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頬を伝うこの涙は透明
彼視点です。
彼女が病になった。
病名はガンだと聞いている。
2週間前に発覚し、
隠していたのだそう。
たくさん泣いて、
たくさん話した。
その日、僕は
行ける日は必ず行くと
約束して、家に帰った。
部屋にこもって、
ベッドに寝転ぶ。
今までの五年間を
振り返った。
ねえ。
君は僕に
色々な表情を
見せていたよね?
嬉しい時とか
悲しい時とか
怒ったときとか。
表情豊かなくせにさ。
隠すのだけは
妙に上手いんだよなあ。
自分の知らないところで、
辛い思いをしてきたの?
そう思うと、
涙が勝手に出てきた。
透明で綺麗で、
でも無駄な涙。
悲しい顔を
させたくなかったから?
別れたくなかったから?
何で気がつけなかったんだろう。
思えば苦しそうだったでしょ?
無理して笑っていたような。
僕はまだ、
大人の姿をした、
幼い子供だったみたい。
自分が憎いよ。
彼女がいないと、
何もできないくせに、
力になれなかったなんて。
僕は魔法使いじゃないから
君の病気を直すことはできない。
でもね、
君に楽しい時間は
たくさんあげられるんだ。
だから
行けるときとか言わず、
毎日行くよ。
少しでも
長く過ごしていたいから。




