明な液体のグラスが残されていた。


「似たようなとこよ」

「聞いても面白くもないことよ」


「じゃっ、聞かねぇわ。聞きたいところはもう聞けた訳だしな。とにかく、こじれず上手くいって、ほんとよかったよなぁ」


「そうね」

「ほんとようよね」


「願わくば、あいつらがこれからも自信を持ち続けていけるように、乾杯」


「乾杯」

「乾杯」


 心地よいガラスの音が響いた。

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