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ニートな彼女  作者: 反兎
7/12

意外な事と気付いた事


今日は珍しく、ハジメはマチ以外の所にいる。


「珍しくは余計だ!!」

「誰に言ってんの…?」

「いや、別に−−」


彼の名前は山下ショウヘイ。中学からの友達で今は車の整備の仕事をしている。ハジメと同じカラオケ屋で働いている山下チエリの兄である。


「あ、俺仕事辞めたから」

「え?そうなの!?てか−−」

(あまりにもタイミング良すぎて、俺の心の解説が読まれてるのかと…)


「新しく来たお偉いさんが役に立たねぇくせに余計な事ばっかしやがるんだよ。しかも俺がやる事なす事文句ばっか…それにミスは全部俺のせいにしやがって、やってられっかっての!!」

「うわぁ、上の人間が最悪だと仕事がやりにくいよな…下がどれだけ頑張っても簡単に無駄にするんだよな」

「本当だよ。前の店長いい人で、皆スゲー仲良かったのに…あいつが来てから地獄だよ」

「まぁ、今は休んでゆっくり次探せよ」

「おう!!ニート生活を満喫してやるぜ」

「おう!!しろしろ」


明るく元気に言うショウヘイにつられて言ったがハジメの心の中は複雑だった。

(なんか俺の周りやけにニートが多くないか…これも時代なのかな…?)


もう一人のニート、マチは今何しているのか…。(考えなくても多分いつも通り、ダラダラとテレビを見ているのだろう)


今日はショウヘイの家でゲームをしている。

一応マチには『今日はショウヘイの所に行く』というメールを送ったが返信は『あっそ』だった。


「くそっ…あぁ〜、また負けた」

ハジメはコントローラーを放り投げ、悔しそうに頭を抱え込む。

「お前弱すぎ…ここまで弱いと言葉もないな」

「うるせぇ…、もう飽きた。DVD借りに行こうぜ」「うわぁ出た!勝てないと判るとスグ逃げる。負け犬全開だな。お前一人で行って来い。ついでに菓子と飲み物も買って来い」

ここでもパシリにされるハジメ。

「えぇ〜すぐそこじゃん!一緒に行こうよ」

「どんだけだよ!はいはい、じゃあ行くぞ」

「へーい」

ショウヘイが自転車を取って来てハジメに渡す。じゃんけんでどっちが漕ぐか決めようというハジメの申し出は却下された。ハジメが前に乗って2人乗りでレンタル屋に行く。

レンタル屋の前の信号で止まって待っていると、道路を挟んだ反対側の信号で待っている女の子が目についた。

(あれ…?あれってマチじゃねーか??)

そう思ってガン見するハジメ。まさかマチが外に居るとは思えないが、見れば見る程マチに見える。

(やっぱりマチだ)と思ったハジメは「おーい!マチ〜!!」と大声で呼び掛ける。

ハジメの思った通り向こう側で信号待ちしているのはマチで、呼び掛けられたマチはハジメの方を一瞥して無視する。

(あ、アイツ無視しやがった!!)

目が合ったのに無視したマチに嫌がらせでしつこく声を掛けてやろうかと思ったが、ショウヘイに話し掛けられて断念する。

「何?知り合い??」

「知り合いって…、お前も中学一緒だっただろ。近藤マチだよ」

「近藤…、あぁ〜!ミキ先輩の妹か!!Wミキ格好良かったよなぁ…。ミキ先輩元気なの?」


俺とマチはどうしても姉ありきになってしまう。

「元気だよ…。元気過ぎて嫌になる」

「彼氏とかいんの?」

「そんなの知らねーよ。てか興味もねぇ…」

「何でだよ!?あんな美人な姉ちゃんいたら毎日ウハウハだろ」

(ウハウハって何だよ…)

友達の死語を聞かされて脱力する。


いつも姉の事を美人だと言われるが、ハジメは自分の姉を美人だとは思えない。乱暴だし女らしさなんて全くない。だからいつもハジメの答えは「そうかなぁ〜?」になる。

「俺はマチの姉ちゃんの方が断絶美人だと思うけど」

「あぁ〜、確かに近藤先輩もイイ!!昔、近藤派か小野派かでよく言い合いしたよな〜」

懐かしそうに話すショウヘイにハジメは心の中で突っ込む。

(俺はしてねーよ)


「でも妹も可愛くなったな〜。昔は野暮ったい感じだったのに」

(野暮ったい!?)


