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ニートな彼女  作者: 反兎
8/12

災難と災難


近藤マチはいつものように万年床の布団の上で、ダラダラとテレビを見ていた。


コンコンコン−−


いつも通りハジメが来たとマチは思ったが、いつもと違い何故か入って来ない。

(何で入って来ないんだ…?)

マチはちょっと訝しそうにドアの方を見る。

わざわざハジメの為にドアを開けに行くのは面倒臭いとは思ったが、入って来ないのは何だか気持ち悪く、マチはドアを開けに行った。


ガチャ…


マチがドアを開けるとそこにはハジメではなく、意外な人物が目の前に立っていた。



その頃、当のハジメはというと−−−−


マチの所に行く為に出掛ける所だった。

玄関を開けるとタイミング良くミキも出て来てかちあった。

ハジメはタイミングが良すぎて、ちょっと心臓が止まりそうな程驚き、ドアを開けた状態のまま固まった。


「よう、坊主。元気か?」

(坊主って…2歳しか違いませんよミキさん…)ハジメはそう思いながら答える。

「はい!とても…」

笑顔が引き攣り、どうしてもぎこちなくなってしまう。

それでもカレーのおそそわけから少しミキに耐性が出来たハジメ。

チラチラッとミキを見ながら(相変わらず迫力あるなぁ〜)と思っていると意外にもミキが話しかけてきた。


「あんたまだマチの通い妻してんの?」

(通い妻!?)

まさかのミキの発言にハジメはどう答えたらいいのか解らず、疑問文の「…はい?」になる。

「そう。じゃあ、サンマー行くよね?だったらついでにあたしの買い物も行って来て」

「…え…」

「買い物リストあるから、よろしく」

ハジメの返事など聞かずメモを渡して、当たり前のようにミキは家に戻る。


「姉妹そろって俺を使いっぱしりにするつもりか−−−!!?」そう叫びたくて仕方ないハジメの口から出たのは溜め息だった。


「はぁ〜…」


(どうなってんだよ近藤姉妹……。もしかして−−、俺が出て来るの見計らって出て来たんだろうか?)

などと、あのタイミングの良さにハジメはミキに疑問を抱く。

だが、(まぁ、いいや…)と諦めてミキの買い物に行く。


姉妹そろって同じ事をするが、一つだけ違ったのはミキは『前払い』で『買い物リスト』があったという事。(あ、二つだった…)


しぶしぶハジメはサンマートに向かう。

(別に待ってないだろな)とは思ったが、一応マチに『少し遅れる』とメールをした。



ハジメの思いとは裏腹にマチはハジメが来るのを待っていた。



実はドアの前に立っていたのはショウヘイだった。マチはビックリし過ぎて一瞬固まった。


「よっ」

そんな事はお構いなしにショウヘイは飛び切りの笑顔で挨拶する。

「うわぁ!!?」

正気に戻ったマチは反射的にドアを閉め、鍵をした。


「おーい、どうして閉めるんだよマチ〜」

ドアを叩きながら問い掛けるショウヘイ。

「せっかく来たんだから入れてよ〜。ねえ、マチ〜。マチちゃーん…」

しつこいショウヘイを無視して、マチはドアに背を向け耳を塞いで屈み込み、何故ショウヘイがここに居るのかを考える。


(何でここが判った?いや、それより何で知ってんだ…?ハジメが言うとは思えない−−−。じゃあどうしてアイツがここに居るんだ!!?てか何でこういう時に限ってハジメ来ないんだよ!!いつもならああいう煩いのはプーさんが追っ払ってくれるのに…、出て来ないって事は居ないんだな−−−−)


「………」


(どうしよ〜?誰か〜

もう…、とっとと来いよ!ハジメーーー!!)


マチはがっつりハジメの事を待っていた。



そんな事とは露知らず、その頃ハジメはサンマートでミキの買い物をしていた。


「ミキさん酒ばっかだな…。マチは惣菜や菓子ばっかだし、この姉妹はどうなってんだよ…偏り過ぎだろ…」

ミキの買い物リストは酒とつまみだった。そして種類をとても詳しく書いてあった。

(やっぱミキさん狙ってやったのか…?)

ハジメの疑いは確信へと変わっていく。


ミキの買い物を終わらせミキに持って行く。


「ありがとう、まぁ上がんなよ」

そう言われハジメは断れずに(ミキの部屋に興味もあった)上がるとプーさんと自分の姉のミキが居た。

「うわっ!?」

2人が目についてハジメは驚いて声をあげてしまう。

「よう!ハジメ〜ひっく…お使いご苦労」

ミキ(姉)がいつもじゃみせないような笑顔でハジメに抱きつき頭を撫でる。

「うわ…酒くせぇ…」

「お前はいい子だな〜…」

「うわっ!やめろ!!」

しっかり出来上がっているみたいで、姉ハジメにキスをしようとする。ハジメはそれを全力で拒否する。

「ちょっと…誰かコレ止めてくださいよ!!」

ハジメは他2人に訴えるが、プーさんは机の上に突っ伏しているし、ミキは酔ってなさそうに見えてがっつり酔っているみたいで、ハジメの方を指差して笑っている。


「ちょっと…2人とも!お前マジやめろって!!」

姉は相変わらずハジメにキスしようとしている。

昼間っから酒を飲んで酔っ払っている大人達にハジメは辟易していた。


(うわ…もう最悪だ…)


ハジメは軽い気持ちでミキの部屋に上がった事を後悔していた。



その頃マチは−−−


(帰ったのか−−?)


