第8話「電話番号」
「君、どこかで見たことあるね…」
「私は…」
「待って、当ててみるから。」
数秒の沈黙を置いて
「わかった、KYOJO CUPにいた作間菜央だ!」
「正解です」
「なんでこんなとこで仕事やってんだ?走りはしないのか?」
「解雇されちゃって…」
「なに、チームを?」
「はい。来季からは第2ドライバーと新人を乗せるって。5年育成チームにいるうちはもういらないって。」
「そんなことが…」
「じゃあ、うち、来ないか?」
「え?」
「実は、来年からKYOJO FORMULAに出てみることにしたんだ。2台体制で。」
「ドライバーってのはもしかして…」
サーキットの方に目をやるとちょうどあのF4が駆け抜けていく。
「お、察しがいいね。あのF4に乗っている子だよ。」
「ただ、もう1人ドライバーが見つからなくてね…」
乗りたい。
その言葉が口から出そうになるが、こらえる。
もしかしたら自分以外にも乗りたいと志願する子が現れるかもしれない。
彼女はシャークレーシングからの解雇で自信を失っていた。
あの日の速さと自信に満ち溢れた菜央はもういなかった。
その時、安住がメモ帳を取り出し、そこに自身の電話番号を書いていく。
「OK、菜央さん。ぜひうちのチームが気になったら連絡をくれ」
電話番号が書かれたページを切り取り、菜央に渡す。
「じゃ、ごちそうさん」
安住は店を後にした。




