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朝焼けの光に照らされて
聞こえてくるのは
泣き声だ。
私はこの声を
知っている。
さっきまで聞いていた声。
「ここは?」
見下ろすと
いつもの景色が、
小さく見えて。
そう、私は空に浮いていたのだ。
「死んだ?」
いや、
死んだわけではなさそう。
空を飛んだ蝶々が、
ふわりと揺れて光っている。
いつもと違うから、
これは夢だ。
浮いた私は
まるで花びらのように
風に左右されて、
病院まで辿りついた。
すうっと窓から入る。
「幽霊みたいだ」
何だか楽しい。
呼ばれているかのように
勝手に体が動いていく。
向かっている場所は
きっと私の病室だ。
泣き声が段々大きくなって…
たどり着いた時、
この泣き声は明らかに
この部屋から、
そして、
泣いているのは彼だと
いうことが分かった。
「私はいったい……」
開けるのが怖い。
死ぬ間際を
見なくてはいけないのだ。
鏡のように写された、
この醜い姿を。
でも… 開けなくては。
そっとドアを開けた。
近くで泣いている
彼の涙を拭う。
そして、
その視線の先に見えたのは
弱りきった自分だった。
息もか細い。
私の望んでいたのは、
笑って別れるもので、
涙で見えなくなるくらいの
別れじゃないはず。
今の自分に何が足りない?
いずれこうなってしまうの?
しゃがみこんで頭の中で唱えた。
「目覚めろ」と。
意識が遠のいていく。
「おはよう、千夏。」
朝焼けの光に照らされた、
彼の笑顔が見えた。