それを聞いてハジメは意外だった。中学の時のマチは清楚とまでは言わないが可愛いらしかった。

確かに地味なグループには居たが…、

(人によって見方が違うんだな)とハジメは思った。


「マチ俺に紹介してよ」

「はぁ!?」

いきなりの紹介して発言と呼び捨てでハジメは驚いた。

「あ、もしかして付き合ってんの?」

「付き合ってねーよ…」

「じゃあいいじゃん。今度地元の奴らと集まる時に一緒に連れて来いよ」

「別にいいけど…」


マチは絶対行かないだろうと思いながら了解した。


ところがその事を次の日マチに言うと−−−


「いいよ」

「え!?マジで??」

「何だよその反応…」

「いや、別に…」


意外な反応にハジメは驚いた。

まさかマチが「行く」と言うとは思わなかった。何だか少し複雑な気持ちがするハジメ。


「ねぇ、あんたは今付き合ってる人とかいないの?」

少し聞きづらそうに聞くマチ。いきなりの質問にハジメは慌てた。

「えっ!?な、何だよ急に…」

「いや…何となく…。別に言いたくないんなら言わなくていいよ」

「いや別にそういう訳じゃあ…、別にそういう人はいない…」

「あ、そう…」


何だか気まずい…。

あまりマチとはこういう恋愛話とかしない。

2人とも気まずくて、変な沈黙が生まれる。



マチがいきなりハジメにこういう質問をしたのには訳があった。


実は昨日ハジメと会って無視した後、図書館に行った帰りにチエリとばったり会った。

マチはそのまま無視して帰路につこうとしていたが、がっしり腕を掴まれチエリに止められた。


「待って下さい!!」

「…何?」

「お聞きしたい事があるんです」

「…何?」

「マチさんは小野さんと本当に付き合ってないんですか?」

「何でそんな事聞くの?」

逆に聞き返されて動揺するチエリ。

「えっ!?何でと言われましても…」

恥ずかしそうに頬に両手をあて、もじもじするチエリ。その隙に帰ろうとするマチ。

「ちょっ、何で帰ろうとするんですか!?」

「いや…、だって何だか面倒臭さそうだから…」

「面倒臭さそうって…私には重要な事なんですよ!!」

チエリに必死にそう言われ、マチは心の中で(煩わしな)と思いながら、引き下がりそうにないチエリに諦めて付き合う事にした。

「別に付き合ってないよ」

「本当ですか!?」

「じゃあ付き合ってる」

「じゃあって何なんですか!?え、え?どっちなんですか??」

反応があまりに可愛いくてマチは笑ってしまう。

「何で笑うんですか!?もう!からかうのは止めて下さい」

「だって付き合ってないって言っても信じてくれないから」

不服そうにマチを見るチエリ。

「…じゃあ他に付き合ったり、好きな人とかは居るんですかね?」

「え…そんなの知らないよ」

「何で知らないんですか!?友達じゃないんですか!?」

(何でって言われても…)そう言われても困るマチ。

「ハジメとそういう話しないし…」

「マチさんは小野さんの事好きじゃないんですか?」

「好きだよ」

マチの言葉を聞いてショックを受けるチエリ。一喜一憂するチエリを見てマチは(大変だな)と思う。

あからさまに落ち込んだ感じのチエリを見て(面倒臭さいな)と思いつつフォローする。

「…別にそういう意味じゃないよ」

「いや、いいんです!男女の友情なんて無いと思ってますから!!」

涙目で言うチエリにマチの面倒臭ささは頂点に達した。

「あ、もう帰っていい?」

返事がないからマチは帰ろうとする。が、またチエリにがっしり腕を捕まれる。

「…何?」

「あからさまにヘコんでるのに、それをほっといて帰るって酷くありません!?」

「いや、別に…」

チエリはマチの返事に驚き、何故かムキになって意地でもマチを帰さないように決めた。

それからマチは永遠とチエリの恋愛話を聞かされ、ハジメとの中を取り持つように頼まれた。『頼まれた』というより、引き受けないと帰れそうにないから強制的に引き受けざるおえなかったというのが正解だ。


