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大丈夫だから笑ってよ
それは、
夏風に吹かれていた時だ。
急に体が重くなって、
苦しくなって。
自分でも、
危険を感じた。
駆けつけた人達は
みんな焦っている。
何か語りかけているようだが、
意識が遠くなって
目の前が霞んでいった。
そんな時、
ガラッとドアを開ける音がして、
次に何かが落ちる音。
彼が来てしまった。
「え……千夏…」
言葉も出ないくらいなのか。
震えている。
「あ…あぁ…」
とうとう死ぬの?
意識があるのに、
苦しくて、夢でも見ているよう。
そうだ。
まだ動けるうちに
彼の泣き顔に触れたかった。
手を伸ばした先の
暖かい感触。
あぁ、生きている。
私はまだ生きている。
泣いている彼に伝えないと。
「大丈夫。」って。
お礼は1番最後までとっておきたい。
「大丈夫だよ」
精一杯の笑顔で笑った。
大事な時間の中、
私は幸せだから。
ね、笑ってよ。




