第十一話 そうしてみんな集まった
「それは酷い言いようねぇ~」
「それは酷い他人振りじゃないのぉ」
そう、声を揃えて、フードとニット帽とゴーグルを取り、少し開いて、立っていた足を、いつものようにくにゃっと内股に曲げたんだから、
「はぁ~。二人共やめてよぉ。僕ちょっと、変な覚悟しちゃったてたんだよ」
糸目でおかめっぽい感じなのが立子さん(本名:立山君)。目がくりっとした瓜型の小さい顔の方が冬美さん(本名:冬晴君)だ。背丈は二人とも180センチ超えで、とってもうらやましい。そんなトランスジェンダーの二人組。語尾を伸ばすのが立子さんで、伸ばさないのが冬美さんだ。二人とも演じるのが上手いから、偶にこんな風にイタズラされるんだよね。
ふぅ、良かった。怖いことにならなくて。
トスッ。
拍子抜けする勢いで、そのままその場にへたりこんで、
スッ、バッ!
「冷たっ!」
僕は思わず、すぐさま立ち上がった。
「プッ、ふふ」
後ろから聞こえた笑い声。そうして、僕は、気付いた。どうやら、お二人は、雪ちゃんに予め目配せしていたみたい。
う~ん、でも、そうだなぁ。雪ちゃんなら、普通、僕が下がってっていっても、下がらないよね。……でもまぁ、
「酷いよぉ、雪ちゃん、気付いてたなら言ってよ~」
取り敢えず乗っておいたらいいよね。
「ありがと。かっこよかったよ、雹くん。ふふっ」
後ろに手を組んで、体を傾げるように、雪ちゃんは微笑んだ。僕に向けて。僕にだけ向けて。ふふ。
そして僕が振り返ったら、二人は、僕に悪意ない笑顔を向けている。何か、とっても優しい目で。何だかそれを見ていたらい、まぁ、いっか。
カタン。
カタン。
「おいしょっと~」
「どっこいしょぉ」
と、トラックに積み込んであったパイプ椅子を出してきて、座った二人に僕は尋ねた。雪ちゃんはちょっとお花を摘みに行ちゃったし。
「あれ? 二人は滑らないの」
僕は、二人にそう尋ねた。分かっていたけど、一応。だって、化粧がいつも通り、見掛け重視で、汗のことあんまり考えてない感じだったから。何だか、こういうの、いつの間にか分かるようになったんだよなぁ。付き合いって人を変えるっていうけど、本当なんだなって、自分自身を見て実感しちゃうよね。
「えぇ~。だって、雪焼けならぬ氷焼けとか、結構すんごいのよ~?」
「そうよぉ。それにぃ。見てる方が楽しいからねぇ。貴方たちをさぁ」
ん? どういうことだろう? だから取り敢えず、リピートしてみた。
「たち、ですか?」
「そうよ~。たち」
「そうそぅ。相手がいてこその恋、でしょ?」
「それに、私たちさ~、片づけ要因なのよ~」
「そうそぅ。それに、私らが見たいのはぁ、君が雪ちゃんに今日こそ告白できそうか見守る為だし、ねぇ。だってこれ、絶好のチャンスよぉ? 上手いこと二人っきりになりなさいなぁ。おとこのこぉ。ちょっとこっち来て」
ガスッ、ガスッ。
「いいですけど」
「背中向けて~」
ぐるっ。
何なのかな?
「向けましたよ」
パシッ!
パシッ!
「「ほら、がんばってぃ~」」
うん、がんばりますよ。僕だって、元からそのつもりだったんだし、後押し、ありがと。でも、素直には言いたくないなぁ。だって、イジり入ってるし。
うん、
ぐるっ。
ここはやっぱり素直に、
「はいっ。今日こそ、白黒つけますよ。……あっ。今日こそ決めてきますよ!」
あっ……。白黒つけるじゃ、この雪なら、ちょっと景気が悪いよね。
「お待たせ~、雹くん~」
トスッ、トスッ、トスッ、トスッ――
と、遠くからかわいらしい足音とほんわりとした声が、聞こえてきた。




