泣いてもいいですか?
「一年後とかで
いいからさ、
旅行行こう!
例えばこことか。」
彼が楽しそうに
話しかけてくる。
「うん、行こう!」
ごめんなさい。
約束してしまったけれど、
私は行けないや。
1年後に私はいないから。
考えるだけで
さっきまでの笑い顔が
崩れてしまいそうになった。
涙が出てくるよ。
顔をそむけて、
空を眺める。
「どうしたの?」
「あ、空が綺麗で。」
ううん、ごめん。
これも嘘。
本当は青空が嫌い。
私はもうすぐ青空に
なっちゃうんだから。
…。
微妙な空気が流れ、
彼が言った。
「ねえ千夏。」
「何?」
「最近変だよ?」
変に決まってる。
「何かあったの?」
あったよ。
彼は心配の気持ちで
言ってくれているんだ。
分かっている。
でも私には
痛みだけが伝っていた。
黙っている私に
こっちを
向かせようとしたのか、
彼が手を引いた。
あ…
手をひかれて、
泣いた顔と、
震えた手が、
あらわになってしまった。
「え?どうしたのこれ…」
私を見て呆然とした、
顔が目に焼きつく。
どうしよう。
「何でもないから。」
「何でもなくないよ!」
普段は大人しい彼の
大きな声が病室に響く。
「これ、本当に風邪?
大丈夫って顔じゃないよね?
ちゃんと話して!」
彼の真っ直ぐな瞳は、
私の中の毒を抜いていく。
気がつけば夢中で、
本音を話していた。
「あ……あのねっ…
わたし…もう長く…
ごめん…」
私の本当の心。
泣きじゃくって
聞き取りづらい声に
「何でっ……
馬鹿じゃないの……」
と聞き取りづらい
声で返す。
幸せだったのに。
悲しい顔を
させたくなかったのに。
ねえ、神様。
どうして私を選んだの?