外が静かになったので、マチはショウヘイが諦めて帰ったのかなと考えていた。

プレハブのドアには覗き窓がないので確認ができない。

マチはどうしようかと考えた挙げ句、ドアを開けて確認する事にした。


カチッ…


鍵を開けてドアを開けようとした瞬間、外からドアを引っ張られた。


「残念〜まだ居るよ」


マチは驚いてドアを閉めようとする。だが、ショウヘイはドアを開けようとして、お互い引っ張り合いになる。


「ちょっ…しつこい!嫌がってんの解んないの!?」

「せっかく来たんだから相手してよ」

「そんな…あんたが勝手に来たんだろ!!」

「だって俺、マチの連絡先知らないだもん」

「どうせ知ってても連絡せずに来るくせに」

「うん。連絡してから行ったらマチ逃げるだろ」

「解ってんなら止めてよね…」

「いや〜逃げられると追いたくなるって言うじゃん」

「知るか!!」

マチは頑張った。が、さすがに男の力には敵わず競り負けた。

「へ〜ここがマチの部屋か〜−−」

ショウヘイは部屋の中を見回して言う。

「物置みたいだね」

(ぐっ…)

マチは否定できなかった。荷物は段ボールに入ったままだし「物置」と言われても仕方ない。

ショウヘイは勝手に家に上がろうとする。それをマチが押し止める。


「勝手に入るな…」

余りにも必死にくい止めようとするマチを見て、ショウヘイはイタズラ心が騒いだ。

「えいっ」

「うぎゃっ!!?」

ショウヘイはマチに抱き着く。マチはいきなりの事にパニックになり、ショウヘイの股間を蹴り上げた。


「うげ…」

今度はショウヘイが驚く番だった。まさかのマチの反撃にショウヘイは踞る。

「マチ…さすがにこれは酷いぞ…」

「…あ」

その場に踞り痛がるショウヘイにマチは少し罪悪感を感じた。しゃがみ込んで聞く。

「…ごめん…大丈夫?」

「大丈夫じゃない…」

マチはどうしたらいいのか解らなくて困り果てる。


(もう…何でこんな目に−−−)


どう考えてもこの原因を作ったのはショウヘイだと思うが…、マチはこの状況に嫌気がさしていた。



その頃ハジメも嫌気がさしていた。


「うひゃひゃひゃ、おい坊主!お前も飲め!!」

「いや…俺はいいです」

「何だぁ〜?てめぇはあたしの注いだ酒が飲めねーのかぁ?あぁ?」

「いえ…そういうんじゃ…」

ミキは笑い上戸に絡み酒だった。

「ハジメ〜」

そして相変わらず姉はハジメにキスをしようとする。

「もう、マジ勘弁してくれって…」

「そんなにあたしの事嫌いなの…」

「え…!?」

今度は泣き出した。姉はキス魔の泣き上戸だった。

(もう本当勘弁してくれよ…)

