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夏の世界
夏真っ盛り。
病院の窓、
いつもは大人しく
揺れている風鈴さえも、
激しく音を鳴らす。
雲はまるで、
金魚のような形。
大空を泳ぎまわっている。
全てが夏を楽しんでいるようだ。
私は夏が好き。
風鈴や花火の夏。
でも、今年は楽しめなさそう。
白い天井の下じゃ、
なにも変わらないよ。
そう分かっている。
なのに体は、
まだ動くと嘘をついて
私を外に誘ってくる。
だって、気がつけば
手を伸ばしていたんだから。
馬鹿じゃないの。
そういえば、
最近毎日泣いている。
目は腫れるし、
彼に心配かけてしまうし。
ああ、嫌だなあ。
でもね。
目を閉じると
夢の世界は理想。
だから、
案外悪くは無いね。
ずっと永遠に
ここにいても
いいと思うくらい、
生きやすくて。
「千夏。」
毎回、毎回。
忘れようとしている
夢の中ですら
彼が出てくるんだ。
そして私を呼ぶの。
私はその声に誘われてしまう。
もう一体、
何がしたいのか分からないや。




