ひかる 女子高生、携帯写真家、殺人鬼
人気のない道、通りすがりの誰かに呼びかける。
振り向くと同時に、カッターの刃を走らせる。
的確に喉笛を捉える。
今日も鮮血が飛び散る。
終わったらケータイのフラッシュも飛ぶ。
200件以上にも及ぶ画像をスクロールしていく。
おじさん、お姉さん、猫、カラス、おばあさん、宇宙人。
飼い犬のユーヤはこの時だけ黙っている。舌も出さない。
みっつだけ、殺せなかった。
踏切の前にいつも佇んでいる青年。カッターの刃が折れた。ノド堅ッ
隣のクラスの女の子に女子トイレで切りつけた。いっぱい血を出してから傷が塞がった。怖ッ
高台の幽霊。予想してたことだが、透けた。
『ああ、あなただったんだね』
とか言われたから、帰りに塩を買って肩に振りかけた。ユーヤがくしゃみをした。
失敗しても写真は撮る。むしろ、こういった写真を撮るのが目的だったりする。機嫌がいいのでユーヤにちくわを二本あげる。
今日も久々に、殺せなかった。
まさかペンギンに飛んで逃げられるとは思わなかった。
仕方がないのでペンギンの影越しに、抜けるような蒼い空を撮った。すごく嬉しかった。
それに写った巨大な爆弾。巨大な殺意のカタマリ。
震えとにやけが止まらなかった!
私にだけじゃない、この町全部に向けられた殺意、悪意、敵意!ゾクゾクする!
ユーヤはちくわを腹一杯食べた。