(どうしたらいいんだろう…)

マチはハジメとチエリをどうしたらくっつけれるのか考えつかなくて(というより考えるのを放棄していた)

一応彼女いるのかどうか確認したしこれでいいやとマチは一人納得していた。


「行く時一緒に行こうな」

「え、あぁ…」

ハジメはマチのさっきの質問と意外な返事の事で頭がいっぱいで、から返事になってしまう。


その後はだらだらテレビ見てハジメは適当に帰った。

帰り道ハジメは何故マチが行く気になったのか考えた。


どうして行く気になったんだろう?今のマチなら絶対に嫌がりそうな集まりなのに…

もしかしてマチもショウヘイの事気に入ったんだろうか?だから行く気になったのかな…

それならそれで応援してやるべきだが−−−


やっぱりハジメは複雑だった。




集まる場所はショウヘイの家だった。いつも大体ショウヘイの家だ。

集まるメンバーも変わりがなくいつも通りで、皆中学の同級生だがその中でマチだけが浮いていた。

(まぁ俺がマチと居ればいいや)と思っていたが、マチがこういう集まりの場に居るのを初めて見るから、どういう対応をするのか少し見たかった。だからハジメは頃合いを見てマチを放置しようと思っていたが、そんな事をしなくても、どうしてもグループ内の話で盛り上がったりするので、故意にマチを放置しなくても結果そういう風になってしまった。

マチは輪から取り残されても平気そうに本を読んでいる。そういうマチを見ると(何で来たんだろう)と思ってしまう。

俺がそう思ってるぐらいだから他の奴らもそう思っているはずだ。現に女連中は、そう思っているのがありありと顔に出ている。

俺が他の4人とゲームしているとショウヘイがさりげなくマチの方に行ったのをハジメは見逃さなかった。

ハジメはゲームをしながら2人の会話に意識を向ける。


「マチ何読んでんの〜?」

ショウヘイが馴れ馴れしくマチの肩に手を回して話しかける。マチはそれを冷静に払いのけ答える。

「小説」

「ふーん。面白いの?」

「面白いよ」

「俺マンガしか読んだ事ねーや。マチはマンガとか読まねーの?」

「読むよ」

「どんなの読むの?」

「何でも」


なんとも言えない…坦々とした会話が進んでいく。

マチの鬱陶しいから話かけんなオーラを無視して自分の好きなマンガの話しをしているショウヘイに、少し凄いなとハジメは思った。

そしてこの2人のやり取りを見て腹を立てている人物が1人。

ショウヘイの元彼女のミユキだ。この2人は別れたり付き合ったりを繰り返している。ミユキは未だにショウヘイの事を引きずっている。


「ショウヘイ」

ミユキが名前を呼ぶけどそれを無視してマチに話し続ける。無視されたぐらいでへこたれるミユキではない。立ち上がってショウヘイの所まで行き、服を引っ張って呼びかける。

「ねぇ、ショウヘイってば!!」

「何だよ!?」

「聞こえてるのに無視しないでよ!!」

「俺今マチと話してんの見れば判んだろ。邪魔すんなよ」

さずがにミユキもこれにはイラッとする。

「あんた仕事辞めたんでしょ。これからどうするつもりなの?」

「それ今しなきゃいけーねー話しかよ…」

「心配してあげてんでしょ」

「別にしてくれなくていいよ。…ったく、どんだけ上目線だよ」

「何?」

「いえ別に〜。当分はニート生活満喫すんよ」

ニートと聞いて一瞬微妙な顔をするミユキ。

「え…、仕事探さないの…?」

「うん」

「前の所に謝って戻ればいいのに…、次の仕事見つからなかったらどうするのよ?」

「うっせーな〜…、お前に関係ねーだろ。なぁマチ〜」

またまた馴れ馴れしくマチの肩に手を回す。

「あたしに振らないで」

マチはそう言いながら手を払いのける。

元々ショウヘイは馴れ馴れしいというか、男女問わず抱き着いたりするタイプなので相手に好意があるのかどうか判りにくいが、この行動はあからさまにショウヘイがマチに好意を持っているのが判る。