「あぁ!泣かしたー!悪い奴だなぁ〜お前は…プーさん見て見ろコイツ悪い奴だぞ」

「うへへへ…」

ミキはプーさんの肩に手を回して言う。プーさんはもう視点が合ってない。

「ねぇ、悪い所は直すから嫌いにならないで…」

そう言って姉はハジメに縋り付く。

「いや…」

姉にそんな事を言われてもハジメは困る。するとミキがハジメにまた絡んでくる。左にミキ、右に姉で軽くハーレム状態だ。

「ハジメちゃん、ハジメちゃ〜ん…ミキちゃんがここまで言ってるのに冷たいんじゃな〜い?」

「いや…」

「ハジメちゃんはそんな冷たい男だったの〜?」

ミキはハジメのあごを軽く持ち上げて誘うように言う。誘うといっても酔って目が半目だから誘っているように見えるだけだが…

さすがのハジメもこれには緊張した。ミキの顔が近い。

「ぅん?どうなのハジメ…」

「あ…いや…」

(このままキスされたらどうしよう−−)そう思うとハジメの緊張はMAXで、気が付いたら目を閉じていた。だが、いくら待っても何もおこらなかった。

するとミキはハジメを通り越しハジメの右隣りで泣いている姉に話しかけていた。ミキがミキ(姉)に言い寄っている。

「あぁ〜ミキちゃん泣かないで〜私が慰めてあげるから…」

そう言ってミキがミキ(姉)にキスをした。ハジメは目の前でそんな光景を見せられてあまりの衝撃に心臓が爆発しそうだった。

姉のキスシーンなど見たくはないが、それがミキとのキスでハジメは見たいが見たくないで複雑だった。

だがちょっと激しさを増してきて直視出来なくなった。だが、音だけは聞こえてくる、ハジメは興奮して鼻血が出そうだった。


その頃マチは、この状況をどうにかしようと画策していた。


考えた結果、マチは踞っているショウヘイをさりげなく外に追いやろうと、ちょっとずつショウヘイを外の方に押していた。

「おい!この期におよんでまだ追い出そうとするか!?」

「あ、バレた?」

「バレるわ!バレないと思う方がどうかしてるわ!!」

(チッ…)

マチは心の中で舌打ちをした。

「たく…マチは悪い事したと思ってないんだな…俺をこんなにも傷つけといて…」

(ウザいな…)とは思ったが悪いとは思っているので謝る。

「いや…悪いと思ってるよ…ごめん…」

「じゃあ俺の言う事1つ聞いて」

「何で?」

「悪いと思ってんなら態度で示さないと」

「示してるじゃん」

「どこがだよ…痛がってる俺をさりげなく外に出そうとしてたくせに…」

「……」

反論出来ない。でもマチはこれ以上ショウヘイと関わりたくなかったのでその申し出を断固拒否した。

「あんたの言う事なんかろくでもなさそうだから絶対イヤ!」

「じゃあ俺ここから1歩も動かない」

「ガキか!帰れ」

「ヤダ」

「帰れ!」

「ヤダ」

それから何分間かはずっと「帰れ」「ヤダ」の繰り返しだった。

「はぁ…」

マチは呆れるしかなかった。自分の目の前からショウヘイを退かす為にはショウヘイの条件をのまなければならない。

考えた末にマチは妥協してショウヘイの言う事が何なのか聞いてみた。

「言う事って何?何したらそこから居なくなってくれんの?」

ショウヘイはマチが折れた事に満足そうに答える。

「そろそろ夏だし、夏といったら海だろ」

「…だから?」

「一緒に海に行こう」

楽しそうに言うショウヘイ。マチはその台詞を聞いて顔が引き攣った。

「ヤダ!」

「何で?」

「夏に外なんて…そんな暑いと解ってる灼熱地獄になんて行きたくない!」

「まあ暑いのは夏だからね。海は夏の醍醐味じゃん。行こーよ」

「そんな醍醐味、私に必要ない!」

「そんな事言わずに行こ」

「ヤダ」

「行こ」

「ヤダ」

今度は「行こ」と「ヤダ」の繰り返しになる。


「じゃあ俺ここから動かない。てかここに住もうかな」

「は!?何でそうなるの?」

「だって俺ニートだし。別に住む所なんてどこでも問題ねーもん」

「こっちには問題あるわ!」

「それはマチの問題で俺の問題じゃないだろ」

マチは息を吸い込んで驚く。

「何て自分勝手な…」

「そりゃお互い様って事で。ここに居れば毎日マチに会えるし。まぁそれがダメでも俺ヒマだから毎日ここに通えるし」

ショウヘイは楽しそうにマチに言う。マチは言葉が出なかった。

ショウヘイなら本当にしそうだし、毎日来たとしても無視すればいいが、ハジメと違ってショウヘイはしつこそうでプーさんに注意されてもめげなさそうだ…、なんならドアの鍵すら壊してしまいそう…。

マチは初めて働きに行きたいと思った。そしてハジメの有り難さに気付いた。

マチは心底イヤだが、折れた。


「分かった。海行く…」

「よし!じゃあ約束な」

そう言って指切りまでさせられた。


マチとの約束が決まってやっとショウヘイが帰ってくれた。マチはドッと疲れた。マチは1日分の体力を使い切る程疲れていた。



その頃ハジメも疲れていた。


酔っ払い程、質の悪いものはないと思っていた。


やっと3人とも酔い潰れてくれてこの悪夢の酔っ払い共からハジメは解放された。

ハジメはもうぐったりだった。まるでフルマラソン完走したんじゃないかってぐらい疲れていた。

3人がやっとダウンしてくれたからハジメは部屋の片付けをする。

あらかた部屋の片付けが終わるとハジメはミキの部屋から辞した。


もうハジメはぐったりで今日はマチの所に行くのを止めた。

そうメールを送るとマチから返事がきて『私も疲れたから来ないで』と返信がきた。


なんだかマチもあったみたいだ。

ハジメは何があったのか聞きたかったが、疲れているので止めた。


また明日にでも聞こう−−−

そう思って自分の布団の上でダウンした。



今日は2人とも災難な1日だった。





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