表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

*3*

*3*


 そんなこんなで、授業での勘違いをきっかけに、わたしと安宅田さんは友達と言えるような関係になりました。

 授業の合間にとりとめのない話をして、時たま一緒にお昼ご飯を食べたりして。けれど、あの授業からこちら安宅田さんの笑顔はついに拝めずにいました。

 さらによくないことには、わたしと話すようになったことが災いしてか、生徒たちが安宅田さんに奇襲を仕掛けるようになったのです。奇襲、というのはつまり不意打ちの告白でした。

 ある時期を境に、彼女の周りでにわかに告白ブームが巻き起こったのです。下駄箱はポストと化し、安宅田さんの机には常にひとつふたつとプレゼントが詰め込まれていました。下校の際にはだいたい中庭か屋上に呼び出され、彼女をして好きだと言われない日はなかったと言わしむるほどの状況が続いたのです。

 安宅田さんはいつも通りの無表情でさらりと言ってのけましたが、わたしは内心気が気ではありませんでした。

 もしも誰かの告白が安宅田さんの心に届いてしまったら! いいえ、それだけではありません。もしも不恰好な告白をしたひとがいたとして、安宅田さんが思わず笑ってしまったら!

 この学校では、もしかしたらこの世界でもわたしだけが知っているあの笑顔が、わたしだけの笑顔が、誰かのものになってしまうのです。ああ、その恐ろしさと言ったらありません。

 ここに至って、わたしの中には焦りと同時に疑念が沸き起こっていました。

 もしかしたら、幻を見たんじゃないか。あの安宅田さんが自分にだけ笑顔を見せてくれるのだろうか。わたしがそう望んでいるだけじゃないのか。

 そんな負の連鎖を断ち切るために、わたしは思い切って決戦を挑むことにしたのです。

――それが、バレンタイン会戦でした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