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美の定義  作者: 七草
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榊レイ。18歳。

黒く硬いちぢれ髪に、控えめに見てもかわいいともきれいとも言えない容姿。

べつに体重はそんなに重くない。やせているわけではないが、そう太っているわけではない標準体型、の、はずだ。それなのに、どこかずんぐりむっくり、手足は短く野暮ったく見える。

情けない八の字眉、ぎょろっとしたどんぐり眼、これまた丸い団子鼻にぼてっと主張の激しい口角の下がった唇。


私が持っているものは、それで全てだ。

人は私をブスという。






人間、顔が全てだ。

私は今までの18年間でそれを嫌というほど味わってきた。



あだ名は早々にブサイクで定着し男子にはばい菌扱いされ、女子にはくすくす笑われた小学生時代。

二人でくっつけて並べるはずの机も必ず離されたし、給食当番は私だけ飛ばされて回っていた。

いわく、ばい菌に配膳されたらまずくなる、と。

毎日が辛かった。友達なんて出来なかった。

先生は気づいていたはずだけどなにも言わなかった。



中学に上がりいじめこそなくなったものの、私は誰にも相手にされなかった。

友達は一人だけ出来た。私の今までの学生生活で唯一のきらきらした思い出だ。

その子もすぐに家庭の事情で転校してしまい、また私は一人ぼっちになった。


私は、ずっと、一人ぼっちだった。






目の前の扉を開ければ、屋上特有の湿った風が流れる。

私が在籍している学校は海沿いかつ、小高い丘の上に立っているので潮風が直接吹きつけられるのだ。

自身を守るフェンスを自ら乗り越え、丘のふもとに広がる町並みを眺める。


私の人生が終わるであろう今日も、人々の営みは絶えず流れていく。

そこにはたくさんの人がいてみんなが笑顔で忙しなくすごしている。

その輪に自分が入れないことがただただ、悲しかった。




慣れ親しんだ全てにさよならを決めそして全てを捨てる為に、思いっきり足を踏み出した。

途端にかかる重力に私は意識を手放した。






榊レイ。享年18歳。

自分の醜い容姿と自らを取り巻く全てに絶望しての、飛び降り自殺だった。








※高いところから飛び降りても、異世界には行けませんのでお止めください。

なお、自ら命を投げ出そうとする行為を奨励する意図は一切ありません。命大事に。

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