第二十七話
神域の戦線は崩壊寸前の危機に瀕していた。
「スキルが通用しないお前に何ができる?」
ヴァルスの紅い瞳がリクを射抜く。
リリィの聖なる力は徐々に弱まり、クラリスの業火は届かず、レオンの剣閃は目に見えない空間の反発に弾かれる。
呪術兵の黒い影が素早く襲いかかる。
激しい攻撃に追い詰められ、彼らの胸には焦燥と恐怖が交錯する。
刃がリリィの肩を貫き、血が滴る。
「リク、逃げて!」
防戦一方の状況でも、仲間たちの目には諦めはなかった。
「守りたい……この世界を、この仲間を……!」
その瞬間、コンソールが黄金に閃く。
「――成ったか」
ヴァルスが静かに口元を動かす。
少年の決意が仲間たちの表情を一変させる。
だが呪術兵の攻撃が彼らをかすめ、刃がリクの腹部を深く突き刺した。
灼けるような痛みが全身を貫き、血の匂いが鼻腔を満たす。
「スキルが通じなくても、俺はただの俺でいい。元々ノービスだ! 無理でも押し通る!」
強い決意が全身を駆け巡り、体に神力が巡りだす。
コンソールが空間を覆い尽くした。
《勇者プロトコル:演算開始》
《勇者プロトコル:演算終了》
《神域アクセスコード:権限譲渡》
《神域アクセス:成功》
《神のコードにアクセスしますか:はい・いいえ》
意識が薄れゆく中、リクの指が「はい」を押す。
視界に無数のコードが奔流のように流れ、世界の構造式があらわになる。
シミュレーションの根幹――神域の構成式が鮮やかに浮かび上がった。
レオンが少年の前に飛び込み、咆哮する。
「お前ら、好き勝手しやがって!」
呪術兵たちが吹き飛ばされ、黒い影が無数に地に伏す。
剣を振るうたびに、金属が軋み、激しい火花と熱気が辺りを焼き払う。
辺りは剣戟の響きに満ち、緊迫感が一層高まった。
コンソールが眩く瞬く。
《神の加護:無効化》
突如、結界がガラガラと崩れ落ち、空が裂ける。
リクの全身から魔力があふれ、猛烈な頭痛が脳を突き刺した。
「頭が……裂ける……」
視界がぼやけ、耳鳴りが世界を覆う。
ヴァルスが巨大な漆黒の神槍を叩きつけた。
一振りごとに大地が割れた。
「リクに手を出すな!」
レオンが剣を受け止め、刃が軋み、火花が激しく飛び散った。
クラリスが魔力をまとって激しく呪術兵を撃つと、熱波が敵の勢いを止めた。
リリィが少年を全身で支え、涙を浮かべる。
「……大丈夫だから! 絶対に助けるから!」
リクはその温もりに支えられ、かろうじて意識をつなぐ。
「ごめん……俺、もう動けねえかも……」
リリィが祈りで彼を癒す。
「リク、絶対に一人にしない!」
クラリスが毅然と言い放った。
「魔力が尽きるまで、絶対諦めない!」
レオンが剣を振りかざし、吼えた。
「お前が倒れても、俺が立っててやる!」
仲間たちがリクの意識を必死につなぎ止める。
「ありがとう……みんな……」
《神枢核》が脈動し、呪術兵が再び迫った。
総力戦の幕が開いた。