ミユキは自分の方にショウヘイを引っ張る。

「ニートなんて良くないよ!今就職難なんだよ!次の仕事見つからなかったらどうすんのよ?ねぇ近藤さんもそう思うでしょ?」

ハジメは固まった。まさかミユキがマチに話しを振るとは思わず、しかも何故か皆の注目が3人の方に集まっている。ハジメはこの状況をどう回避したらいいのか判らず焦った。

(それをニートのマチに聞くか!!?やばい…どうしよう…。マチ何て答えるつもりなんだろう…)

何とかフォローしないとと思っていると

「あたしもニートだから聞かれても困る」

マチが素直にキッパリと答えた。

そしてその場が一瞬止まり、変な雰囲気になった。

大体の人間が学生でなければ何かしら働いていると思うものだ。だから、意外な返事を聞いた時はどう答えたらいいのか判らなくなるのが人間だ。


人は恥ずかしいと思うものは隠したがるもの。特に他人には。それに自分を良く見せようと見繕うものだと思う。

それなのにマチはそんな事を気にもせず、当たり前のように本当の事を言った。

ハジメは見繕えばいいのにと思った。何でも本当の事を言う必要はないのだ。

ミユキもこの答えを聞いてどう接したらいいのか判らず他の人がするようにフォローした。

「…まぁ、今のご時世、仕方ないよね。ショウヘイもニートだし…」

引き攣りながら笑顔で言う。マチはそれに対して何も反応せず本を読んでいる。

気まずい雰囲気は続いたままだ。(俺がなんとかしないと!!)とハジメが行動に移そうと思ったら、ショウヘイが大声で笑い出した。

「あははははは…、マチ面白いな〜。ニートなの?俺と一緒じゃん」

そう言ってまたマチの肩に手を回す。

「いや〜、気が合うね〜」

嬉しそうに話すショウヘイ。ただ本当に、マチが自分と同じニートで嬉しかったんだろうが、ショウヘイのバカ笑いのお陰でその場の空気は戻った。

「じゃあこれからいつでも会えるね。俺達」

「遠慮します」

そう言いながら3度目の手を払う。

「そんなつれない事言うなよ〜」

どれだけ冷たくあしらってもヘコたれないショウヘイにマチは溜め息をついた。そして立ち上がりショウヘイに一言。

「鬱陶しい」

そう言って帰って行った。ハジメは慌ててマチを追い掛ける。


「おい!こら待てマチ!!」

ハジメが呼んだぐらいでマチは止まったりしない。だから腕を掴んで引き止める。

「待てって言ってんだから待てよ!!俺も一緒に帰る」

マチは何も言わずにハジメの言葉を聞き、そのまま2人で並んで帰る。

道すがらハジメは聞きづらいが聞いてみたた。

「何でお前、今日来たの?」

「分かんない。ただ何となくかな…、まぁ2度と行かないけど」

(でしょうね…)

ハジメは疑問に思った事を聞いた。

「お前何で嘘つかないの?」

「何が?」

「ニートだよ。別に本当の事を言う必要はないだろ。あんなの適当にあしらっとけばいいじゃん」

そう言われてマチは少し考えるようにして、

「別に嘘つく必要もないと思ったからかな?それかどんな反応するのか見たかったのかも」

「反応って…?」

「あたしがニートだって聞いた時の世間の反応」


それを聞いてハジメは何とも言えない気持ちになった。

そんな事をして何になるというのだろう−−−?


「生き辛い世の中だよ」


マチがボソッと言ったのをハジメは聞き逃さなかった。その言葉を聞いてハジメは少し足が止まった。

マチはそのまま歩き続ける。その後ろ姿を見ながらハジメは思った。


もっと上手く立ち回ればいいのに……

何でそんなに不器用なんだろう−−−−


ハジメはどうにかしてやりたいと思う半面、そんなマチを憐れだと思った。

今までマチをそんな風に思った事はない。

昔は誰とでも上手くやってる、明るい奴にしか見えなかった。

いつからマチはこんな風になってしまったんだろう−−

昔からこういう人間だったのだろうか−−?



今日初めてハジメは、マチに少し距離を感じた。



「ニートな彼女」をご覧になっていただき有難うございます。

誤字脱字が多いかもしれませんが、それもご愛嬌という事で(笑)


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